トランプ、高市の横須賀訪問とその前後

10月28日、大統領専用ヘリから原子力空母ジョージ・ワシントンに降り立ったトランプ米大統領。一番右の白い柱の前に建っている(25.10.7 木元 撮影)
10月28日、トランプ米大統領と高市首相は米大統領専用ヘリに乗って横須賀基地の原子力空母ジョージ・ワシントン(GEORGE WASHINGTON CVN 73)を訪問し、演説を行った。
かれらの横須賀訪問時およびその前後における、米軍や自衛隊の動きを以下にまとめておく。

10月17日、海上自衛隊逸見岸壁に接岸した「かが」(25.10.17 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)

10月18日、横須賀基地に入港する原子力空母ジョージ・ワシントン。艦橋の側面に「73」と書かれている船だ(25.10.18 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)

ジョージ・ワシントンは多数の艦載機を飛行甲板に並べたまま入港した。トランプ・高市のイベントを演出するためだ(25.10.18 星野 撮影)
■艦艇の動き
10月17日、広島県の呉基地から空母に改装中の護衛艦「かが」が横須賀基地にやってきた。
10月18日、原子力空母ジョージ・ワシントンが艦載機を搭載した状態で横須賀基地に帰港した。
2019年のトランプ大統領の横須賀訪問では、トランプ大統領と当時の安倍首相は、それぞれのヘリでやって来て、「かが」の飛行甲板に降り立った。今回も「かが」はトランプ大統領出迎えのためにやって来たかと思われたが、横須賀を出港し10月20日からフィリピン海で行われた自衛隊統合演習に参加した。米海軍の呼称は「年次演習(ANNUALEX)2025」である。
第7艦隊は、横須賀基地所属のイージス巡洋艦ロバートスモールズ(CG62)が10月4日横須賀基地を出港後、相模湾を経由してフィリピン海に向かった。
イージス駆逐艦シュープ(DDG86)も10月6日、出港した。
対潜哨戒機のP-8Aポセイドンも参加した。ルイス・アンド・クラーク級貨物弾薬補給艦アメリア・イアハート(T-AKE6、全長210m、満載排水量42,674トン)、同級のウォーリー・シラ(T-AKE8)、給油艦ティペカヌー(T-AO 199、全長206.5m、満載排水量41,886トン)と補給重視の編成で望んだ。岩国基地に恒常的に配備されている米海兵隊の戦闘攻撃飛行隊VMFA242のF-35BライトニングIIも参加した。
第7艦隊後方司令官は「今年のANNUALEXは、海上通信戦術、対潜戦、航空戦、洋上補給などを通じて、多国間訓練の中で日米二国間同盟を強化することに焦点を当てています。海上自衛隊いずも型ヘリコプター搭載・対潜戦駆逐艦「かが(DDH 184)」が、今年のANNUALEXに参加する海上自衛隊の先頭に立っています」と発表している。
米海軍も多数のヘリを搭載している「かが」の対潜艦戦能力を評価しているようだ。
例年原子力空母が参加するこの演習で、今回は参加させずに「かが」を中心に据えたのは、単純にジョージ・ワシントンをトランプ大統領出迎えに振り向けるためだけだったのだろうか。自衛隊を対中国の前線に押し出そうとする意図が感じられなくもない。
「かが」は10月23日に横須賀にもどって来て沖泊まりし、10月24日に再び出港した。

10月20日 フィリピン海を航行する日米、オーストラリア、フランス、ニュージーランドの艦艇。中央の巨大な艦艇が「かが」。
米第7艦隊司令部(Commander, U.S. 7th Fleet)HPより引用
https://www.c7f.navy.mil/Media/News/Display/Article/4324950/japan-us-forces-begin-multilateral-exercise-annualex-2025/
■ヘリコプターの動き
大統領専用ヘリ、マリーンワン2機はC-17輸送機で米国から空輸され、厚木基地で待機していた。
10月23日午後、マリーンワンと厚木基地所属のMH-60Sの5機編隊がが厚木基地から横須賀基地まで「試験飛行」を行った。
10月28日午後2時過ぎ、マリーンワンは厚木基地を離陸し、トランプ大統領と高市首相の待つ赤坂プレスセンターに向かった。
厚木基地を離陸したMH-60Sの4機編隊が午後3時20分ごろ横須賀基地上空に姿をあらわした。
次々にジョージ・ワシントンに着艦し、大統領のお付きの人々と警備要員らしき人々を次々に降ろしては、発艦していった。マリーンワンの1機目は3時40分頃飛来、続いて45分頃、2機目が飛来した。トランプ大統領と高市首相は次々に降り立った。
空母の前にはイージス艦「まや」と、機雷戦装備護衛艦「もがみ」が配置されていた。
乗組員が居並ぶ空母の格納庫で、首相は「トランプ大統領とともに、世界で最も偉大な同盟になった日米同盟を更なる高みに引き上げてまいります」と発言した。

10月23日 試験飛行するマリーンワン。横浜市金沢区の上空で(25.10.23 木元 撮影)

10月28日、原子力空母ジョージ・ワシントンとヨコスカ平和船団(25.10.28 木元 撮影)

10月28日、横浜市金沢区の方向から現れたMH-60Sの4機編隊(25.10.28 木元 撮影)

10月28日、MH-60Sヘリは、ボディガードと思しき人々をジョージ・ワシントンに降ろした(25.10.28 木元 撮影)
■トランプ大統領離日後の原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)
10月30日に横須賀基地を出港したGWは、11月2日から4日まで四国沖から東シナ海にかけて、イージス巡洋艦ロバート・スモールズ(CG62)、イージス駆逐艦ミリウス(DDG69)を従え、海自最新鋭のイージス艦「はぐろ」と日米共同訓練を実施した。
11月5日、GWは韓国釜山海軍基地に入港し4日間停泊した。
9日に釜山を出港、11月12日、ウルルン島南方でUSSロバート・スモールズ(CG 62)、USSミリウス(DDG 69)、USSシュープ(DDG 86)、および4隻の韓国海軍艦艇と共に演習に参加した。
11月17日にルソン海峡を西向きに通過して南シナ海に入り、 11月19日から21日まで、ジョージ・ワシントン空母打撃群はスプラトリー諸島の北東で作戦航海を実施した。
一方、原子力空母ニミッツは11月14日、南シナ海の別の海域で、イージス駆逐艦グリッドレイ(DDG101)、同ウェイン・E・マイヤー(DDG108)、同 駆逐艦レナ・サトクリフ・ヒグビー(DDG123) を従がえ、海自護衛艦「あけぼの」、比海軍 フリゲート艦ホセ・リサール、同アントニオ・ルナ、比沿岸警備隊 巡視船ケープ・サン・アグスティン、巡視船ルチョーラ・アキノと共同訓練を実施した。
他方、自衛隊統合幕僚監部の発表によれば11月11日、「口永良部島(鹿児島県)の西約120kmの海域において、同海域を東進する中国海軍レンハイ級ミ サイル駆逐艦(艦番号「103」)を確認した」。
レンハイ級とは満載排水量13,000トン、全長180mの巨大艦であり中国東北地方の都市からとった「鞍山」という艦名である。さらに、「中国海軍ジャンカイU級フリゲート(艦番号「547」) 及びフチ級補給艦(艦番号「902」)を確認した」と発表した。
東シナ海、南シナ海の緊張は高まったままである。
(木元 茂夫)

11月2日から4日にかけての日米共同訓練にかんする海上自衛隊のプレスリリース
2025-11-24|HOME|