駆逐艦ローレンス、横須賀入港(2)横須賀の駆逐戦隊所属艦として米韓演習に
横須賀基地に停泊するウィリアム・P・ローレンス。
煙突の横につけられているのはPOW/MIA(捕虜・行方不明兵士)のエンブレムのようだ(25.6.27 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)
6月25日に横須賀基地に入港した駆逐艦ウィリアム・P・ローレンス(WILLIAM P. LAWRENCE DDG 110)は、3月15日から4月15日にかけても横須賀に滞在していたのだが、4月の横須賀出港後は、東アジアや西太平洋の海域で活発な活動をおこなっていた。
4月15日の横須賀出港後、ローレンスは4月18日に沖縄のホワイトビーチに寄港した。
ホワイトビーチに3日間滞在した後、4月25日には台湾海峡を通過した。
台湾海峡通過後、東シナ海を通って4月28日から5月5日にかけて佐世保に寄港した。
5月5日の佐世保出港後、対馬海峡を北上し、日本海に入った。
5月7日には韓国の東海港に寄港した。
5月8日から9日(あるいは11日)にかけて、鬱陵島の北西方面海域で韓国海軍と海上特殊作戦訓練(MCSOFEX: Maritime Counter Special Operations Exercise)を実施した。
このMCSOFEXについては後述する。
5月11日から12日にかけては、東海港に再入港している。
5月14日に隠岐諸島の北東で何らかの作戦行動を行ったようだ。
5月16日から18日の間、韓国の釜山海軍基地に滞在した。
その後、日本海を出たようで、5月20日には宮古島の東側を南下した。
5月23日にホワイトビーチに短時間寄港。
5月24日から28日にかけては、東シナ海で活動していたようだ。
5月30日(あるいは31日)には「フィリピン海」で、貨物弾薬輸送艦アラン・シェパード(ALAN SHEPARD T-AKE 3)から洋上補給を受けている。
そして、6月4日から5日間、シンガポール海軍との合同演習「パシフィック・グリフィン2025」(Pacific Griffin 2025)の支援のためグアムに滞在した。
さらに6月17日から19日にかけても、グアムに寄港している。
グアムを出た後はまっすぐに日本列島に向かってきたようで、6月23日に釧路沖に現れて、6月25日に横須賀に入港したのだった。
ところで、5月8日から行われた米海軍と韓国海軍の合同軍事演習MCSOFEXは規模の大きな演習だったようだ。
MCSOFEXには、韓国海軍側からは世宗大王級駆逐艦の栗谷李珥(DDG 992)、広開土大王級駆逐艦の楊万春(DDH 973)、忠武公李舜臣級駆逐艦の大祚栄(DDH 977)、大邱級フリゲート艦の大邱(FFG 818)、東海(FFG 822)、天池級補給艦大清(AOE 58)、尹永夏級ミサイル艦、潜水艦が参加し、米軍からはウィリアム・P・ローレンスと第78ヘリコプター海洋打撃飛行隊が参加した。
米海軍HPの5月8日付け記事「US, Republic of Korea naval forces conduct maritime counter-special operations exercise」が、MCSOFEXに参加した艦艇や部隊の報告をしているのだが、そこに気になる記述がある。
駆逐艦ローレンスについて、「William P. Lawrence is currently assigned to Destroyer Squadron (DESRON) 15, the Navy’s largest DESRON and the U.S. 7th Fleet’s principal surface force.」(ウィリアム・P・ローレンスは現在、海軍最大の駆逐戦隊であり、米第7艦隊の主力水上部隊でもある第15駆逐戦隊(DESRON15)に所属している)と述べているのだ。
DESRON15は、横須賀を母港としている駆逐艦が所属する部隊だ。
他方、ウィリアム・P・ローレンスは、パールハーバーを母港としているはずだ。
昨年10月13日にパールハーバーを出港して今回の任務航海を開始した際にローレンスは、駆逐艦ステレット(STERETT DDG 104)とともに第1駆逐戦隊(DESRON1: Destroyer Squadron 1)を編成し、原子力空母カールビンソン(CARL VINSON CVN 70)の空母打撃群の一員として西太平洋や東アジアの海域にやって来た。
しかし、今年3月に横須賀に寄港した頃からは、駆逐艦ローレンスは実質的にカールビンソンからは離れて活動している。
4月以降のローレンスは、横須賀のDESRON15所属艦として活動していたということなのだろうか。
だが、ローレンスは母港を横須賀に移してはいないはずだ。
所属部隊の一時的な異動ということだったのだろうか。
さらにその後、米軍画像サイトDVIDSに掲載された記事には、ローレンスがもう一つ別の部隊に異動した(?)とも読める記述もある。
既に述べたようにローレンスは6月4日に、シンガポール海軍との合同演習「パシフィック・グリフィン2025」の支援のためにグアムに寄港したのだが、DVIDSの、この演習を報告している記事「USS William P. Lawrence (DDG 110) participates in Exercise Pacific Griffin 2025」では、ローレンスは第7駆逐戦隊(DESRON 7)の艦ということになっている。
ローレンスの所属部隊が再び変わったということなのだろうか。
DESRON 7は、シンガポールを本拠としていることになっている駆逐艦部隊だ。
シンガポール海軍と合同訓練を実施するにあたっては、所属部隊もシンガポールを本拠とする部隊に形式的にではあれ変更しておいた方が、何らかの意味で都合が良かったということなのだろうか。
なお、米海軍協会(USNI)のHPに随時更新されて掲載される記事「Fleet Tracker」の上では、ローレンスは6月23日の時点でもDESRON 1の駆逐艦としてアラビア海の原子力空母カールビンソンに随伴していることになっている。
実態とは明らかに異なっている情報がUSNIのHPに掲載されている理由は不明だ。
(RIMPEACE編集部 星野 潔)
5月8日から開始された米韓合同演習MCSOFEXについて報告する米海軍HPの記事の一部。この記事にローレンスが第15駆逐戦隊に所属しているという記述がある。
https://www.surfpac.navy.mil/Media/News/Article/4199814/us-republic-of-korea-naval-forces-conduct-maritime-counter-special-operations-e/ より引用
6月6日にグアムで行われた「パシフィックグリフィン2025」準備会議の様子を伝える米軍画像サイトDVIDSの記事。ローレンスは第7駆逐戦隊所属と読める内容になっている。
https://www.dvidshub.net/image/9114368/uss-william-p-lawrence-ddg-110-participates-exercise-pacific-griffin-2025 より引用
2025-6-28|HOME|