米海軍のコロナ対策を横須賀から見る(4)

横須賀常駐の米海軍艦船の動き


米軍艦船、この1ヵ月の横須賀基地在港状況

コロナ対応と空母戦闘群出撃の準備を同時に進める第7艦隊は、横須賀に常駐する米艦船や外来の艦船にどんな態勢をとらせているのだろうか。直近5週間の横須賀基地在港状況は、コロナウィル ス禍の影響の大きさを物語っている。

3月26日付けの星条旗新聞に"No kisses,no hugs:"で始まる見出しの記事が載っている。濃厚接触を避けろ、というのではない。帰港した巡洋艦の乗組員が上陸できなくなった、と報じている。

巡洋艦アンティータムは2月下旬に横須賀を出て、日米合同マルチセイル演習に参加、グアム付近の海域などを航行して、3月26日に横須賀に戻ってきた。これまで海の任務から戻ってきた乗組 員と、出迎えの家族が、船が着岸した岸壁で抱き合うのがごく当たり前の光景だった。しかし3月26日の帰港時には歓迎風景が様変わりしていた。その2日前に、本土の米軍も前方展開 している米軍も、家族も含めて基地や軍艦への接近が厳しく制限された。コロナウィルスの感染拡大をおさえるためだ。
それでも乗組員の家族たちは、入港した日の午後にそっと覗きに行き、乗組員は舳先に出てきて手を振り、携帯電話で家族と話をした。(3.26付け星条旗新聞)

アンティータムは横須賀帰港から23日目に出航して相模湾内を動き回り、20日に横須賀港外錨地に戻ってきて弾薬の積み込みなどを行い、22日に再着岸した。外国の港に寄港したときは、帰港 後2週間は乗組員は艦内に閉じ込められる。また任務航海に出る予定ならば、2週間の行動制限(ROM)で艦から出られない。アンティータムの乗組員は1か月家族と離れていて戻ってきたら、姿 の見える距離まで近づいても「キスもハグも」できないまま、再び任務で海上に出ることになるだろう。
横須賀常駐の3隻の巡洋艦のうち、チャンセラーズビルは6号ドックに入渠、シャイローもマスターピアにいるがフェーズドアレイ・レーダーの点検修理が始まっていて、空母の横須賀出航にはじ めから同行するのは無理だ。残ったアンティータムが、乗組員を一度も陸にあげないまま、空母戦闘群の一員として近く横須賀を出るとみられる。


空母の手前のバースに停泊中の巡洋艦アンティータム(4.15 頼 撮影)

2016年3月から横須賀に配備されている駆逐艦バリーは、アンティータムと同じ日に横須賀を出て、同じ演習に参加し、グアムによってアンティータムより1日後に横須賀に帰港した。ここまでは バリーはアンティータムとほとんど変わらない動きをしていたが、帰港日の8日後に横須賀を出港して、台湾海峡を南下して南シナ海に向かった。強襲揚陸艦アメリカや巡洋艦バンカーヒルとともに、 豪海軍のフリゲート艦と合同演習を行っている。

駆逐艦マスティンは出航から海自との合同演習まではアンティータムと一緒に動いていたが、3月下旬にフィリピン海でTルーズベルトやアメリカの艦隊とフォト・エクササイズを行った後、単独 で北上して対馬海峡から日本海に入り、4月初めに津軽海峡を抜け、相模湾から横須賀港外錨地に4月6日に到着した。マスティンは7日横須賀基地に入港、7号バースに2泊してすぐに錨地に 移動、10日には横須賀を離れている。

駆逐艦バリーとマスティンは、ともに短い横須賀寄港ですぐに出航している。艦内に兵士を閉じ込めたままで行動制限(ROM)の要件を満たして出航したとみられる。2隻とも乗組員はコロナ・ ウィルス フリーとみなされて、今後の空母横須賀出航に合わせてレーガン空母戦闘群に組み入れられる可能性が高い。

(RIMPEACE編集部 頼 和太郎)


3月28日の横須賀基地。右端の青いクレーンの隣のマストが駆逐艦バリー(3.28 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


駆逐艦バリーの艦首には、艦番号の52番が白く書かれている(3.30 頼 撮影)


4月9日の横須賀基地。中央赤白アームと青のクレーンの左の一本マストが駆逐艦マスティン(4.9 非核市民宣言運動・ヨコスカ 撮影)


2020-4-23|HOME|