横須賀での原子力空母の大規模修理を振り返る−4


原子力空母の配備が環境に与える影響についての米海軍の報告書(2008.11)より
原子力空母がメイポート基地を母港とした場合、3つの修理支援設備が同時に建設される
 

フロリダ州メイポートは、米大西洋艦隊の巡洋艦、駆逐艦、フリゲイトなどのほか、通常動力空母ジョンFケネディが退役するまで母港と していた基地だ。
米海軍は、このメイポート基地にバージニア州ノーフォーク基地を母港とする原子力空母5隻のうちの1隻を移動させることを選択肢の 一つとする環境アセスに2年間かけて、最終報告書(Final EIS for the Proposed Homeporting of Additional Surface Ships At Naval Station Mayport,FL)が出たのが2008年11月だった。
タイムラグがあるものの、通常空母から原子力空母へという動きは、横須賀への原子力空母ジョージ・ワシントンの配備と重なるものだっ た。

この最終報告書には、原子力空母の母港となった場合に「原子力推進プラントのメンテナンス施設が建設される」として、その建設を環境 評価の対象としている。その3つが、上図に示されているCIF(Controlled Industrial Facility), SMF(Ship Maintenance Facility) , MSF(Maintenance Support Facility)だ。
ちなみにC−2バースにいるのが、母港化したと仮定した原子力空母だ。空母の名前はまだ発表されていない。

最終報告書第2章に載っている各施設の説明の抄訳は以下の通り。

CIF(放射能管理下の作業施設)
海軍の原子力推進プラントに係る放射線を浴びた機械や部品を、検査、修正、修理する放射線業務を行う施設。また、液体や固体の放射性 廃棄物の取り扱い、回収、梱包も行う。放射線に関係のない管理・支援部門のスペースもある。この施設は壁を共有する2つの建物からなり、 全体の敷地面積は約4800平米。片方が作業場でもう一方が管理・支援業務用だ。
CIFは、石柱とコンクリート板の基礎の上に建築される鉄筋コンクリートの建物だ。ハリケーンの風と波のうねりを考慮した建物のデザインと配置 に注意せねばならない。
(やはりバージの上に載せるようなシロモノではないようだ。編集部注)
建物の作業棟は放射線作業エリアだ。原子炉の燃料交換以外は、原子力空母の放射線に係るすべての維持・修理を行う。その業務には、 分解・組み立て、除染、工作、液体処理、検査、溶接、切断、放射線化学、廃棄物処理・貯蔵・積み出しも含まれる。天井の高い部分と低い 部分があり、2基のブリッジ・クレーンが装備される。(以下略)

SMF(艦船修理施設)
SMFは1万平米超の施設で、原子力空母の推進プラントの中で、放射線の影響がないデポ・レベル(最高レベル)の維持作業を行う。 鉄筋コンクリートの建物で中2階を含む3層の構造だ。25トン級の複数のブリッジ・クレーンを設置する。大きな装置の補修を行うため、 特別な基礎工事をしたコンクリートの床面となっている。さまざまな作業場がSMFの中に設けられる。

MSF(補修支援施設)
MSFは2階建て、4千平米超の鉄筋コンクリートの建物だ。原子力空母の推進プラント維持作業の支援と、物資の受け取り、検品、 輸送、保管の業務を行う。艦上の作業の始まりと終わりに、作業者が出入する場所であり、ロッカールームもある。この施設では、 原子力空母の推進プラント維持作業で発生した化学的に有害な廃棄物を、90日未満の間保管する。

これらの3つの施設は、原子力空母の修理に欠かせないものだが、未だ横須賀には建設されていない。ただし、類似の作業は今回の大規模 修理の中でも行われていた。
放射性廃棄物が排出されるような作業は、明らかにCIFが支援する作業だ。建物はできていなくとも、CIFが担う補修業務がすでに 行われていて、作業の結果放射性廃棄物が出て、それを本国に持ち帰ったのだ。横須賀での原子力空母の修理には、放射線管理を必要と する作業が、施設の裏づけなしに進められている。(続く)

(RIMPEACE編集部)


2009-7-21|HOME|