シリーズ・原子力艦船の上空飛行制限(11)

政府の答弁書をこき下ろす、その1

質問主意書 三 米軍原子力艦船(原子力潜水艦、原子力空母)は、運輸省航空局長通達「原子力関係施設上空の飛行規制について」(昭和四十四年七月五日付け空航第二百六十三号)、国土交通省航空局長通達「原子力施設上空の飛行規制について」(国空航第八百八十四号 平成十三年十月十六日)における「原子力関係施設」、「原子力施設」に該当すると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。


答弁書

御指摘の運輸省航空局長通達「原子力関係施設上空の飛行規制について」(昭和四十四年七月五日付け空航第二百六十三号)にいう「原子力関係施設」又は国土交通省航空局長通達「原子力施設上空の飛行規制について」(平成十三年十月十六日付け国空航第八百八十四号)にいう「原子力施設」若しくは「原子力関係施設」については、同通達及び航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第九十九条に基づいて国が発行する航空情報の一つである航空路誌において施設名が列挙されており、米原子力空母及び合衆国軍隊の原子力推進型の潜水艦(以下「米原子力艦船」という。)は該当しない。



一番ばかばかしい答弁は、この3項目目だ。
「航空路誌において列挙されている施設名に入ってなければ原子力施設に該当しない」のだそうな。
ということは、新しい原発が出来ても、それは(当然未だ)航空路誌に列挙されていないから原子力施設ではない、ということになる。新しい原発上空は飛行制限が無い、となると、これまでの原発建設差しとめ訴訟での、航空機落下に対する安全性で国側が掲げた「安全性の根拠」が崩れることになる。

これがいささか揚げ足取りの議論であることは、当方だって百も承知だ。この航空路誌が適宜書きかえられていることは言うまでも無い。
以前、原子力船「むつ」が原子炉を動力として動いていたころには、「むつ」が接岸して修理を受ける青森県の2つの港の埠頭周辺にある日本原研のむつ事業所が、航空路誌で原子力施設として明記されていた。今、この記述は削除されている。
逆に、この時は記述に含まれていなかった六ヶ所村の再処理施設が加わっている。
そして肝心なのは、航空路誌に原子力施設という記述がある無しということではなくて、その施設を原子力施設と認定するかどうかという点だ。
もう一度だけ揚げ足を取るならば、「航空路誌において施設名が列挙されて」いないから原子力施設に「該当しない」のではなく、原子力施設と国が認定しないから列挙されない、というだけなのだ。

国の立場に立って考えたとしても、ここで答弁すべきなのは、なぜ原子力艦船を原子力施設に含めないのか、という理由だ。
原子力艦船の母港化とは、原子炉を積んだ軍艦(空母や潜水艦)が半年は同じ場所(母港)に停泊するということを意味する。原子炉を積んでいる船が停泊中は、航空機事故を考えるときに、なぜ原子力艦船が原子力施設とはならないのかを国は答弁しなければならない。

横須賀市議会で市長は「空母は艦載機の離発着が行われているところであるし、上空も艦載機が飛んでいるから、上空飛行制限の必要はない、と外務省が言っている」と答えている。
国が空母は頑丈だから、どんな大型の飛行機が落ちてきても原子炉を破壊するような事故は発生しない、と本気で考えているならば、そのように答えればいい。そのときは、理論上の根拠と、破壊実験の結果を公表することが必要なことは言うまでも無い。

もう一度繰り返す。
原発差しとめ訴訟の中で、航空機は原発上空を飛行しないことになっていると、航空機事故に対する安全性の中で国は繰り返し述べている。なぜ国は、同じ飛行制限を停泊中の原子力艦船について適用する必要がない、というのだろうか。
国はその疑問に全く答えていない。

(RIMPEACE編集部)


横須賀基地に停泊中の空母の真上を通り、伊丹空港に向かうANA23便(ボーイング777−200)(06.10.8 撮影)


'2006-11-9|HOME|