オレンジルートで爆撃訓練


99年1月20日、空中給油訓練の最中に編隊を組んでいた僚機と空中衝突した岩国基地の海兵隊機FA18は、高知沖で墜落した。この事故報告書には、もし事故が起きていなかったら、この2機編隊がオレンジルートを低空飛行しながら、ルート上の3か所で対地爆撃訓練を行う予定だったことが書かれていた。
これまで米軍の海兵隊機や艦載機が低空飛行ルートを飛ぶことはよく知られていたが、その低空飛行の途中で対地攻撃訓練を行っていることが明らかになったのは初めてだ。 こんなことを野放しにしておけば、ルートの下の地域がすべて爆撃訓練の目標となりうる。米軍の爆撃訓練空域が、限定された射爆場だけでなく全国のいたるところに拡がっていってしまう。
また、発電所やダム、道路や鉄道などの施設が目標となる。わずかなタイミングのずれやパイロットのミスが、これらの施設への墜落事故や空中衝突を引き起こす。ルートの下の地域の住民は、低空飛行の危険性にさらされてきたが、爆撃訓練が加わることで、その危険性が倍加する。
これまで日本政府は、低空飛行は基地間移動という言い訳をしてきたが、爆撃訓練を行っていることがとが判明したことで、この言い訳が全くのウソだったことが明らかになった。
報告書に出ていた、低空飛行ルート上での爆撃訓練についての記述は以下の通り。
1.事故機と編隊を組んでいたリード機のパイロット、カリー少佐の話
私(ティモシー・M・カリー少佐)は、岩国基地から飛ぶ3機編隊のリーダーで、コールサインはLANCER11だった。任務の内容は、レンジ565(リマ空域−訳注)での空中給油訓練と、その後の低空飛行訓練だった。
(嘉手納の)KC135との空中給油訓練についての話のあと、我々は低空飛行訓練について打合せを行った。その訓練には、低空飛行訓練ルートに沿った3つの目標に模擬攻撃をかけることが含まれていた。
〔実際には、1機が不調のため2機で離陸し、空中給油を受ける直前に空中衝突した−訳注〕
2.事故機のパイロット、ケルビン・ペッツォルド大尉の話
我々に何か疑問点がないかどうか聞いたあと、カリー少佐は低空飛行ルートに話を移した。空中給油の後、我々はお互いの機体の目視チェックを行う。その後編隊を組んでルートの入口のAポイントに向かう。Aポイントに近づいたところで、リーダーをゴルドン大尉と交代する。我々はAポイントとBポイントの間の最低高度が1000フィートに制限されていることを確認した。〔ゴルドン大尉の機体は、実際には、不調のため離陸を諦めた−訳注〕
我々は3つの攻撃目標について打合せを行った。攻撃目標は、Bポイントの曲がりくねった道路、Cポイントの発電所、Fポイントのもう一つの発電所だった。少佐は次に、攻撃方法について語った。我々は攻撃編隊を解いて30度上昇・30度降下の攻撃パターンをとる。最高高度は地上から4000フィート以下、降下の高度は2200フィートだった。目標から4マイルの地点で、ゴルドン大尉は進路を30度ずらして30度上昇する攻撃パターンに入る。その20秒後に私(ペッツォルド大尉)が進路を90度変えて上昇する。ゴルドン大尉は、目標からの離脱を遅らせて、我々が再度編隊を組むのを容易にする。低空飛行ルートを出たら、ゴルドン大尉をリーダーにしたまま岩国基地に向かう。

事故機の属する飛行隊の、当日のスケジュール。オレンジルートの名前が見られる。

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