シリーズ・原子力艦船の上空飛行制限(6)

国への申請なければ、原子炉上空の飛行制限無し!?

「非核市民宣言運動ヨコスカ」が横須賀市長に公開質問状を提出した。原潜や原子力空母などの原子力艦船が停泊中に、原発や研究炉の上空飛行規制と同様の規制が必要でないか、市長に問うたものだ。

この質問に関連して、数紙が国土交通省や外務省などへ問い合わせた。翌日の各紙に載った記事を見て、びっくりすることが2点あった。
原子炉上空の飛行規制は、国側が判断して行うのではなく、原子炉施設からの要請に基づき国が検討する、というのが第1点だ。
今も横須賀基地上空には飛行規制がかけられている、というのが2点目だ。
2点目については別稿にまわして、まず原子炉施設の「自己申告」制について考える。

8月3日付けの神奈川新聞の記事「空母バース上空の民間機飛行に規制なし判明/横須賀」の引用からはじめよう。
国土交通省航空局の担当者は『規制のない現状を「これまでは施設側から要望があったものを検討し、規制していた。米海軍からは何の依頼もなかったため」と説明。一方で米海軍でなくても、横須賀市や県などから正式な要請があれば「飛行の規制が必要かどうか、検討の余地はある」と話している。』
依頼や申請が無ければ規制はしないと言っているに等しい。

「神奈川県地域防災計画」にもあるように、地方自治体の原子力防災の中で、航空機の落下に対する備えの第一が「原子力施設上空は飛行させない」であり、それを担保するのが国土交通省航空局長名の通達だ。
その基礎となる「原子力施設の指定」が、単なる自己申告に基づくとなれば、防災計画の実効性が足元から覆ってしまう。
原子炉を内部に持つことが自明の原潜が何度も寄港しながら、それに対する上空飛行規制をかけなかった理由が「米軍からの要請が無かった」からなのだ。住民の被爆の危険性は米軍の意向一つで無視されるのが、これまでの日本政府のやりかたの帰結だ。

航空局が発行するAIP(航空路誌)に書かれている「航空機による原子力施設に対する災害を防止するため」という文言は、正確に言えば「申告のあった原子力施設に対する航空機による災害を防止するため」であり、「申告のない米軍原子力艦船については、航空機による災害はこれでは防止できない」ということなのだ。

原子力施設に対する災害を防止するために、その有効性が明らかな上空飛行規制を、何故米軍の要請を待たなければ日本政府が行えないのか。
それこそが謎だ。

(RIMPEACE編集部)


'2006-8-8|HOME|