横須賀での原子力空母の大規模修理を振り返る−9


GW大規模修理の分担とその支援施設。ただしCIF、SMFが横須賀に現存するという意味ではない 

原子力空母が横須賀に配備されて、横須賀SRF(艦船修理部)の仕事量はどのくらい減ったのだろうか?
動力源のボイラー部門の仕事に相当する部分だろう、と大まかに考えていたが、そうではなかった。
動力源からスクリューにいたる原子力推進プラント全体が、ピュージェットサウンド海軍造船所・中間修理施設(PSNS&IMF)から来た 米国人技術者の対応する範囲になっていた。

GWのSRA全20万人日の工程のうち、GWの乗組員の工程が3万人日、PSNS&IMFが7万人日の作業を行った。SRFは約10万人日の作業量 となり、通常動力空母の定期修理(SRA)での推進プラントの修理工程も7万人日とすれば、SRAについてざっと7/17,ほぼ4割の仕事が無くなった計算になる。
放射線を管理する必要のない作業領域までPSNS&IMFが担当したことが、そういう結果になった。放射線にかかわりのない作業を 何故SRFに任せなかったのか?

「原子力推進技術は、米国が有する軍事技術の中でもっとも機密なものの一つだ。議会は1954年の原子力法(改正)その他の連邦法により、 外国人が原子力推進技術に接するのを厳しく制限している」
原子力推進技術には、放射線管理が不必要なシステムも含まれる。その部分も横須賀のSRFに任せず、本国からやって きた技術者にすべて任せたのだ。

横須賀を母港とする原子力空母の大規模修理のうち、原子力推進システムの修理を本国から動員した技術者に任せることにより、原子炉の 修理を日本では行わないとしたエード・メモワールに対する違反を隠蔽しやすくなる。
しかし、さまざまなところから隠蔽工作は破綻することになる。放射性廃棄物の移送、横須賀に生活拠点を移した兵士と家族の生活の質の 低下をもたらす別基地での修理の実施、原子炉の定期点検をどこで行うか、など原子力空母の初めての海外への展開に起因する問題が、 横須賀に原子力空母を配備するために使った「原子炉修理を日本で行わない」という日米政府間の約束と真っ向からぶつかるのだ。

原子力空母ジョージ・ワシントンは横須賀に配備されたが、修理という問題一つをとってもこの配備が完成していないことがわかる。
完成どころか、配備に伴う矛盾が噴出し、原子力空母を前方展開するという態勢自体が破綻に瀕している、というべきだろう。(了)

(RIMPEACE編集部)


[参考文献]
PSNS&IMF Pacific Operations

Final EIS for the Proposed Homeporting of Additional Surface Ships At Naval Station Mayport,FL

NAVAL SEA SYSTEMS COMMANDO 発行のNAVSEA Newswire 2009.5

Joint Fleet Maintenance Manual, 2008.12.8 改定

MAINTENANCE POLICY FOR U.S. NAVY SHIPS, 海軍作戦部長、2003.7.11

募集公告 (NW8-YF0840-02-QO200332-OS-I)

原子炉停止間隔等の設定の考え方について 平成 19.8.23 原子力安全・保安院

「横須賀で原子炉修理か」2009.4.14 しんぶん赤旗

アメリカ合衆国原子力水上軍艦の寄港問題について(エード・メモワール収録)

ファクトシート(仮訳)

ファクトシート(英語版)

空母GW補修工事、原子炉部門も(2009.3.31 朝日新聞神奈川版)

「SRF−JRMC 最大の顧客キティーホーク号に別れ」(SeaHawk 2008.6.13)


2009-7-28|HOME|