英軍艦、横浜・鶴見の民間工場に


6月3日、ジャパンマリンユナイテッド横浜事業所鶴見工場に入っていることが確認された英海軍哨戒艦スペイ(赤い枠の中)(24.6.3 星野 撮影)


6月7日も鶴見の工場にいることが確認された(24.6.7 星野 撮影)

6月初め、6月1日の午後から3日の昼過ぎ頃までの間のいずれかの時に、イギリス海軍の哨戒艦スペイ(HMS SPEY P234)が、横浜市鶴見区にある民間造船所、ジャパンマリンユナイテッド横浜事業所鶴見工場に接岸した。
その後も引き続き滞在していることが確認されている。

スペイは、4月5日に韓国のプサンを出港した後、4月15日に海上自衛隊横須賀基地に入り、1ヶ月半以上もの間、滞在を続けていた。

この外国軍艦の、海自横須賀基地への異例といえる長期滞在について地元紙の神奈川新聞は、5月14日の駐日英大使館への取材で「技術的な問題が発生し、現在原因を調査中だ」という英国防省のコメントを得たことを報じている。同紙の記事によればスペイは、「当初は今年4月27日に出港し、海自との共同訓練を予定していた」のだという。
どうやらその後も「技術的な問題」が解決できず、造船所に入って修理をすることになったのだろう。

そもそもスペイは、同型艦のテイマー(HMS TAMAR P233)とともにインド太平洋地域に5年間常駐するために昨年9月にイギリスから派遣された小型の軍艦だ。
これらのイギリスの軍艦は、2022年には東京湾内にしばしば出没した。
テイマーは、2022年2月14日から同月22日にかけて米海軍横須賀基地の13号バースに寄港しており、同年9月には佐世保にも入港し、同年10月20日から11月27日にかけては横浜港にある三菱重工横浜製作所本牧工場に入っている。さらに同年11月29日に横須賀錨地に現れ、12月1日から4日まで海自横須賀基地の長浦港に入港していた。
他方、スペイは、2022年11月8日に海自横須賀基地に入港し、同11月25日から12月28日までは三菱重工横浜製作所本牧工場に入っていた。

スペイは、今回が久しぶりの横須賀寄港で、上で引用した神奈川新聞の記事が述べるように「昨年10月に発効した日英円滑化協定後、日本に寄港した初の英軍艦となった」。

スペイの海自横須賀基地寄港は、日英円滑化協定に基づくものだったのだろうか。
また、外国軍の軍艦であるスペイによる日本の民間工場、ジャパンマリンユナイテッド横浜事業所鶴見工場の使用は、一体どのような法的根拠のもとに行っているのだろうか。
単にイギリス海軍と民間企業との契約によるというだけなのであれば、外国軍は日本の民間企業と契約すれば、日本の民間施設をどこでも自由に使用できるということになるのではないか。

今回のスペイの行動は、外国軍の軍艦が横浜市鶴見区の民間工場に入ったということであるのだが、積んでいる武器や弾薬は、どのように管理されているのだろうか。安全なのか。あるいは事前に降ろされているのだろうか。

そもそも武器や弾薬を積んだ外国の武装艦船が臨海工業地帯の中の工場を使用することについて、地元住民や自治体に対して何らの説明も同意を得るための手続きも無いのだろうか。

横浜市は、少なくとも、工業地帯のど真ん中に接岸する外国軍艦の安全性の確保や、住民への説明と住民による意思表明のための場の確保のために、主体的に行動しているのだろうか。
港湾管理者であり、市民の安全を守る義務も持つ横浜市は、「何も知らない」「権限がないから何もしない」などと言って知らぬ顔を決め込むことはできないはずだ。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


4月15日、海自横須賀基地に入港した英海軍哨戒艦スペイ(左側の灰色の軍艦)(24.4.15 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


スペイは、今回の横須賀基地への寄港当初は逸見岸壁に停泊していた(24.4.16 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


その後、4月24日には吉倉桟橋に移動した(24.4.28 星野 撮影)


海自横須賀基地への滞在が長期に及び、やがて「技術的な問題」の発生が報じられるようになった(24.5.12 星野 撮影)


5月15日には海自横須賀基地内で再び停泊位置を移動した(24.5.26 星野 撮影)


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