日米韓共同訓練に横須賀から揚陸指揮艦ブルーリッジが参加
原子力空母ジョージ・ワシントンは不参加

フリーダムエッジ演習で、揚陸指揮艦ブルーリッジが艦隊航行の先頭に 自衛艦隊HPより
第3回目の日米韓共同訓練フリーダム・エッジが9月15日から19日まで行われた。
第7艦隊広報部は「日米韓5日間の演習では、防衛軍が弾道ミサイル防衛を実行する中、航空および海上訓練とサイバー戦争および特殊作戦能力をシームレスに組み込んで、マルチドメイン能力をさらに強化した。防御的な対空、対水上戦、海上阻止作戦。VBSS(海上船舶臨検のための訪問、搭乗、捜索、押収)。海賊対策、医療搬送。海上補給作戦」とし、「情報共有と相互運用性を日常的で反復可能かつ現実的なものにするための3か国間の継続的な取り組み」としている。
「マルチドメイン」とは、陸海空に宇宙、サイバー、電磁波を加えた「複数領域」の任務を担う部隊のことである。
この演習、初実施は24年6月、原子力空母セオドア・ルーズベルトが参加、2回目は24年11月、横須賀配備直前の原子力空母ジョージ・ワシントンが参加した。
統合幕僚監部は24年11月13日付で、「朝鮮半島を含むインド太平洋の平和と安定のために、日米韓の複数領域における相互運用性を促進し、自由を守るという日米韓の防衛態勢と強固な意志を引き続き示すものです」と表明した。
それが、3回目の25年9月5日付発表では、「自衛隊は、本訓練を通じて自衛隊の戦術技量の向上を図るとともに、日米韓の複数領域における相互運用性の向上を図ります」と、いやにあっさりした文章になった。
しかし、演習参加規模は逆に、これまでで最大となった。
まずは、8月28日に日米合同委員会が開催され、フリーダムエッジのために、静岡県の浜松飛行場の滑走路と大型貯油タンク、建物、福岡県築城飛行場の建物の一部の限定使用が承認された。そして、3月に発足した統合作戦司令部が初参加、その他に統合幕僚監部、自衛艦隊、航空総隊、航空支援集団及び自衛隊サイバー防衛隊の人員700名。これに加えて下記の部隊が派遣された。
1回目と2回目と比較されたい。配備先が一カ所または限定されているものは配備先を記す。
第1回 ヘリ空母「いせ」(佐世保)、イージス艦「あたご」(舞鶴)、哨戒機P-1(厚木または鹿屋)
第2回 イージス艦「はぐろ」(佐世保)、哨戒機P-3、戦闘機F-15、戦闘攻撃機F-2(築城、百里、松島)、早期警戒管制機E-767(浜松)
第3回 ヘリ空母「ひゅうが」(舞鶴)、イージス艦「はぐろ」、哨戒機P-1、哨戒ヘリコプターSH-60K、早期警戒管制機E-767、空中給油・輸送機KC-767(小牧)、空中給油・輸送機KC-46A(美保)。
空中給油・輸送機が2機種同時に派遣されたのははじめてで、相互の連携、通信などを実際の飛行の中で確認したと推測される。
韓国の「聯合ニュース」は9月16日付で「韓米日の複数領域訓練に米空母が異例の不参加−北朝鮮の反発考慮か」という記事を配信し、「米国が韓米日の共同訓練に空母を派遣しないのは異例とされる」、「韓国軍の消息筋は中東に二つの空母打撃群が配置されているとして、米軍の日程のため、今回は空母が参加しなかった可能性がある」、「一部では北朝鮮が韓米日の訓練に強く反発していることが考慮されたとの見方が出ている」と報じた。
ブルーリッジは9月18日、平澤基地に寄港した。
工事費約108億ドルを投入して建設された面積1467万7000m2という巨大基地で、2018年に在韓米軍司令部がソウル近郊の龍山から移転して来た。
米第7艦隊司令官のフレッド・カッチャー中将は、「ブルーリッジと第7艦隊チームによる平沢への今回の寄港は、米韓同盟に対する我々の確固たるコミットメントを示すものである」と発言。在韓米海軍司令官のシャリフ・H・カルフィー少将は、「韓米同盟に対する我が国の鉄壁のコミットメントと、両国の海上プレゼンスの強さを力強く思い出させるものである」と応じた(第7艦隊広報部)。
25日から30日までは釜山に停泊した。ここでも在韓米海軍司令官のシャリフ・H・カルフィー少将が「韓米同盟に対する私たちの鉄壁のコミットメント」と、発言している。
ブルーリッジは10月3日から5日まで相模湾に所在。何らかの訓練をやったと推測される。6日に横須賀基地に帰港した。
(木元 茂夫)

横須賀に帰港したブルーリッジ、右側はイージス艦ラルフ・ジョンソン(25.10.7 木元 撮影)
2025-11-2|HOME|