ハワイ・オスプレイの事故が示すもの
スーッと降りてきて着地したとたんに煙が噴き出した。ハワイ・ベローズ基地内でおきた米海兵隊のMV−22オスプレイの墜落事故で、落ちる直前から真っ黒い煙があがるまでの動画がネットで
公開されている。
墜落事故の瞬間が、事故の起こる前から動画に収められていた、というのが最初の驚きだ。何度も動画を見ていて、気付いた。着地(地面への激突)まで、オスプレイの姿勢は前後左右ともほぼ
水平に維持されている。姿勢制御は出来ている。これでゆっくり降下すれば、ごく普通の着陸だ。普通でなかったのは降下スピードだ。
オートローテーションが効くへりだったら、頭から突っ込めば別だが、水平に姿勢を制御できていれば、降下スピードを落とすことができる。着地してもローターが障害物にぶつかって横転しな
ければ、乗員に死者がでるようなことはまずない。
開発段階からこのオートローテーション機能はオスプレイに付与できなかった。最後に開発要件からオートローテーションをはずして、軍への配備をやっと可能にした。輸送人員を増やし軍の
希望を優先させることで、機体重量が大きくなり、物理的にオートローテーションが出来なくなった。
今回の事故で、ローターにパワーがかかっていたかどうかはまだわからないが、もしエンジンが生きていてローターを回していたとすれば、それは航空機と言うにはパワー不足以外のなにものでも
ない。また、下降気流の中に入ってしまったら、姿勢制御がむつかしくなるので、水平のまま降りてきた今回の画像を見る限り、下向きの気流の影響も可能性は小さいと言える。
何らかの原因で2つのエンジンが出力をなくし、オートローテーションの形をとって幾分か下降スピードは落としたが、安全に降りられないという当初からの懸念通りに地面に激突した、という
のが一番可能性が高いのではないか。
実際のところは、今後の事故調査で明らかにされるだろうが、どんな事故原因が出てこようと、姿勢が制御されたまま地面に激突したオスプレイの姿は、記憶から消えることはないだろう。
「オスプレイ着陸失敗」という新聞の見出しになんとなく違和感を感じるのは、着陸を開始した時点ですでに「着陸成功」が物理的に不可能だったからだ。そこに、オスプレイの恐ろしさがある。
CV−22オスプレイの横田配備を発表した後、CV−22の安全性を問われた中谷防衛大臣は、2012年のMV−22の普天間配備の前に国外で起きたオスプレイの事故調査を独自に分析し
て安全性を確認した、日米合同委員会で十分な事故再発防止策が取られていることを確認した、と答えた。
さらに「CV−22とMV−22は、これは任務が異なるということで、搭載装備に一部の異なる部分がある別機種でありますが、両者とも機体の構造と基本性能、エンジン、飛行システムの
基礎が同一でありますので、安全性は同等であるということで、現在もMV−22は運航を続けておりますが、事故等は起こしておりませんので、このCV−22につきましても、確認された機体
の安全性につきましては、同様であると考えております」と付け加えた。
MV−22は(普天間配備以降)事故は起こしていないから安全だ。CV−22はMV−22と構造・性能が同じだから安全だ、という論法だ。
実は昨年10月にペルシャ湾で、揚陸艦から飛んだMV−22がクラスAの事故を起こしている。さらに今回ハワイで事故を起こした。
大臣の論法で行けば、大事故が起きて事故防止策が不十分ということが判明し、MV−22の安全性が確認できない。したがって構造・性能が同じCV−22の安全性も確認できない、となるので
はないか?
外務・防衛が横田基地周辺自治体に説明に回っているときの資料「CV−22オスプレイについて」が、どんなにいい加減なものか、3回にわたって明らかにしてきた。さらに、大臣自らが示した
「安全性の確認」の前提が、今回のハワイの事故で、だれの目にもはっきりする形で覆された。それでも、周辺自治体に顔を出すほどの度胸と厚顔さを、外務・防衛の官僚たちは持ち合わせてい
るのだろうか?
(RIMPEACE編集部)
[ハワイ・オスプレイ墜落の動画のあるサイト]
U.S. Marines: 1 killed, others hurt in Hawaii military aircraft
crash(CBS/AP/May 17, 2015, 10:18 PM)
2015-5-19|HOME|