原子力空母、横須賀出港

5月23日の午後、横須賀基地の12号バースを離れる原子力空母ジョージ・ワシントン(26.5.23 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)

横須賀基地を出るジョージ・ワシントン。登舷礼は行われなかった(26.5.23 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)
5月23日の午後、原子力空母ジョージ・ワシントン(GEORGE WASHINGTON CVN 73)が横須賀基地を出港した。
ジョージ・ワシントンは、5月17日の朝、試験航海から横須賀に戻ってきていた。
5月21日の日中の時点では、5月22日の10時00分頃に出港するという外務省からの通知があったことを横須賀市は発表していた。
しかしその後、同日中に、出港予定が5月23日の10時00分頃に変更になったという通知が外務省からあったことを横須賀市は発表した。変更の理由についての説明は何もない。
ところが、23日の午前10時になっても、原子力空母は出港しなかった。
ジョージ・ワシントンが動き出したのは、結局、23日の13時50分頃のことだった。
横須賀配備の空母が任務航海に出港する際には、飛行甲板上に乗組員たちが整列して「登舷礼」を行うことが通例だったのだが、今回それは行われなかった。
ジョージ・ワシントンは一昨年11月に横須賀に再配備された後、昨年は6月と10月に任務航海に出港したが、いずれの出港の際にも登舷礼は行われなかった。
任務航海への出港の際の登舷礼は、省略することにしたのだろうか。
5月20日付けの防衛省の発表によると、5月24日から5月30日頃までの間、九州沖の洋上で空母着艦資格取得訓練(CQ)を実施する予定だという情報が「米側から」あったという。
5月24日に「九州沖」でCQを開始するには、23日午後の横須賀出港はかなりギリギリのスケジュールだ。
出港の予定が遅れたのは、なぜだったのだろうか。
5月21日の未明に、横須賀のドブ板通りで酔った100人以上の米兵が騒動を起こし、米軍の憲兵隊が出動する事件があったが、この事件と出港の遅れは関係があるのだろうか。また、登舷礼を行わなかったことと何か関係があるのだろうか。
既に以前の記事に書いたように、ジョージ・ワシントンは、5月10日に試験航海に出港した際には、東京湾を出て行くまでの間一度もAIS(船舶自動識別装置)をオンにしなかった。
また、5月17日に試験航海から戻ってきた際にも、交通の難所である浦賀水道を通過している間は一度もAISをオンにせず、基地の目の前に到着した時に突然AISをオンにした。
5月23日の出港の際にも、基地を出た直後にはAISを一旦オンにしたもののすぐにオフにし、肝心の浦賀水道はAISをオフにしたまま通過した。
その後、浦賀水道を抜けて東京湾の出口付近、三浦半島の剱崎沖に達してから、再びAISを短時間オンにした。AISをオンにして東京湾を通過したかのように見せる一種の「アリバイ工作」だったのだろう。
つまり米軍は、浦賀水道の海上交通の安全よりも、戦時下における危険箇所通過時の空母の位置情報の秘匿を優先したということだ。
米軍は、いざという時には日本の海上交通の安全など犠牲にしてでも、自分たちの安全確保を優先することを見せつけたのだ。
さて、5月23日の「本来の」ジョージ・ワシントンの出港予定時間よりも30分くらい前には、横須賀基地から巡洋艦ロバート・スモールズ(ROBERT SMALLS CG 62)が出港した。
任務航海の時と同様に、ジョージ・ワシントンの護衛を担うのだろう。
3月に駆逐艦マスティン(MUSTIN DDG 89)が横須賀に再配備された際、マスティンはロバート・スモールズの後継艦だと防衛省は発表した。
であるならば、ロバート・スモールズは速やかに横須賀から退去しなければならないはずだが、なぜか相変わらず横須賀を拠点とした任務活動を継続している。
横須賀母港艦が1隻増加してしまったような事態が続いている。
これは一体どういうことか。
5月23日の9時台に横須賀を出港したロバート・スモールズは、ジョージ・ワシントンが横須賀を出るまでは相模湾で待機していたが、その後、同日20時頃には、静岡県の駿河湾沖の遠州灘を南西に向けて航行していた。
おそらくこの時、ロバート・スモールズの近くにジョージ・ワシントンも航行していたのだろう。
なお、原子力空母ジョージ・ワシントンが横須賀を出港する際には、海上自衛隊の護衛艦「しらぬい」も、横須賀基地沖に停止していた。
そして、出港した原子力空母に随行するようなかたちで、「しらぬい」も東京湾を出て行った。「しらぬい」もジョージ・ワシントンの護衛を担っていた可能性がある。
しかし、いったいいかなる法的根拠をもって、海自護衛艦が米軍の原子力空母を護衛することができるというのか。
自衛隊幹部は、自衛隊の活動は「法の支配」の及ばない領域だと考えるほど、のぼせ上がっているのだろうか。
それとも、「武器等防護」が発令されたとでもいうのか。海自護衛艦が米原子力空母を護衛しなければならないほど、東京湾は危険な場所になったとでもいうのか。
ところで、「九州沖」でCQを行った後、ジョージ・ワシントンはどこに行くのだろうか。
米国とイスラエルが2月28日に開始したイランへの攻撃には、現在、原子力空母エイブラハム・リンカーン(ABRAHAM LINCOLN CVN 72)とジョージ・H.W.ブッシュ(GEORGE H.W. BUSH CVN 77)が派遣されている。どちらの艦もアラビア海にいるようだ。
このうちエイブラハム・リンカーンは、昨年11月21日に母港サンディエゴを出港してから既に半年以上が経過している。乗組員の疲労はかなりの状態に達しているだろう。
エイブラハム・リンカーンの代わりに、ジョージ・ワシントンが中東に向かう可能性はないだろうか。
日本の基地に配備されている米軍艦船が、日本や極東を越えて中東の軍事攻撃に参加することは、安保条約に明白に違反する行為だ。
また、事前協議が行われていない以上、日米安保条約第6条の実施に関する交換公文(岸ハーター交換公文)にも明白に違反する行為となる。
つまり、空母が横須賀から中東に出撃することは、法的にも決して許されない行為なのだ。
(RIMPEACE編集部 星野 潔)

5月23日の出港予定時間だった午前10時頃の横須賀基地。まだ動き出していないジョージ・ワシントンの艦橋が見える(26.5.23 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)

5月20日付けの防衛省の発表。宮崎県新富町HPより引用
2026-5-24|HOME|