米軍再編・空域調整が長引く理由


航空路誌補足版08.2.14「臨時訓練空域の設定について」の図を使用して作成 

国土交通省航空局が発行しているAIP(航空路誌)は、航空機の運航に必要な情報が載せられている。その補足版が時々発行されるが、 臨時訓練空域の設定情報もそのコンテンツのひとつだ。
この臨時訓練空域がどの位の期間設定されるものか、中身を読んで驚いた。自衛隊機の訓練空域として丸1年間、空域が設定されている。 これでは臨時とはいえない。実際にはずっと使い続けるのに、1年更新だから臨時だ、という言い訳がとおるのだろうか。

この臨時空域の中に注目すべきものがあった。四国南方のいわゆるリマ空域を挟んで、四国側と太平洋側に大きな臨時空域が設定されて いる。上図のX−20,X−22,X−23だ。なぜだかよく分からないが、米軍専用空域のはずのR109にもX−23の名前で 臨時空域が設定されている。

厚木の艦載機が岩国に移るのが、米軍再編の大きな目玉のひとつだ。ところがこの移駐に伴う空域調整が難航している。 常設の訓練空域だけ見て、リマ空域の南側に新たな米軍用の空域でも設定するのか、とひそかに考えていたが、その場所はすでに 自衛隊が実質的に常設の空域として使っていた。

上図で空白になっているところは、実は空白ではない。米国防総省が作成した作戦用のチャートを見ると、すきまにいくつものレンジの ナンバーがふられていて、日本周辺の空域には実際には空きがないことがわかる。余裕のないところで空域の入れ替えをするのでも 大変なのに、今回の米軍再編(艦載機の岩国移駐)にともなう空域調整には、もっとすごい要素が入ってくる。米軍がこれまで厚木から 飛んで使っていた大島沖の空域(R116)を返そうとしない。
横須賀の艦船との訓練のためにはR116が必要だ、などと言ってこの空域での訓練を続けることを狙っていると思える。

これじゃ、調整が進むわけがない、と高みの見物をしていればすむ問題ではない。大島沖の空域R116を使うと言うことは、これまで どおり厚木を艦載機の発進基地とするということだ。なんのことはない、厚木と岩国に艦載機の騒音が降り注ぐことになる。再編の目玉 が、実はまったくのウソだった、ということになりかねない。

まったく空域に余裕が無いところで、米軍が艦載機の訓練空域を厚木周辺と岩国周辺に確保しようとすれば、自衛隊の空域や民間機の訓練 空域が割りをくうことになり、調整は難航する。
調整が長引けば長引くほど、艦載機が厚木から出て行くのはまやかしだった、という認識が厚木基地周辺自治体や住民の間に広がっていく。

(RIMPEACE編集部)

[参考ページ]
返還して当然、これまでの艦載機の訓練空域は (2005.12.21)(岡本 聖哉)


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