横須賀での原子力空母の大規模修理を振り返る−7


延長前の12号バースの奥、6号ドライドックに入渠中のキティーホーク(03.9.3 撮影) 

横須賀基地内で発行されているSeaHawk(海鷹)という新聞がある。キティーホークが横須賀を離れるにあたってのセレモニーを報じる記事 「SRF−JRMC 最大の顧客キティーホーク号に別れ」の中で、空母の大規模修理について次のように述べている。なお、SRF− JRMCとは艦船修理廠及び日本地区造修統括本部のことだ。
「横須賀での約10年間の配備中には、数回の定期修理(SRA)、2003年にはキティーホークを乾ドックに入渠させた大掛かりな定期 修理(DSRA)を行うなど、SRF−JRMCは数え切れない艦船修理を提供した。」 キティーホークは少なくとも2年に一回は大規模な修理を横須賀で受けていた。

「原子力空母は2年に1回、6ヶ月間の修理期間に入る。最初の2回の6ヶ月修理は母港で行われる。3回目は原子力を取り扱い可能な 工廠のドライドックで受ける。(メイポート関連のアセス最終報告書より)
この2年に1回の大規模修理の最中に、米国内の母港ならば艦内の原子炉のメンテを受けられる。
米国の制度では、商業用原子炉の設備点検頻度は24ヶ月連続稼動を挟んで行われる(原子炉停止間隔等の設定の考え方について 平成 19.8.23 原子力安全・保安院)
もしこの6ヶ月修理で原子炉のメンテを行わなければ、原子力空母の原子炉の点検は、商業用原子炉の点検間隔を超える。

エード・メモワールによれば、米国以外の場所で原子炉を修理することはない。ということは、横須賀で6ヶ月修理を行えば、原子炉を 停止して行う定期点検がGWについては出来ないことになる。
西海岸まで行って6ヶ月点検を受ければ、その期間中兵士は母港に戻れず、生活の質が大きく低下する。そもそも2年の間に半年間本国に戻 ることを繰り返すなら、米軍にとっての「前方展開」の意味もなくなるだろう。

原子力艦船の原子炉の修理は外国では行わない、という大原則と、原子力空母が横須賀を母港もしくは前方展開の基地にすることとは、 相容れないのだ。
もしGWが横須賀でメンテナンスを続けるならば、公式見解としてGWの原子炉の定期点検は、米国商業用原子炉の点検のインターバルを 完全に超えることになる。メンテもしない原子炉の安全性は、公式にはどうやって米国政府は説明するのだろうか。

(RIMPEACE編集部)


2009-7-25|HOME|