CV−22の訓練内容をオスプレイ横田配備レビューから探るー3

ホテル(H)訓練空域のホントの範囲は?(その2)


環境レビューの空域図に地名を加え、重なり合う"Area No.3"空域を加えた「平面図」

上から見ると重なっているように見える空域も、高度をみると重なっていない。同じルートを飛ぶ航空機でも飛行高度が異なれば衝突することはない。空域の重なり具合を模型的に示したのが下の赤と黒の図だ。たとえばオスプレイが渋川上空のホテル空域を飛び、陸自のCH47輸送ヘリが渋川上空のNo.3空域を飛んでいても、両者がそれぞれの空域にとどまる限り空中衝突の恐れはない。

問題は、米軍がCV−22オスプレイの訓練区域として挙げている「ホテル地区」(防衛省訳)が、防衛省の説明通りに、航空路誌(AIP)に定められた "Area H"と完全に(高度まで含めて)一致するのかどうかだ。

CV−22オスプレイ訓練区域として挙げられているのは、防衛省の訳では「東富士演習場、ホテル地区、三沢対地射爆撃場、沖縄の訓練場、アンダーセン空軍基地、韓国烏山空軍基地周辺のピルサン・レンジ」だ。この部分の原文(米空軍特殊作戦軍作成)は "East Fuji Maneuver Area, Hotel, Draughon Range, existing Okinawa training ranges, Andersen Air Base, and Pil Sung Range near Osan Air Base, Republic of Korea"で、防衛省が「ホテル地区」と訳したところは、ただ "Hotel"としか言っていない。他の区域が Area や Range と書かれているのに、ここだけなぜ "Hotel Area" と記述されなかったのだろうか?

このレビューの原文では、発表されている限り Hotel という単語は2回しか出てこない。最初の登場はノイズの増にコメントした部分で、現在使用している訓練区域などとして "CATC Camp Fuji, the“Hotel" Training Area, Draughon Range, existing Okinawa training ranges" を例示している。2回目が上記のCV訓練区域とした中に出てくる。三沢や沖縄の訓練区域が同じ表現なのに、防衛省が言うところの「ホテル地区」だけが現在使用しているthe“Hotel" Training Area と明らかに表現が異なっている。

このような「あいまいな」記述がなされるときは、似て非なるものを指していることがある。原文の"Hotel"は、ホテル空域の下にある"Area No.3"も含めて、CV−22オスプレイの訓練区域とすることを示しているのではないか?

訓練区域の定義のあいまいさだけではない。特殊部隊輸送任務の訓練を考えた時、低空部分を訓練空域から除外するのはいかにも不自然なのだ。
AIPで決められている "Area H" の地表への投影面積を考える。そのうち"Area No.3"と影が重なる部分は半分近い面積になる。そんな広大な空域を、"Area No.3"の上限高度の1万フィートを超える高さでレーダーにとらえられながら特殊作戦機がノホホンと飛ぶのだろうか。レビューの "no action" の選択肢を否定する際に図らずも語られたCV−22の地形追随飛行の訓練は、高度1万フィートではどんなに目がよくても無理だねエ。

1万フィート以上の高度で訓練している軍用機の爆音に悩まされている前橋や渋川の住民にとって、さらにずっと低い高度をオスプレイが飛ぶとしたら、その苦痛は何倍にもなるだろう。
防衛省は、"Area No.3"の直下に暮らす住民に、「オスプレイの訓練空域に、高度1万フィート(約3千メートル)以下は含まれない」と明言しないと、住民の不安は募るばかりだが。

(RIMPEACE編集部) 


2つの空域の重なり具合を模型的に示してみた。黒い円筒の空域に高さが低い赤の空域が食い込んでいる。黒がホテル空域、赤が"Area No.3"の空域のつもり


2016-1-2|HOME|