シリーズ・原子力艦船の上空飛行制限(7)

今の横須賀基地上空飛行制限の実態

原子力艦船が停泊中の横須賀基地上空飛行制限について「非核市民宣言運動ヨコスカ」が市長に公開質問状を出した。これを報じた朝日新聞神奈川版の記事の中に、基地上空飛行制限についての興味深いコメントが載っていた。

『羽田空港から、関西空港と大阪空港に向かう民間航空会社のジェット機は(中略)横須賀基地上空を通る。横須賀基地上空は、テロ防止のために、基地から半径約3.7キロの範囲で、高度約760メートル以下を飛行自粛区域に指定されているが、ジェット機は高度約3千メートルを飛行するため、規制にはかからない。』(8月3日付、「飛行規制なぜできぬ」横須賀の市民団体 市長あてに質問状)

この飛行制限は小型民間航空機についてのもので、社団法人日本航空機操縦士協会あてに国土交通省航空局技術部運航課長からいくつもの「飛行自粛要請」の文書が出されている。
国空航第830号(9.11直後に在日米軍司令部が飛行自粛を要請している空域として、横須賀、佐世保、ホワイトビーチの周辺をあげている。2001.9.22付)、国空航第861号(同、キャンプ・コートニー、キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ、泡瀬通信施設及び天願桟橋の周辺の上空をあげている。2001.10.3付)がそれだ。朝日記事によれば、現時点で少なくとも横須賀基地についてはまだ有効な通達だ。

小型民間航空機については、(マスコミのヘリはともかくとして)この通達を守っているように見えるが、米軍、自衛隊のヘリは全くノーマークだ。テロに関わるわけがない、ということなのだろうが、墜落事故の危険性について考慮されていないから、米軍や自衛隊のヘリが原潜寄港中の横須賀基地の真上をバンバン飛びまわることになる。

6月8日に空母キティーホークは横須賀を出港した。空母の出港時に空中から護衛する米軍艦載ヘリSH60が、この日も横須賀基地上空を空母が出港する以前から飛びまわっていた。そして12号バースを離れるキティーホークの空撮を行っているのだが、その写真には入港中の原潜ツーソンも写っている。
原子力艦船の真上をおかまいなしに軍用ヘリが飛びまわっているのが現状だ。現在の横須賀基地上空飛行制限の実態はこんなものだ。

米軍・自衛隊のヘリだけが原子力艦船上空を飛んでいるのではない。民間航空の大型ジェット機が頻繁に上空を通過する。軍用航空路のW14が横須賀基地上空を通っている。厚木基地の艦載機も横須賀基地のすぐ近くを飛行している。
これらの航空機が原子力艦船の上空を飛行することは、原子力災害の危険性を拡大しているのに、現在の横須賀基地上空飛行自粛の通達では、何も対応できていないことを、政府はきちんと認識すべきだ。認識していても何か差し障りがあって公には認めない、ということなら、原子力防災についてこれまで公言してきたことが、嘘っぱちだったことになる。

(RIMPEACE編集部)


基地上空を飛びまわる、米軍艦載ヘリSH60(2006.6.8 撮影)

上記のヘリが8月6日の空母出航時に空撮した写真が NAVY NEWS FILE に掲載されている。写っている原潜はツーソン


'2006-8-10|HOME|