CV−22の訓練内容をオスプレイ横田配備レビューから探るー1

夜間の低空飛行、全国に拡大

横田基地にCV−22オスプレイが配備されようとしている。この配備に関わる環境レビューが2月に米空軍特殊作戦軍司令部により行なわれた。なぜか発表は10月だったが。

「米空軍特殊作戦コマンドは、本環境レビューを、提案されている横田飛行場へのCV−22配備に伴う重要な環境問題を特定するために作成した。」という位置づけで作られたはずの文書だ。 「CV−22配備に伴う重要な環境問題を特定する」ためには、CV−22がどのような訓練を行なうのか、が分析の第一歩にならなければならない。
ところが、この環境レビューに「訓練内容」が全くと言っていいくらい記述されていないのだ。
実際に訓練を行なう部隊のメンバーへのヒアリングは行われたのだろうが、その内容は反映されていない。

環境レビューは、横田にCV−22を配備することを前提(第一案)とするが、対抗馬(当て馬)として若干移転規模の小さな案をひねり出し、さらに「何もしない」案との3つを比較する形で作られている。
肝心の実施案である第1案に、夜間飛行も低空飛行も書かれていない。5月12日に防衛大臣が横田へのCV−22の配備を発表した時に「各種事態の米特殊作戦部隊の迅速な長距離輸送という任務を達成するということで、実際、通常どうするかということは、これを踏まえた通常の飛行訓練、低空飛行訓練、また、夜間飛行訓練、こういうことを実施をするということになっております」と述べているにもかかわらず、だ。

しかし悪事は露呈する。「何もしない案」が米軍・米国にとってマイナスになる、というレビューの記述の中で、CV−22の訓練が主に夜間に低空で行われることが示唆されていた。
以下、レビューの 2 提案されている措置と代替案、2.3 当該措置を採らない場合 より。

提案されている措置は実行されず、米空軍特殊作戦コマンド(AFSOC)は横田飛行場が所在する地域において、CV−22をもって強化された能力を得ることはないということを意味する。 この場合、CV−22 が配備される場合ほど効果的には、潜入・撤収任務を実施することはできなくる。また、夜間に任務に着手することはできず、作戦地域に到達するには数日間を要するだろう 。過去の任務に照らせば、CV−22が導入される場合よりも多くのその他支援航空機をAFSOCは必要とすることになる。それらの航空機任務も、地形追随能力を有さず、 悪天候下での飛行もできないため、ある程度制約されだろう。また、空中給油なしに自己展開することはできないため、安全な任務遂行に影響が出るだろう 。 任務に要する時間が長くなるため、特殊作戦部隊及び米国市民の安全がより重大問題となり得る。(引用終わり。太字は当編集部)

横田から飛んで夜間にオスプレイなら往復で来て、通常のへりなら有視界飛行で数日間要する場所はどこなのだろうか?
本番の作戦遂行の時には、横田を出発基地とはせずに、どこかの基地や洋上の艦船から飛ぶことになるかもしれないが、訓練では横田を夜間に離陸して夜のうちに到達する基地、もしくは演習場まで飛行することになる。近場では、ホテル空域や北富士・東富士演習場だが、環境レビューに挙げられていた雨が森射爆場(三沢)や沖縄までの飛行も行われるとみなければならない。

特殊作戦部隊の飛行は、特殊部隊の隠密裏の潜入・撤収が主要な目的だ。そのためのルートは月の位置や明るさも考えて訓練のたびに設定される。たとえば横田から飛んで三沢の射爆場で潜入・撤収訓練を行なうとき、夜間に北関東や東北地方を低空で地形追随飛行を行うことになる。毎回、ルートは変わる。

だからCV−22オスプレイの訓練は、環境レビューに載っている米軍や自衛隊の演習場や演習空域だけではなく、北関東から東北にかけて広範囲に拡がる。米海軍や海兵隊が使っている低空飛行ルート(ピンクルート、グリーンルート)よりもっと広範囲でCV−22の低空飛行が夜間に行われることになる。東北全域がオスプレイの訓練場になる、ということだ。

沖縄の演習場で潜入・撤収訓練を行なうときは、同様に西日本の陸上や周辺海域がすべてCV−22の訓練場になる可能性がある。

(RIMPEACE編集部) 


横田から三沢に低空飛行で飛ぶコースは東北全体に広がりうる


2015-12-29|HOME|