原子力空母、横須賀で放射性廃棄物を艦外に搬出


4月17日、原子力空母ジョージ・ワシントン(右)から搬出され、クレーンに吊り下げられて貨物船オーシャン・フリーダム(左)に運ばれる放射性廃棄物入りコンテナ(25.4.17 星野 撮影)

横須賀基地の12号バースで定期修理を行っていた原子力空母ジョージ・ワシントン(GEORGE WASHINGTON CVN 73)から放射性廃棄物を詰めたコンテナを搬出し、13号バースに接岸中の貨物船オーシャン・フリーダム(OCEAN FREEDOM)に移す作業が、4月17日に行われた。
作業はこの日の午前9時過ぎに始まった。
定期修理で原子力艦の動力装置のメンテナンスを行ったために発生した放射性廃棄物だ。

昨年12月30日に米連邦政府の業務公告サイトSAM.GOVに掲載された募集公告では、横須賀から米国ワシントン州のピュージェットサウンド海軍造船所まで運ぶコンテナは少なくとも6個であり、うち4個がクラス7(放射性物質)及びクラス8(腐食性物質)の危険物が入ったコンテナということだったが、4月17日にジョージ・ワシントンから搬出されて貨物船に積み込まれた放射性物質入りコンテナは、結局3個だった。

米原子力潜水艦の日本寄港に関して1964年8月に米国政府が日本政府に約束する形で両政府が合意し、1967年10月には原子力水上軍艦についても改めて確認された「エード・メモワール」では、米原子力艦の動力装置の修理を日本で行うことは無いとされているし、「放射能にさらされた物質」を艦から搬出する場合には米国の港で行うとされている。
米軍は、この政府間の約束を平然と踏みにじっている。約束を守っているのであれば、放射性廃棄物が横須賀で搬出されることなどあり得ない。

日本政府も、政府間の約束を守らせるどころかひたすら米軍におもねり、詭弁を弄してまでも米軍の行為を正当化しようとし続けている。
「クレーンで吊り上げているから日本で搬出したことにならない」という「理屈」が、どの世界で通用するというのか?徹底的に市民を馬鹿にしていないか?日本社会に暮らす人々を危険に曝してでも米軍に服従し忠誠を尽くすのが、「日本政府」の役割なのか?


4月17日に放射性廃棄物入りコンテナを積み込んだオーシャン・フリーダムは、その日の15時過ぎには横須賀軍港を出た。
その後、数時間ほど横須賀沖に沖泊まりしていたが、夜になってから東京湾を出て、ピュージェットサウンド海軍造船所のあるワシントン州ブレマートンへ向かった。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


4月17日、作業開始直前の原子力空母ジョージ・ワシントン(右)と貨物船オーシャン・フリーダム(左)。
赤い丸で囲んだところにある空母のエレベーターに放射性廃棄物入りコンテナが運び出され、
そこからクレーンで吊り上げてオーシャン・フリーダムに移送する(25.4.17 星野 撮影)


車両にけん引されて、放射性廃棄物入りコンテナがエレベーターのところに運び出されてきた(25.4.17 星野 撮影)


コンテナの周囲に作業員が集まり、クレーンで吊り下げるためのコンテナスプレッダーを取り付ける作業が開始されようとしている。
放射性廃棄物入りコンテナの作業であるにもかかわらず、作業員たちが皆、軽装であることが気がかりだ。
使用者たる米軍は、労働者の安全配慮義務を果たしているだろうか。作業員たちの間に、防護服などを求める声を上げづらい雰囲気がつくられてはいないだろうか。
そして、放射性廃棄物の「安全性」を主張したい米軍がそれを利用してはいないだろうか(25.4.17 星野 撮影)



放射性廃棄物入りコンテナの上部にコンテナスプレッダーが取り付けられた(25.4.17 星野 撮影)




コンテナスプレッダーを付けた放射性廃棄物入りコンテナが、徐々に持ち上げられ、吊り上げられていく(25.4.17 星野 撮影)





クレーンに吊り下げられて、原子力空母の艦外に搬出された1個目の放射性廃棄物入りコンテナ。貨物船の方へと運ばれていく(25.4.17 星野 撮影)


貨物船オーシャン・フリーダムの船倉に降ろされていく放射性廃棄物入りコンテナ(25.4.17 星野 撮影)



コンテナに貼り付けられた「UN2910」とは、中身が「少量の」放射性物質であることを表す国連番号だ(25.4.17 星野 撮影)



作業中には上空を陸自オスプレイが横切っていく一幕もあった(25.4.17 星野 撮影)





クレーンに吊り下げられて移送される2個目の放射性廃棄物入りコンテナ(25.4.17 星野 撮影)



2個目の放射性廃棄物入りコンテナもオーシャン・フリーダムの船倉に搬入された(25.4.17 星野 撮影)


15時には軍港を出ていたオーシャン・フリーダム(25.4.17 木元 茂夫 撮影)


18時過ぎ、まだ横須賀沖にとどまっていたオーシャン・フリーダム。この後、出港した(25.4.17 星野 撮影)


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