1996年の台湾海峡危機を上回る艦隊を「沖縄南西海域」に集結

一気に進んだ日米英艦隊の一体化 その2

  

英フリゲート艦リッチモンドの台湾海峡通過

 9月27日にはイギリス海軍のフリゲート艦リッチモンドが台湾海峡を通過し、中国政府の強い抗議を受けた。
10月1日からは中国軍の戦闘機、爆撃機、早期警戒機が連日30機を超える数で台湾の「防空識別圏」の南西の端に進入した。これは本当に台湾への威嚇が目的だったのだろうか。
空母部隊の台湾海峡通過を警戒していた可能性はないであろうか。


佐世保基地に2度目の寄港をした英フリゲート艦リッチモンド(21.9.16 篠崎 撮影)

日米英、オランダ、カナダ、ニュージーランド-6ケ国合同艦隊


横須賀入港時のオランダ海軍のフリゲート艦エファーツェン(21.9.5 木元 撮影)


横須賀入港時の米イージス艦ザ・サリバンズ。クイーン・エリザベス空母戦闘群の一員(21.9.26 木元 撮影)

そして、10月2日と3日の「日米英蘭加新共同訓練」である。
海自はヘリ空母「いせ」を送り込んだ。訓練海域は「沖縄南西」。この文字が訓練海域に登場したのは、私の知る限り、はじめてのことである。いつもは「沖縄南方」である。
宮古島でも、石垣島でも、そして、与那国島でも「沖縄南西」である。台湾に近いところで演習やりましたよ、という海自のメッセージだと、私は受け止めている。
96年の台湾海峡危機では米軍単独の展開だったが、今回は6ケ国の合同艦隊となり、15,000人以上が参加とアメリカ海軍は発表している。
96年の場合は原潜が2隻参加して16隻であるが、今回は原潜の参加は公表されていないが、空母を3隻も集結させて訓練海域に原潜が1隻もいないことは考えにくい。米英の原潜が参加して いた可能性が高い。

空母クイーンエリザベス中心に南シナ海でも訓練

10月4日からは、訓練海域を南シナ海に移して、「日米英蘭加新共同訓練」が続いた。この空母部隊がバシー海峡の移動日に中国軍機の防空識別圏侵入が56機に達したのである。
4日からは米原子力空母2隻は訓練参加艦艇に入らなくなり、海自も護衛艦「しらぬい」のみの参加となった。しかし、カールビンソンは少なくも7日までは南シナ海に展開していた。 一方、レーガンは7日まではフィリピン海にとどまっていた。
10月2日と3日の訓練に参加していた「やまぎり」は6日横須賀に帰港した。しかし、イージス艦「きりしま」は10日現在、横須賀にもどっていない。考えられるのは訓練ではなく実任務 として空母艦隊と行動をともにしていることだ。
今回の一連の訓練、各所にこれまでの訓練にはなかったエスカレートがある。
イギリス海軍は哨戒艦2隻をアジアに常駐させること、9月にイギリスを出港したと発表している。今後も要注意である。(その3・一覧表に続く)


日米英蘭加新共同訓練に参加したまま、10日現在横須賀にもどらないイージス艦「きりしま」、左は護衛艦「てるづき」(21.9.14 木元 撮影)

(木元 茂夫)


2021-10-13|HOME|