横須賀での原子力空母の大規模修理を振り返る−2


ジョージ・ワシントンの飛行甲板から見た3隻の修理バージ(08.12.6 撮影)
 

09年1月から5月まで、横須賀基地12号バースに停泊する原子力空母ジョージ・ワシントンの定期修理(SRA)が行われた。合衆国外で初めて行われた原子力空母の 大規模修理では、原子炉関連修理の資格がない横須賀の艦船修理部(SRF)に代わって、ピュージェットサウンド海軍造船所の熟練 技術者650人が原子炉に関連する部分の修理を行った。

その作業内容は「(原子力推進機関の)1次系、2次系の両方のプラントに関連する部品やシステムに関するもの」「低レベル放射能を 含む部品やシステムの定期的なメインテナンスも含む」と、原子力推進プログラムは回答した(09.3.31 朝日新聞神奈川版)
原子炉格納容器(2次放射能隔壁)内の1次冷却系の補修も行ったのだ。

この補修の結果、放射性廃棄物が多量に発生し、それが3月末に貨物船ノーブル・スターによって、横須賀基地から米本国に運び出された。 運びだされるまでの間、放射性廃棄物は空母の艦内で保管されたのだろうか。それとも艦から出されて、支援施設に保管されたのだろう か?
上記朝日新聞神奈川版によれば、原子炉に関連する部分の修理はすべて艦内で行ったとのことだ。出てきた放射性廃棄物も艦内にとどめら れるのがシンプルな処理だ。仮に今回の修理で出てきた廃棄物が艦内から直接運び出されたとしても、次回以降に放射性廃棄物の量が増え ることも考えられる。

ファクトシート(和訳)では「適切に包装された上で、合衆国の沿岸の施設又は専用の施設船に移送され」となっている「専用施設船」に ついて tender facilities が正文の英語の表現だ。
「米海軍艦船メンテナンスのポリシー」の中で"tenders with nuclear support facilities" の tenders が、フランク・ケーブル他1隻の 潜水艦母艦を指すことには疑問の余地はない。
だがファクトシートの tender facilities には潜水艦母艦内の施設というよりもっと一般的な「支援施設」と読み取れる余地がありそ うだ。たとえば、12号バースのすぐ近くに固定してあるYR95など修理用バージに、空母艦内に収容しきれなくなった放射性廃棄物を 移しても、ファクトシートどおりに作業を進めた、と米軍が「胸を張って」言いぬける道が残されているのではないか、と危惧する。

日本政府は固形廃棄物の処理について、全量空母内に保管して直接輸送船に移して米本国に送ることの確認を改めて米政府に求める必要が ある。ファクトシートの tender facilities についても、これは原潜修理の際の潜水艦母艦を意味し、原子力空母の修理には該当しない ことも明確にさせねばならない。(続く)

(RIMPEACE編集部)


米海軍原子力艦が使う加圧水型原子炉(米海軍資料を用いて作成)


2009-7-19|HOME|