羽田空港と両立しない「横須賀原発」 −1


羽田空港のC滑走路のエンドで離陸許可を待つ大型機の群れ。A滑走路には着陸寸前の機体。
込み合う羽田空港の機能を大幅に削減しなければ、東京湾に原発は作れない(07.5.20 撮影)

「東京に原発を」(集英社文庫 1986.8)の中で広瀬隆さんは逆説的に「そんなに安全で便利だというなら、原発を東京に作ればいいじゃ ないか」と説く。送電コストも激減するし、都心の給湯設備と組み合わせれば原発で熱エネルギーを電気に変えるときの3分の2の ロスもなくせて、エネルギー効率はぐんと改善される..。
安全性さえ考えなければ「いいことづくめ」のこの案に乗って、都心に原発を設置する申請をおカミに出したら、経済産業省から つき返される。その理由のひとつが、羽田空港離発着機の原発への落下確率が基準値を大幅に超えるからだ。

「実用発電用原子炉施設への航空機落下確率に対する評価基準について」(平成14年7月30日 原子力安全・保安院 、以下、02.7.30評価 基準と略) は、原発への航空機墜落事故について原子力安全・保安院が作った内規だ。原子炉設置の許可について 経済産業大臣の処分の審査基準にもなっている。

この「02.7.30評価基準」に基づき、原子力安全・保安院は電力事業者に稼働中の原発について基準を満たしているかどうかの確認を行い、 すべて基準値の1000万分の1回/炉・年を満たしていると発表した。
近くに民間機が就航する空港があり、その空港の離着陸がこの評価の対象となった中国電力の島根原発もこの基準を満たす、という数値が 報告され、原子力安全・保安院もその計算結果を認めて発表していた。ちなみに落下確率計算対象となったのは出雲空港、米子空港だった。

では、この計算方式を羽田空港に当てはめたらどんな数値が出てくるのだろうか? この「02.7.30評価基準」では、航空機が衝突したときに 原子炉に影響が出る建物の面積(いわゆる標的面積)は、0.01平方キロメートルとし、もし実態がそれ以上ならばその数値を標的面積 として用いることになっている。(原子力空母の標的面積は、別のページで述べるように0.018平方キロメートル)
原子力安全・保安院が承認した中国電力の計算方式と、それに含まれるパラメータのうち全国共通のもの(事故率、20年間の総離着陸数 )はそのまま使用した。羽田空港に固有なもの(墜落確率密度、羽田空港の年間離発着数)については、国土交通省が監督する資料から 数値をとった。

実際の計算式は別ページで述べる。 羽田空港から半径35キロメートル以内の原発に羽田を離発着する航空機が墜落する確率は2.035×(10のマイナス7乗)となった。 国の判断基準の倍となった。
この場合、「航空機落下が『想定される外部人為事象』であると判断された場合には、その発生を仮定し、必要に応じて設備の分離配置 設計や防護設計を講じる等により、安全機能を有する構築物、系統及び機器がその機能を達成する能力を維持することを確認する、という プロセスが必要になる」(「02.7.30評価基準」より)

航空機落下が『想定される外部人為事象』であると判断されるような空港は、羽田以外に聞いたことが無い。羽田から半径35キロメー トルの円内では、上記のプロセスを踏まない限り、日本の原子力防災政策から原発が作れない。
東京だけではない、横須賀基地の12号バースは羽田空港から32キロメートルで、原発建設危険ゾーンに含まれている。(続)

(RIMPEACE編集部)


'2008-5-15|HOME|