横須賀沖に放射性廃棄物運搬船か


4月8日、横浜港から横須賀沖の錨地に移動した米国船籍の貨物船、オーシャン・フリーダム(タンカーの向こうの大型クレーンを備えた貨物船)
陸地の丘の上には防衛大学が見える(25.4.8 星野 撮影)


オーシャン・フリーダムは3月31日、横浜港に入港していた(赤い丸で囲まれた船)(25.3.31 星野 撮影)


オーシャン・フリーダムが停泊していたのは、大黒ふ頭のP-2バースだ(25.4.2 星野 撮影)


オーシャン・フリーダムが停泊していた大黒ふ頭は、手前の横浜ノースドックとはこのような位置関係にある。横浜港にはあくまでも民間貨物船として滞在していたのだろう(25.4.5 星野 撮影)


オーシャン・フリーダムは両舷に大型クレーンを装備した貨物船だ(25.4.5 星野 撮影)


横須賀沖に移動する前日のオーシャン・フリーダム。既に荷役作業は行っておらず、次の業務に向けた待機を続けていた(25.4.7 星野 撮影)


3月30日の原子力空母ジョージ・ワシントン。すでに艦橋やマストの足場は外されており、定期修理は終盤を迎えていたようだ(25.3.30 木元茂夫 撮影)

横須賀基地では、原子力空母ジョージ・ワシントン(GEORGE WASHINGTON CVN 73)の定期修理が行われている。
この定期修理で排出された放射性廃棄物を、米本国のワシントン州にあるピュージェットサウンド海軍造船所に運ぶためにチャーターされたと見られる貨物船が、4月8日の昼前に横浜港の大黒ふ頭から横須賀沖の錨地に移動した。

放射性廃棄物運搬船と見られる米国船籍の民間貨物船は、オーシャン・フリーダム(OCEAN FREEDOM)だ。

オーシャン・フリーダムは3月31日に横浜港大黒ふ頭のP-2バースに入港し、4月8日の朝までそこで待機していた。
このオーシャン・フリーダムは横浜港の大黒ふ頭にやって来る前には、3月23日にタイのシラチャ(SRIRACHA)港を出港している。おそらくタイから横浜までは「民間船」として積み荷を運んだのだろう。
横浜入港後は、荷役作業を終えた後も大黒ふ頭P-2バースにとどまっていた。

既に当HPの1月2日付けの記事で報告したように、米連邦政府による今年の放射性廃棄物運搬船の募集公告によれば、LAYDAYS、つまり入港可能な期間は4月9日から11日までとされている。
この業務の受注業者を報告するAward Noticeは2月1日付けで発表されていたが、そこには船の名前は載っていなかった。
しかし、4月8日に横須賀沖に移動したオーシャン・フリーダムがこの業務を担うチャーター船だと見て、ほぼ間違いはないだろう。
横須賀からワシントン州ピュージェットサウンド海軍造船所まで放射性廃棄物を運ぶのは、この船としては初めてのことになる。
そしてこの船は「殊勝」にも、LAYDAYSの前日に横浜港から横須賀基地の錨地に移動した、ということだろう。

原子力空母が横須賀を母港にするようになってから、毎年冬から春にかけて定期修理を行うたびに、動力装置周辺の工事も行われてきた。
そしてそのたびに放射性廃棄物入りのコンテナが原子力空母から艦外に排出され、それを米国船籍の貨物船に積み込んで米国のピュージェットサウンド海軍基地に運ぶということが繰り返されてきた。
ただし、昨年は2015年から横須賀に配備されていた原子力空母ロナルド・レーガンが大規模修理に向けて本国に戻ることになっていたため、放射性廃棄物の搬出は行われなかった。
したがって、放射性廃棄物を原子力空母の外に出して貨物船に積み込むことが行われるのは、一昨年以来、2年ぶりのことだ。

だが、そもそも米軍は、1964年8月に日米両政府の協議の結果を取りまとめた覚書「エード・メモワール」で、原子力艦船の動力装置の修理も、放射性廃棄物の艦外への搬出も、日本国内では行わないことを約束している。

破廉恥にも米軍は、この約束を無いものとするかのように、原子力艦船の動力装置の修理と放射性廃棄物の艦外搬出を繰り返してきた。しかし、何度約束違反を繰り返しても約束違反は約束違反であり、許されることではない。

日本政府は愚かなことに、住民の安全よりも米軍への従属を優先し、約束違反を咎めるどころか詭弁を弄して米軍の行為を擁護し続けている。
残念ながら横須賀市や神奈川県をはじめとする周辺の自治体も、米軍の約束違反と危険な行為を止めようともしない。
しかし、日本政府や自治体が役割を果たさなくとも、横須賀での原子力艦の動力装置の修理と放射性廃棄物の排出は、決して許されない行為なのだ。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


2023年4月20日、原子力空母ロナルド・レーガンから、定期修理で排出された放射性廃棄物の入ったコンテナがクレーンに吊り下げられて貨物船SLNCヨークに移された(23.4.20 星野 撮影)

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