横須賀に寄港したズムウォルト級駆逐艦



7月7日、横須賀基地に入港するズムウォルト級駆逐艦マイケル・モンスーア(25.7.7 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


入港翌日の7月8日には艦橋上部で足場の組み立てが始まっていた(25.7.8 木元茂夫 撮影)


7月9日には、アンテナ周囲の足場は組み上がっていた(25.7.9 星野 撮影)



アンテナ周囲の足場の上で何らかの作業が行われている(25.7.11 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


7月の終わり頃には、アンテナ周囲の足場は取り外されていた(25.7.27 星野 撮影)


ズムウォルト級駆逐艦は、ステルス性を追求した独特の外観をもつ(25.7.27 星野 撮影)


艦橋の前の2つのカバーの中に、主砲「155ミリ先進砲システム」がそれぞれ1門ずつ計2門入っていて、射撃時に姿を現すはずだったが、
そもそもこの主砲で使われるはずだった砲弾の「誘導弾」は開発が打ち切られ、つくられていないという(25.7.27 星野 撮影)

空母プリンス・オブ・ウェールズの横須賀寄港よりも1ヶ月以上も前のことになってしまったが、7月7日の朝、ズムウォルト級駆逐艦マイケル・モンスーア(MICHAEL MONSOOR DDG 1001)が横須賀基地に初めて入港し、新桟橋の4号バースに接岸した。
モンスーアは、8月4日に出港するまで1ヶ月近くにわたって横須賀にとどまった。

横須賀滞在中の7月22日に、この艦の公式フェイスブックに投稿された記事に、「to commemorate the ship's maiden deployment to Seventh Fleet CFAY Yokosuka, Japan」(日本の横須賀にある第7艦隊CFAYへの同艦の初任務展開を記念する)という一節がある。
つまり、この公式フェイスブックの記事の内容が正しいとするならば、驚くべきことにマイケル・モンスーアは、2019年の就役から既に約6年が経っているにもかかわらず、今回の「インド太平洋地域」への展開がこの艦にとって初めての任務航海だったということになる。
米海軍の戦闘艦としては、かなり異例のことだ。

確かにこの艦のこれまでの行動履歴を調べてみると、就役後もほとんど米国周辺、とりわけサンディエゴ周辺にとどまり続けていたことが分かる。
2022年2月後半から3月にかけて及び同年6月にハワイに出かけたのが、この艦にとっての最大の「遠出」だったようだ。

太平洋を渡って第7艦隊の管轄地域にやってきたのは、今回が初めてだったというわけだ。

今回の任務航海を簡単に振り返ってみよう。
今年3月28日に母港サンディエゴを出港したマイケル・モンスーアは、4月3日にパールハーバーに到着し、4月10日には空母ニミッツなどとともにPHOTOEX(艦隊記念撮影)を行い、4月17日にグアム島に到着した。
だが、U.S. Carriers HPの情報によると、この時モンスーアは、4日間のグアム滞在を終えて4月21日に出港した直後に機関部が故障し、結局6月までグアムにとどまることになってしまったようだ。

その後、7月7日にようやく横須賀にたどり着いたモンスーアだが、今度は入港早々、艦橋の上のアンテナの周囲に足場が組み上げられた。
何らかの緊急修理だった可能性がある。

修理だったとしても、その修理だけが理由かどうかは不明だが、結局モンスーアは横須賀に8月4日まで長期滞在することになった。

「満を持して」の「初」任務航海だったはずなのに、どうやらトラブル続きになってしまっていた可能性がある。

なお、横須賀出港後、モンスーアは8月7日に沖縄のホワイトビーチに接岸し、11日まで滞在した。

ところで、モンスーアが就役後6年もの間、任務航海を行っていなかったのは、別に何かの「切り札」の「秘密兵器」として温存され続けていたというわけではないだろう。
おそらくたんに、米軍の「現場」では、この艦は「使えない」船として持て余されてきたということではないか。

そもそもズムウォルト級駆逐艦は、ステルス性を追求した斬新な外観で、鳴り物入りの最新の装備を盛り込むべく設計された巨大艦だ。
駆逐艦に分類されているものの、満載排水量は15000トン近くあり、タイコンデロガ級イージス巡洋艦よりも約5000トンも重い軍艦だ。
だが、当初は30隻以上の建造が計画されたものの、結局は3隻の建造で打ち切りになった。3番艦の「リンドン・B・ジョンソン」(LYNDON B. JOHNSON DDG 1002)は2025年の時点でまだ建造中だという。

搭載されるはずの「最新」の装備も、技術上の困難や高コストなどのため「計画倒れ」になっているものが多いようだ。

ズムウォルト級駆逐艦の「ネームシップ」であるズムウォルト(ZUMWALT DDG 1000)は、2016年に就役しサンディエゴを母港としているのだが、この艦も、これまでに一度だけ、2022年9月に横須賀にやって来たことがある。

しかし、この艦も横須賀にやって来るまでは、就役から約6年の間、太平洋を横断したことすら無かった(2019年に一度、アラスカに行ったことはあったようだが)。
2022年秋のズムウォルトは、横須賀を出港した後は、東アジアや東南アジアの他の港には一切立ち寄らず、パールハーバーへ、そしてサンディエゴへと、ひたすらまっすぐに帰って行った。

そして、これまでのところ、ズムウォルトが太平洋を横断したのはこの2022年の1回だけにとどまっている。
要するに、あまり使われていないのだ。
2023年の夏からは大規模改修工事に入ったという情報もあるが、改修工事によってどうなったのか、今のところあまり情報は無いようだ。

今回のマイケル・モンスーアや2022年のズムウォルトの横須賀寄港は、莫大な開発費や建造費をかけて造った軍艦を、一応は「使った」ことにするため、いわば「エクスキューズ」のためのものだった可能性もあるのではないか。

あるいはそれに加えて、「ズムウォルト級駆逐艦」の独特の異様な外観を人びとに見せつけて、米軍の「すごさ」を感じてもらおう、というような宣伝活動の意味もあったのかもしれない。

それとも、実は、傍からは窺い知れないような、何らかの実質的な任務を担ってやって来たのだろうか。
だが、これまで持て余され続けてきて、搭載しているはずの兵器にも使えない状態のモノもあるというこの軍艦が、一体どんな「任務」に就いているというのだろうか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)



2022年9月に横須賀基地に寄港した、ズムウォルト級駆逐艦の1番艦ズムウォルト(22.9.30 星野 撮影)


この時ズムウォルトは、原子力空母用の12号バースに停泊した。この時、同じバースのズムウォルトの前には、沿海域戦闘艦オークランドが停泊した(22.9.30 星野 撮影)


サンディエゴを母港とする沿海域戦闘艦オークランドも、2022年9月、ズムウォルトと同じ時期に横須賀にやって来た。この艦は2023年も横須賀に来ている(22.9.30 星野 撮影)


2025-8-20|HOME|