ドイツ艦隊、東京に寄港
8月20日、東京国際クルーズターミナルに入港したドイツ海軍フリゲート艦バーデン=ヴュルテンベルク(24.8.20 星野 撮影)
補給艦フランクフルト・アム・マインも同時に入港した(24.8.20 星野 撮影)
2隻は並んで停泊した(24.8.20 星野 撮影)
8月20日、ドイツ海軍のフリゲート艦 「バーデン=ヴュルテンベルク」(Baden-Wurttemberg F222)と 任務部隊補給艦「フランクフルト・アム・マイン」(Frankfurt am Main A1412)が東京港の東京国際クルーズターミナルに入港した。
実は、フリゲート艦バーデン=ヴュルテンベルクは、前日の8月19日の日中に数時間、横須賀基地に寄港していた。だが、同じ19日の15時過ぎには出港して浦賀水道を南下して一旦外洋に出ていた。この日の横須賀寄港は「正式な」入港ではなかったのだろう。
駐日ドイツ次期大使のお出迎えなどの催しは、8月20日の東京国際クルーズターミナル入港後に行われた。
ドイツ連邦軍HPの記事によると、フリゲート艦 バーデン=ヴュルテンベルクと補給艦フランクフルト・アム・マインの東京寄港は、IPD(Indo-Pacific Deployment 2024)(「インド太平洋派遣2024」)と名付けられたドイツ海軍の作戦行動の一環だ。
その名の通り、ドイツ軍がこの2隻の艦船をインド太平洋地域に2024年5月から12月までの7ヶ月間、派遣するというものだ。
今年5月7日にフリゲート艦バーデン=ヴュルテンベルクはスペインのロタ海軍基地を、補給艦フランクフルト・アム・マインはドイツの海軍基地ヴィルヘルムスハーフェンをそれぞれ出港し、IPD2024は開始された。
ドイツ連邦軍HPによると出発後、この2隻は、カナダ海軍との合同訓練やニューヨーク訪問を経て、パールハーバーに到着し、リムパック2024演習に参加した。
そして、リムパックの終了後、太平洋を渡って東アジアにやって来たというわけだ。
ドイツ連邦軍HP英語版の文言を引用すると、IPD2024は、「the German Navy’s most important defence(原文ママ) diplomacy and enhanced security cooperation project this year」、つまり、ドイツ海軍にとって今年最も重要な防衛外交および安全保障国際協力の強化プロジェクトだという。
そして、そのIPDの目的は、「This year’s IPD Indo-Pacific Deployment ? like the Navy’s previous deployment in 2021 ? is intended to once again demonstrate Germany’s commitment to free and secure shipping lanes, a rules-based international order and increased cooperation for maritime security.」、すなわち、2021年に行われた前回の派遣と同様に、自由で安全な航路や、ルールにもとづく国際秩序、海上での安全保障のための協力の強化に対するドイツのコミットメントを再び示すことなのだという。
(以上、ドイツ連邦軍HPhttps://www.bundeswehr.de/en/organization/navy/news/indo-pacific-deployment-2024より引用)
つまり、ドイツ軍も、「インド太平洋」において米国が先導する対中国戦略に深くコミットすることを示したいということだろう。
そのためにIPDで取り組む具体的活動としては、「戦略的パートナー」国の港への寄港や、リムパックをはじめとする多国間軍事演習への参加、さらには、EUのインド洋北西部での海軍作戦「調整海洋プレゼンス」(Coordinated Maritime Presence)への参加や、朝鮮半島問題に関する国連の制裁の監視活動への運用面での参加といったものが、ドイツ連邦軍HPの記事には挙げられている。
したがって、今回の東京への寄港も、IPDの一環としての「戦略的パートナー」への寄港ということなのだろう。
いつの間にか、日本はドイツを含むEUの中国に対する軍事的けん制活動の「パートナー」にされてしまったということになる。
しかし、日本列島は地中海にあるわけではないし、フランスやスペインの沖にあるわけでもないし、カリフォルニアの沖にあるわけでもない。
欧米諸国の軍隊が「インド太平洋」で行う軍事けん制活動で、偶発的にも軍事衝突を起こしてしまえば、まず戦場になるのは、琉球弧をはじめとする日本列島やフィリピンなどの島々だ。
インド太平洋地域で自衛隊や「パートナー」国の軍隊が繰り広げようとしている軍事活動について、市民が広く議論をする場はまともにつくられていないまま、それどころか情報も公開されていないまま、既成事実は次々と積み上げられていく。
しかし、「既成事実への屈伏」を繰り返すわけにはいかない。
(RIMPEACE編集部 星野 潔)
入港当日の8月20日の夕方、船を降りて駅などに向かうドイツ海軍の乗組員たち(24.8.20 星野 撮影)
2024-8-27|HOME|