横須賀での原子力空母の大規模修理を振り返る−8


大規模修理中のGWと、後方に並ぶ工事用のバージ(09.1.28 撮影) 

3月19日の米下院歳出委員会軍事建設小委員会の公聴会でのキーティング太平洋軍司令官の証言が、「しんぶん赤旗」に取り上げられた。 『同司令官は議員の質問に対し、日本には、原子力空母に関する「管理産業施設」(CIF)という施設があることを認め、「それがない 場所には原子力空母を恒常的に駐留させることはない」と述べました。』『一月から横須賀基地で始まったGWの「メンテナンス」作業で は、12号バース(岸壁)に停泊する同空母の艦尾側にバージ(はしけ)を設置。この上に建設された施設がCIFだとみられます。』 (2009.4.14 同紙)

しかし米海軍の原子力推進機関に関連する業務を統括する海軍原子力推進機関プログラム(Naval Nuclear Propulsion Program, NNPP) は、日本にはCIFはない、としてキーティング司令官の証言を否定した。
12号バースの近くの建物の建築状況を見ると、CIF/SMF/MSFの施設群が現時点で出来上がっているとはとてもいえない。 まして、3施設の機能の一部を代替することはあり得ても、12号バース近くに係留されている修理バージにCIFを載せることは無理 な話しだ。放射線をさえぎるためのコンクリートの隔壁の重さを、YR95は支えきれないだろう。

あくまでも現時点での話しだが、横須賀にCIFがあるという太平洋軍司令官の証言は間違っていたと考えねばならない。そのことを前提 にすれば、放射性廃棄物が出るような放射線管理が必要な作業を、陸上の施設(CIF)の支援が受けられずに、原子力空母の艦内だけで 行ったことになる。
技術者をある時期だけ投入して艦内だけで放射線管理が必要な作業を行えるのなら、空母の母港一つ一つにCIFやSMFを建設する必要 はなくなる。GAOが目を光らせて、大幅な施設予算の削減が可能になるはずだ。
米本国でそうできないことが、横須賀ではできたというところに、虚構が潜んでいる。

「原子力空母の推進機関とその部品のルーチンとデポ・レベルのメンテを行うには、原子力空母の母港で必要なメンテを十分に行うため、 CIF,SMF,MSFの施設を建設することが必要だ。」(メイポート・アセス最終報告書より)
母港でのメンテが十分に行われねばならないのは、空母乗り組みの兵士の「生活の質」「士気」に係ることだからだ。キーティング司令官 (海軍大将)はその面を重視しているからこそ「CIFがない場所には原子力空母を恒常的に駐留させることはない」と言った。それが 外国で原子炉の修理を行わない、とするエード・メモワールと矛盾することにまで気づかなかったのだろう。現場の指揮をとって来た海軍 大将には、兵士の士気の維持が優先課題なのだ。

原子力推進プラントの修理・メンテの期間中に兵士の士気を落とさないためには、ジョージ・ワシントンの横須賀配備を説得するために持ち 出したエード・メモワールを反古にするしかない、という状況にある。
それとも非核3原則に抜け道をつけようとしたように、艦内の修理については目をつぶるという「密約」をすでに日本政府との間で交わし ているのだろうか?

(RIMPEACE編集部)


2009-7-27|HOME|