横須賀での原子力空母の大規模修理を振り返る−1


ジョージ・ワシントンの飛行甲板で行われていたカタパルトの修理(09.1.27 撮影、第4次厚木爆音訴訟原告団提供)
 

原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)は6月10日に横須賀から出航した
GWは横須賀基地12号バースに停泊して、1月から5月にかけて定期修理(SRA, Selected Restricted Availability)を受けている。

NAVAL SEA SYSTEMS COMMANDO 発行のNAVSEA Newswire 2009.5 に、横須賀基地で行われたSRAがとりあげられている。
「このSRAは、合衆国外で初めて行われた原子力空母の大規模修理だった。
空母の乗組員、ピュージェットサウンド海軍造船所・中間修理施設(PSNS&IMF)、横須賀艦船修理部(SRF)の3者がSRAを 分担した。
このSRAは全体で約20万人日の工程だった。PSNS&IMFは7万人日の推進システム部門の仕事をした。プロジェクトチームの 中心は原子力技術者2人と推進システム技術者2人だった。
SRFとその主契約企業は飛行甲板、カタパルト、補助機関、更新改修の業務(9万3千人日)を行い、空母の乗組員が3万人日の補修 作業を行った。」
原子力空母の推進機関関係の工事を行うために、米本国から原子力技術者を含む熟練技術者650人が横須賀に派遣されたのだ。

「横須賀SRFは通常動力艦の修理を行う。横須賀SRFには出航前の修理、定期修理、改造、大規模定期修理(SRA)、ドライドック に入る大規模定期修理(DSRA)を行う能力がある。すべての通常動力艦の船体、機関、電気、電子、兵器、ガスタービン、ボイラー他 の修理能力をそなえ、機械的・電子的な検査機器の修理・調整もできる」(艦隊メンテナンスマニュアル,Joint Fleet Maintenance Manual, 2008.12.8 改定)
横須賀のSRFは原子力艦船のメンテは行わない、と定められている。

原子力艦船修理と修理施設の関係については、「米海軍艦船メンテナンスのポリシー」(MAINTENANCE POLICY FOR U.S. NAVY SHIPS, 海軍作戦部長、2003.7.11)に明示されている。
「個別組織レベルのメンテナンスを超える、原子力軍艦内の原子炉の維持管理、修理、更新は、原子力取り扱いができる造船所又は中間 修理施設に限られる」
「原子力軍艦内の、原子炉を支え、原子炉の保安システムに係る蒸気発生システム、電源システム、及びその補助的な艦内システムの デポ・レベルの維持管理、修理、更新は、原子力取り扱いができる造船所に限られる」
「原子力支援施設を備えた潜水艦母艦が有用なのは、時に原子力艦船修理機能を持たない造船所に派遣されて、要求に応えられるからだ」
この3つのパラグラフには、その目的などについての参照文書が指示されているが、その内容は不明(訳注)。

原子力艦船の原子炉関連部分の修理能力(権限)を持たない横須賀基地のSRFで、原子力空母の大規模修理を行うために米海軍が編み出 したのが、原子炉関連部分の修理資格を持つ技術者を大量に数ヶ月、横須賀に派遣するというやり方だった。(続く)

(RIMPEACE編集部)


2009-7-16|HOME|