羽田空港と両立しない「横須賀原発」 −2

06年10月11日、衆議院議員阿部知子さんが出した 質問主意書の中には 米海軍横須賀基地の十二号バースに原子力空母が停泊していると仮定して、「実用発電用原子炉施設への航空機落下確率に対する評価基準」 で計算した場合の原子力空母への「航空機の落下確率」を明らかにされたい。また、その計算の数値的な根拠を示されたい。
という質問項目があった。
これに対する政府の答弁は 「実用発電用原子炉施設への航空機落下確率に対する評価基準」(以下「評価基準」という。)を用い、米原子力空母への航空機落下確率 を計算することは適当ではないと考える。
というものだった。

評価基準で落下確率を計算するのは適当でない、という答えの裏に、まともに計算したら基準値の10のマイナス7乗を超えてしまう、 という読みがあったとしか思えない。
そこで原発設置の監督官庁である経済産業省原子力安全・保安院が認めた数式とデータを使って「まともに」計算すると、横須賀に原子力 施設があったら基準値よりも大きい墜落確率が出てくることを示そう。


最大離着陸距離を与える KANOH ポイントの出ている羽田空港への着陸ルート図。航空路誌(AIP)より作成。

横須賀基地と羽田空港の位置関係を先ず考える。
滑走路の向きから60度以内の角度にあるか。距離は「最大離着陸距離」以内か?
先ず滑走路との角度だが、並行滑走路の方角から60度の角度の中に入っている。(区分航空図などで確かめられる)
最大離着陸距離は、「02.7.30評価基準」に例示されているAIP(航空路誌)の図から、羽田の場合は最遠のポイントであるKANOHポイント から羽田VOR(電波標識)までの距離35キロメートルがこの「最大離着陸距離」となる。横須賀基地12号バースは、羽田VORから 約32キロメートルの距離にある。
この場合、横須賀基地12号バースに航空機が落ちる確率の計算には、20年間の大型民間機の離着陸時に起こした大破以上の事故数をも とにした事故確率を使うことになる。
中国電力が島根原発について計算したときに使用した 離着陸時の大事故率は20年間に6回、年間0.3回となる。

次に、羽田空港の離発着数と全国の空港の離発着数の比を求める。2002年の各電力会社の「落下確率の評価」のデータにあわせて、 国内空港の(2000年までの)20年間の総離発着数は19,528,657、2000年の羽田の離発着数は 254,770 となる。
離着陸時の大事故の起きる確率は、その空港の離発着数に比例するとして、
年間 0.3×254,770/(19,528,657/20) 回となる。

最後に、羽田空港を中心とした「最大離着陸距離」を半径とする円の中に均等に落下確率が分布するとして、半径35キロの円の面積と、 原子力施設の「標的面積」の比をだす。
原子力空母の飛行甲板の広さは、ジョージワシントンの公式ページに載っている4.5エーカーから換算して0.018平方キロメートルとする。 面積の比は 0.018/(3.14*35*35) となる。

以上の数字を掛け合わせれば、横須賀基地12号バースに停泊中の原子力空母に羽田離発着の航空機が落下して衝突する確率が出る。(原子力 安全・保安院の内規「02.7.30評価基準」は、こうやって計算することを定めている)

0.3×254,770/(19,528,657/20)×0.018/(3.14*35*35) = 3.66×(10のマイナス7乗)

という結果になり、基準値の 1.0×(10のマイナス7乗)の3倍を超える値となる。東京原発への落下確率2.035×(10のマイナス7乗) より大きいのは、原子力空母の大きさが原発の標的面積の8割り増しになるからだ。

こんな値が出るから、国はこの評価基準を用いて計算することは適当でない、としたのだろう。
空母に載った原子炉が横須賀に来るのは、国の安全基準を超える話しなのだ。(続)

(RIMPEACE編集部)


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