リムパック2024でステルス爆撃機B2、大型ミサイルを投下し退役強襲揚陸艦タラワを撃沈


リムパックで艦対艦ミサイル・ハープーンを発射するオランダ海軍のフリゲート艦トロンプ(HNLMS TROMP F 803)
RIMPAC2024 FBより


揚陸艦「くにさき」を訪問した米海軍作戦部長リサ・フランケッティ(Lisa Franchetti)大将。7月11日
NAVY.MILより

環太平洋合同軍事演習リムパック2024は、6月27日から8月1日まで、ハワイを中心に実施された。29ケ国、艦艇40隻、航空機150機、兵員約25,000人が参加したと米海軍は発表した。

 最初にリムパックの経緯を見ておく。参加艦艇のピークは2014年で、その後は減少している。海上自衛隊も一時は8隻前後の護衛艦を派遣していたが、アフガン・イラク戦争で、洋上給油作戦などで補給艦と護衛艦を繰り返しインド洋に派遣し続けるという重い負担がかかり、参加隻数は減少した。また、2016年3月の安保法制の施行以降、日米共同訓練がさまざまな形で増加したため、リムパックはその相対的な位置を低下させた。

 しかし、2018年のリムパックで米軍は「マルチドメイン」(従来の陸海空海兵に、サイバー、宇宙、電磁波などを専門領域とする部隊を加えたもの)という新たな戦略概念を実践した。陸自は12式地対艦ミサイルを、米陸軍は高機動ロケット砲システム・ハイマースをハワイに持ち込み、共同で対艦戦闘訓練−地上に配備したミサイルで海上に浮かべた退役軍艦を攻撃する―を実行した。リムパックの重要な転換点となった。



 コロナの世界的な流行で、リムパック2020は大幅な規模縮小を余儀なくされた。陸自ミサイル部隊は参加を見送った。しかし、日米両政府は「自由で開かれたインド太平洋」を掲げ、リムパック2022では再び、共同対艦戦闘訓練に取り組んだ。

 そして、今回のリムパック2024で、対艦戦闘訓練は大きく変化した。
リムパックを統括する米海軍第3艦隊司令部は、「7月11日にUSSダビューク(退役艦LPD 8)を、7月19日にUSSタラワ(退役艦LHA 1)を沈め、実弾沈没演習(SINKEX)を実施しました。どちらもカウアイ島の北海岸から50海里以上離れた深さ15,000フィートの海域に沈められました。 SINKEXでは、オーストラリア、マレーシア、オランダ、韓国、アメリカ空軍、陸軍、海軍の参加部隊が、海上の水上艦艇に対する照準と実弾射撃の戦術に習熟した」と発表している。
陸自の第7地対艦ミサイル連隊の動きについては発表がない。


ハワイ、真珠湾から演習海域へ曳航される退役した強襲揚陸艦タラワ(後方)。手前の二人は付近の住人
RIMPAC2024 FBより

 リムパック2024の最大の特徴は、航空機から発射するミサイルが使用されたことである。
一つは空母艦載機である戦闘攻撃機FA-18がLRASM(米ロッキード・マーチン社製の空対艦ミサイル、射程370km)を発射したこと、もう一つは長距離爆撃機B2からクイックシンク、素早い撃沈とでも訳すのが適当だろうか、潜水艦が装備している長魚雷なみの破壊力をもつミサイルを発射して、全長254m、満載排水量39,300トンの大型強襲揚陸艦であったタラワ(LHA 1)を撃沈した。

米第3艦隊司令部は、「米空軍のB-2スピリットステルス爆撃機は、第2のSINKEXの一部として、QUICKSINKのデモンストレーションを通じて、水上艦艇を撃破するための低コストの空中投下方法を証明しました。QUICKSINK実験は、研究・技術担当国防次官室から資金提供を受けており、統合部隊の固有の柔軟性を実証しながら、地表の海上脅威を中和するオプションを提供することを目的としています。この能力は、世界中の広大な海域で海上の脅威を最小限のコストで迅速に無効化するという緊急のニーズに対する答えです」。
この実験は、明確に中国の空母などの大型艦艇を意識したものだろう。

米空軍は8月にはメキシコ湾で、B2の後継の爆撃機であるB-21を使用して、QUICKSINK実験を行った。


長距離戦略爆撃機B-21。B2爆撃機の後継として生産中。メキシコに近いエグリン空軍基地で
アメリカ空軍HPより

 対艦戦闘訓練とともに注目すべきなのが機雷戦訓練。
島嶼争奪戦においては、自国艦艇が占領された島嶼へ接近するための機雷掃海と機雷掃討、布陣した島嶼に相手側艦艇の接近を阻止するための機雷敷設。日米共同の機雷戦訓練が行われているが、リムパックでは多国間訓練として実施された。

「機雷戦シナリオには、サンディエゴのヘリコプター飛行隊、米国の潜水部隊、ベルギーの無人潜水機(UUV)チーム、ドイツとオランダの潜水チーム、日本のUUVと潜水のハイブリッドチームなど、5か国から約200人のオペレーターが参加しています。
ジルコ中佐は、機雷戦司令官とそのチームは、RIMPAC 24演習で3つの主要な任務を優先し、対処しなければならないと述べた」
「演習の戦術段階では、機雷戦司令官とそのチームは、他の海上機動部隊司令官が任務を開始し、演習の全体的な任務を達成できるようにするために達成する必要がある3つの時間的制約のある任務に遭遇する」と彼は述べた。
「これらの任務は、海峡から機雷の脅威をクリアすることから、空母打撃群の安全な通過を可能にすることまで多岐にわたります。水陸両用着陸を可能にするための地雷の脅威を特定して中和する。そして、港湾の瓦礫や地雷の脅威を捜索し、除去し、経済貿易のために港を再開すること。両チームは、海岸に近い半許容環境での地雷対策任務の実施方法や、地雷原での小型即応部隊(QRF)ボートの使用方法に関する戦術、技術、手順をさらに開発します。」(7月23日 米第3艦隊司令部)

(木元 茂夫)




ペルー海兵隊の歩兵戦闘車などを揚陸する、「くにさき」のホバークラフト艇(LCAC)
RIMPAC2024 FBより


12式地対艦ミサイルを発射する第7地対艦ミサイル連隊
RIMPAC2024 FBより


リムパック24に参加した鹿児島県鹿屋基地所属の哨戒機P-1。ハワイのカネオヘ空港
RIMPAC2024 FBより


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