最新鋭宿泊バージを民間タグボートが横須賀基地に搬入
米本土から横須賀基地に搬入された宿泊バージYRBM-57と、曳航してきたタグボート「クレイトン・アーサー」(25.2.18 星野 撮影)
YRM-57が接岸した場所は、原子力空母が定期修理をしている12号バースの隣、13号バースだ(25.2.18 星野 撮影)
2月18日、YRBM-57の船上では足場を組む作業が行われていた(25.2.18 星野 撮影)
2月17日の朝、米国船籍の民間タグボート、クレイトン・アーサー(CLAYTON ARTHUR)が横須賀基地に入港した。
もともとはポートランド港を母港とするクレイトン・アーサーだが、AIS(船舶自動識別装置)の情報によれば1月8日にサンディエゴを出港して太平洋の横断を開始したようだ。
1月20日から22日にかけてハワイのホノルルに立ち寄り、米西海岸から1ヶ月以上かけて横須賀にやって来た。
クレイトン・アーサーは横須賀に米海軍の宿泊バージを曳航して入港し、13号バースに接岸させた。
クレイトン・アーサーが曳航してきた宿泊バージはYRBM-57。
YRBM-57はメキシコ湾に面したルイジアナ州のコンラッド造船所で建造され、昨年10月に海軍に納入するための最終試験を受けて、その後サンディエゴに回航された最新鋭の宿泊バージだ。
海事出版社ベアード・マリタイムのオンライン記事によれば、YRBM-57は「YRBM-57級バージ」の1番艦。
長さ約46メートル、幅約15メートルで、複数の性別の199人を宿泊させることが可能で300人に1日3食の食事を提供する能力を持つ。診察室や定員72人の教室、定員25人の会議室、ラウンジ、倉庫、作業スペース、洗濯室なども備えているという。このバージで暮らす乗組員がインターネットに容易にアクセスできる環境も整えられている。
YRBM-57の「YRBM」は艦艇分類記号だが、Yard, Repair, Berthing and Messingの頭文字を表すようだ。
YRBM-57級宿泊バージは、昨年12月の時点で「57」以外に7隻がコンラッド造船所で建造中だ。
近年、米海軍では、メンテナンス工事中にも艦船の中で暮らさなければならない乗組員の、劣悪な居住生活環境が深刻な問題とされてきた。
とりわけ2022年4月に、ニューポート・ニューズ造船所で大規模整備工事を行っていた原子力空母ジョージ・ワシントン(GEORGE WASHINGTON CVN 73)で1週間足らずの間に乗組員が3人自殺したことは、海軍に衝撃を与えていた。
米海軍協会USNIニュースの2023年9月19日付けの記事によれば、メンテナンス期間中における水兵たちの居住環境の米海軍なりの改善策が、新しい宿泊バージの建造を含む宿泊バージ確保とその現代化のための予算獲得ということのようだ。
そして、その新たに建造された最新鋭宿泊バージの1番艦を、米軍はまず横須賀に配備したのだ。
これはまさに横須賀そして日本を、米海軍の主要な艦船整備工事拠点としていこうとする米軍の意思の表れと言える。
それは米国の造船業の衰退を背景としているのと同時に、米軍の進める戦争構想における地理的な「利便性」を考えてのことでもあるだろう。
なお、YRBM-57がやって来る直前には、横須賀基地には2021年に搬入されたAPL-67と、かなり以前から横須賀にいる、1945年に建造された非常に古い船であるYRB-30の2隻の宿泊バージが配備されていた。
2021年にAPL-67がやって来てからしばらくの間、横須賀の宿泊バージはAPL-67とYRB-30、APL-40の「3隻体制」になっていた。しかし、2023年12月にAPL-40が佐世保に移動してからは、宿泊バージは2隻に戻っていた。
今回のYRBM-57の搬入で、横須賀基地にいる宿泊バージは再び3隻になった。
(RIMPEACE編集部 星野 潔)
2021年に横須賀基地にやって来た宿泊バージAPL-67(25.2.18 星野 撮影)
以前から横須賀基地で使われている宿泊・修理バージYRB-30(25.2.18 星野 撮影)
2025-2-19|HOME|