今年の原子力空母定期修理、放射性廃棄物運搬船はオーシャン・ジャズ


米連邦政府の業務公告サイトSAM.govに3月9日付けで掲載された契約情報の一部。赤線を引いたところに、オーシャン・ジャズの名前が出ている。

今年も原子力空母ロナルド・レーガンの定期修理が横須賀で行われている。この定期修理で排出される放射性廃棄物などの米国への運搬業務の契約情報が、3月9日付けで米連邦政府の業務公告サイトSAM.govに掲載された。
今年の放射性廃棄物運搬船は、貨物船オーシャン・ジャズ(OCEAN JAZZ)だ。

オーシャン・ジャズは、「Maritime Security Program」によって有事の際に米軍が使用できる米国船籍の民間貨物船だ。平時においてもしばしば米軍にチャーターされて輸送業務に従事している。

2020年3月には横浜ノースドックにやってきて、白い防湿フィルムで全身をコーティングされて白装束姿になった2機のFA18戦闘攻撃機を米本国に搬出する作業を行った。
同じ2020年には、オーシャン・ジャズを原子力空母の定期修理の放射性廃棄物運搬船とする契約も結ばれていた。しかし、結局この年は廃棄物の搬出は中止され、オーシャン・ジャズは横須賀に来なかった。
今年もCOVID19の感染状況などによっては変更もあるかもしれないが、オーシャン・ジャズが4月19日から22日の間までには横須賀にやって来て、原子力空母からクレーンで吊り上げられた放射性廃棄物を積み込む契約が結ばれたということなのだ。


2020年2月13日、横浜ノースドックで白装束姿のFA18戦闘攻撃機を米本国に搬出するために船倉に積み込むオーシャン・ジャズ。(2020.2.13 星野 撮影)


実はオーシャン・ジャズは今年3月9日の夜にも、横浜港の大黒埠頭に数時間だけ寄港していた。
おそらく民間船としての業務での寄港だったのではないかと思われるが、横浜に来る前、2月21日から22日にかけては那覇軍港に寄港している。那覇軍港を出港した後、中国広東省の虎門港に寄港し、さらに台湾の高雄港を経由して横浜にやって来たのだ。
AIS(自動船舶識別装置)の情報によれば、3月9日の夜の横浜出港後の行き先は、今のところ米国の港のようだ。


3月9日、日没間際に横浜港の大黒埠頭に向かうオーシャン・ジャズ。(2022.3.9 星野 撮影)

ところで、原子力艦を日本の基地に入港させるにあたって1964年に日本政府と米国政府が取り交わした公文書のエード・メモワールでは、動力装置の修理を日本国内では行わないこと、放射性物質を日本国内で艦外に搬出しないことなどが約束として定められている。

にもかかわらず、定期修理で放射性廃棄物が排出されるということは、動力装置すなわち原子炉に手を付ける修理が行われているということだ。
また、放射性廃棄物を入れたコンテナを原子力空母からクレーンで吊り上げて貨物船に積みかえるということは、艦外に搬出するということだ。
「放射性廃棄物を原子力艦からクレーンで吊り上げて別の船に移すのは、(地面についていないから)日本国内での放射性廃棄物の艦外への搬出ではない」という、嘘とごまかしが毎年のように繰り返されている。

エード・メモワールは、両国の公的な約束だ。
原子力艦の動力装置の修理を行わないという約束、そして、放射性廃棄物を日本では艦外に排出しないという約束は、日本社会で暮らす人びとの安全を守るためのものだ。
米軍の約束違反に目をつぶり、詭弁を弄して日本社会の安全を脅かすことは許されない。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


横須賀基地12号バースで定期修理を受ける原子力空母からクレーンで吊り上げたコンテナを積み込むために13号バースに接岸する貨物船の位置やサイズを示した図。
(米連邦政府の業務公告サイトSAM.govに掲載された募集公告「30-DAY DRY CARGO TIME CHARTER」に添付された文書「22R4055 RFP.pdf」から引用)
なお、埠頭上に戦闘機の絵が描かれているが、定期修理中は艦載機ハンドリング用の実物大模型が埠頭上に置かれていることを表しているのだろう。


2021年5月4日に行われた、原子力空母からクレーンを使って廃棄物コンテナを貨物船モホークに積みかえる作業。(2021.5.4 星野 撮影)


2022-3-11|HOME|