原子力空母母港化は米軍のゴールではない

「原子力揚陸艦」横須賀母港もあり!?

米国の軍事専門家は、原子力空母の横須賀母港化は、他の原子力艦船の母港化にも寄与する、と考えている。

米下院軍事委員会の小委員会のヒアリングでその道の専門家は、原子力艦船の寄港と母港化について、次のように話している。

(原子力揚陸艦などの)寄港と前進配備について
強襲揚陸艦や大型水上戦闘艦を化石燃料推進から原子力推進に変えると、強い反核感情を持つ国への入港について、よりいっそう歓迎されないことが起き得る。
外国の港に毎年何回も寄港している原子力空母や原潜に関して、海軍はこういった反核感情の発露を最小限に押さえるために、努力している。
原子力艦船修理施設への一定の寄港回数が必要なことを考えると、強襲揚陸艦や大型水上戦闘艦を原子力推進にすれば、前進配備に適する港の数は減るかも知れない。しかし、作戦海域への往復時間が短縮される原子力艦船の前進配備(海外母港化)を、海軍は進めるべきだ。
海軍は主要な前進配備基地である横須賀に、2008年に原子力空母ジョージ・ワシントン(CVN73)を配備する計画だ。
この決定を考慮すれば、横須賀は原子力揚陸艦や原子力大型水上戦闘艦の母港としての可能性を持つ。

原文は以下の通り。


STATEMENT OF RONALD O'ROURKE SPECIALIST IN NATIONAL DEFENSE CONGRESSIONAL RESEARCH SERVICE
BEFORE THE HOUSE ARMED SERVICES COMMITTEE SUBCOMMITTEE ON PROJECTION FORCES HEARING ON
ALTERNATIVE SHIP PROPULSION TECHNOLOGIES APRIL 6,2006 より抜粋


2006年4月6日のヒアリングは、海軍艦船の石油使用量削減がテーマだった。燃費の効率化と並んで、風力やソーラー電池の活用などの案とともに、大型艦船の原子力艦船化もアイディアとして述べられた。
28ページのコメントの中で、原子力推進化は3ページ半ほど割かれている。この中で、強襲揚陸艦や巡洋艦の原子力推進についてコストの面からコメントが加えられ、その上でコスト以外のファクターの一つとして、上掲のコメントがなされている。

もちろんこれは米国の公式見解でもないし、強襲揚陸艦が仮に原子力推進化となるにしても、原子炉の設計から始めて戦力化するのはずっと先のことだろう。この文書で一番気になるのは「この決定を考慮すれば、横須賀は原子力揚陸艦や原子力大型水上戦闘艦の母港としての可能性を持つ」という部分だ。
原子力空母を受け入れればそれでおしまい、とはならないことが、端的に表現されているのではないか。

原子力空母の母港化を受け入れれば、それを推進してきた米軍は、「主要な前進配備基地である横須賀」を原子力艦がさらに使いやすい基地にしていこうとするのは、ある意味で当たり前の話だ。Gワシントン以外の原子力空母や原潜の寄港も増えるだろう。

原子力艦船の寄港時に必要な純水を供給する施設を、新たに12号バースの山側に作りつつあるのは、そんな状況に備えるため、という意味があると思う。12、13号バースとその近傍が原子力艦船エリアとして整備されていけば、横須賀の原子力艦船収容能力は大きくなる。

原子力空母の母港化は、それ自体が大変な問題であるとともに、横須賀への原子力艦船のさらなる配備や寄港増にゴーサインを出すことにもつながる。

(RIMPEACE編集部)

上掲文書全文のアドレス:http://www.house.gov/hasc/4-6-06ORourke.pdf


純水供給施設を造るための山削りは、12号バースのレベル近くまで掘り進められている(06.12.22 撮影)


'2006-12-26|HOME|