横須賀での原子力空母の大規模修理を振り返る−6

エード・メモワールやファクト・シートで、米国外での原子力軍艦の原子炉修理は行わないと米国政府が日本政府に約束し、日本政府も それを「錦の御旗」にして原子力空母ジョージ・ワシントンの横須賀配備の地ならしをした。
この「約束」をきちんと守ると、原子力空母の原子炉から推進機関にいたるシステムのメンテナンスが横須賀ではできなくなる。空母を 米太平洋岸の原子炉修理ができる基地まで、大規模修理のたびに回航せねばならない。原子力空母の乗組員は、横須賀基地内などに住む 家族と、さらに6ヶ月の別居生活を強いられ、兵士と家族の生活の質が低下する。

この1月から5月まで、横須賀でジョージ・ワシントンは定期修理(SRA, Selected Restricted Availability)を受けた。米本国から 原子力技術者を含む熟練技術者650人が横須賀に派遣された。1月の時点では約550人となっていたが、NAVSEA Newswire 2009.5 で は650人に増えていた。
原子力空母1隻を東海岸の基地メイポートに配備するためのアセスメントの最終報告書(2008.11)(以下、アセス最終報告書と略)では、 原子力空母が2年に1回行う6ヶ月メンテナンスの際、原子力推進プラントのメンテを行う人数は、それ以外の時期の50人から750人 増える、としている。その支援施設がCIF/SMF/MSFであり、それらの施設が存在することを前提としての数字だ。

ドライドックに入らなかった今回のSRAでも650人がピュージェット・サウンドから派遣されてきたということは、今回の原子力推進 プラント修理の工数が完全なメンテの工数に近いことを示している。
CIFなどの支援施設がないにもかかわらず、これだけ大きな工事を行えたカラクリについて考えてみたい。

放射線管理が必要な作業の支援がCIFで、原子力推進プラントのメンテのうち放射線に関係ない作業を支援する設備がSMFだ。
アセス最終報告書のSMFについての説明によれば、SMFはさまざまな作業ショップをメンテ作業のために提供する。その中には 組み立て、板金、機械、電気、電子ショップなどと並んで、非破壊検査、純水製造というショップもある。
純水製造プラントは山を削って土地を造り、原子力空母の配備予定日までに12号バース後方に完成している。この純水製造のように、 支援施設のCIF/SMF/MSFの機能の一部が分散されて、12号バースの近辺に配置されていれば、原子炉のメンテナンスの象徴で ある支援施設CIFを造らずにも、当面のSRAは乗り切れる、というのが米海軍の出した「矛盾の隠蔽方法」だったのではないだろうか。

この場合、コンクリートで床や壁を補強して放射線をシールドする作業所を持つCIFで行うような修理作業は、空母艦内の放射線管理区 画の中ですべて(外部からの目をシャットアウトして)行ったのだろう。
「GWでのすべての放射能に関する作業は、米国人によって船上で実施され、陸上では推進プラントの作業はしない」(米軍回答、09.3.31 朝日神奈川版)
また、放射線に関係ない作業場は、12号バース近くの3隻のバージなどにも分散していると見られる。

原子力空母内で行われる原子炉の修理は、エード・メモワールに記載されている「米国以外での原子炉の修理」にはあたらない、もしくは見 て見ぬふりをする、というのが「日米間の密約」になっていなければ、横須賀での原子炉修理を取り繕う方法はないだろう。(続く)

(RIMPEACE編集部)


GWの飛行甲板から見た純水製造施設(青い四角のプレートがついている建物)


High Quality Water Facility(純水製造施設)の看板(08.12.6 撮影)
 


2009-7-24|HOME|