原潜シカゴ、横須賀寄港


6月25日、横須賀基地の13号バースに接岸した原潜シカゴ


赤い丸で囲んだ部分が艦橋、青い丸で囲んだ部分が原潜シカゴの後舵だ

 6月25日の朝、原子力潜水艦が横須賀基地に寄港し、13号バースに接岸した。
 今回の原潜の寄港について横須賀市はまだ何も発表していないが、寄港したのはロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦のシカゴ(CHICAGO SSN 721)と見られる。

 今年の原子力潜水艦の横須賀寄港は、のべ9回目。
 原子力空母ロナルド・レーガンの試験航海からの帰港と原子力空母エイブラハム・リンカーンの寄港を含めると、原子力艦船の横須賀入港は、今年11回目となる。
パールハーバーを母港とする原潜シカゴの横須賀寄港は、2020年10月以来のことだ。

 AIS(自動船舶識別装置)の情報によれば、原潜シカゴは母港のパールハーバーを今年3月に出港した模様だが、その後、横須賀寄港までどのような行動をしていたのかについては今のところ不明だ。

 ところで、既に述べたように、6月25日の朝の原潜入港に関する情報を、横須賀市はまだ発表していない。

 しかし、1964年8月24日付け米国政府の日本政府宛「口上書」には、「合衆国海軍は、通常、受入国政府の当局に対し、少なくとも24時間前に、その原子力軍艦の到着予定時刻及びてい泊又は投錨の予定位置につき通報する。」(外務省訳)と書かれている。
つまり、米海軍原子力艦船の入港の24時間前には、日本政府に対して入港情報は伝えられているのだ。その情報は地元自治体にも伝えられ、市民にも公表されていた。

 ところが、照屋寛徳衆議院議員(当時)が2006年9月26日に提出した「米国原子力潜水艦寄港の事前通報公表に関する質問主意書」によると、2001年9月21日以降、原子力潜水艦の寄港に関する地元自治体への24時間前の事前通報が非公表になっているという。
 照屋寛徳衆議院議員(当時)の同じ質問主意書によると、2001年9月11日のいわゆる「同時多発テロ」事件の後、米軍が「在日米軍基地の警備強化が必要なため、寄港情報の事前公表を控えてほしい」と外務省に要請していたようで、それを受けて地元自治体も事前の寄港情報の公表を差し控えるようになったのだという。
 しかし、照屋寛徳衆議院議員(当時)も述べているように、「米国原子力潜水艦の寄港は、放射能事故との関連で住民の安全に係わる重大な問題である。寄港そのものが公表されないことに伴う、住民の不安や恐怖は深刻であると断ぜざるを得ない。寄港の非公表は住民軽視、人間軽視であって、断じて許せるものではない」。
 たとえば、今回の原潜シカゴの寄港については、6月24日には事前通告がなされていたはずで、横須賀市もその情報を受け取っていたはずだ。

 ところが、情報の公表は差し控えられたままだった。そして入港当日の6月25日は、土曜日で市役所の休業日だ。そうすると、原潜入港の情報が市民に公表されるのは、早くても月曜日になってしまう。
月曜日までの間、横須賀市民には、目の前の港に原子炉が浮かんでいる事実が伏せられたままになってしまうのだ。

 原子力艦船の寄港情報の公表は、放射能事故が発生する可能性がある状態となることを住民に知らせるためのものであり、まさに住民の安全にかかわる重大な情報なのだ。
 それとも、横須賀市や日本政府そして米軍は、役所が休みの期間には原子力艦船にかかわる事故や災害は起きないものだという、根拠不明の思い込みのようなものにとらわれているのだろうか。
 万一にもそんな甘い認識を持っているのであれば、すぐに考えを改めるべきだ。土曜日や日曜日であっても、夜や早朝であっても、事故や災害は発生する。
 横須賀市も日本政府も、米軍が何を言おうとも、原子力艦船入港24時間前の事前通告を、直ちに公表するべきだ。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)(22.6.25 星野 撮影)


6月22日から12号バースに停泊していた沿海域戦闘艦チャールストン(LCS 18)は、6月24日に横須賀を出港した


2022-6-25|HOME|