前基地従業員からの手紙

沖縄、基地従業員からの手紙(続々)



前基地従業員の方からの手紙(2通)*本土の米軍基地に最近まで勤務していた方から、メールを頂きました。 **ご本人の了解を得て、掲載させて頂きます。(編集部) *




(メール1)
沖縄の基地従業員の方の発言、大変感銘を受けました。私もつい先日まで米軍基地に勤めており、在職中の約五年間の間にかなり理不尽なことを見ききし、また経験したからです。しかし私のいた基地に限って言えばそれは必ずしもアメリカ軍だけの責任ではなく、それに付随している我々日本人従業員にも問題があるケースも多かったことも事実だと思います。

  たとえば、人事権についてですが、確かに決定権は米軍にあり、我々にはその決定に従う義務がありました。しかし、多くのコネと呼ばれる縁故採用があったのも事実です。コンピューターエンジニアとして採用されたにも関わらず何一つプログラムできないプログラマーや、総務事務で採用されたのに、事務内容や書類を全く理解していない総務担当者。ただ英語が堪能なだけでそれ以外になにもできない秘書やタイピスト。彼らは新卒や中途採用でその仕事に就いたのではなく、ほかの部隊や部署からコネで転入してきた人たちだったのです。
 
 基地の中では親子で働く従業員や、親戚、兄弟、同窓生、先輩後輩、そう言った何らかのつながりがあって基地に職を得た従業員がたくさん存在しました。彼らはそのネットワークを利用して自分達に有利に人事を進めていき、職場内に影響力をもたらします。米軍の管理者は短い期間で交代するため、すべての状況を把握しておらず、古株の従業員の言葉を信じて人事を行います。すると上のような結果になってしまうのです。
 
 中には能力も才能も申し分なく、仕事もできる従業員もたくさん存在します。しかし、日本人によって行われる不平等さや理不尽な行為を目の当たりにして、やる気を失ってしまった従業員もまた数多く存在します。私自身もその組織の中に身をおいた存在なので、彼らの行為を声高に批判できる立場にはないと思っていますが、これらのことがきわめて特殊なことではなく、日常的なことになってしまっているところに、ベースという職場の特殊性が現れているのではないでしょうか。もし米軍の責任云々を言うのであるならば、この特殊性も考慮に入れないと私には一方的な米軍批判だと私は思います。




(メール2)
 前回の手紙では私が基地にいて感じたことのほんの一部を書いたにすぎません。そのほかでも、米軍の管理官と日本人の確執によっておきた米軍からの一方的な首切り措置(その後、この一件は新聞沙汰にまで発展したため撤回されたみたいですが)日本人と米軍管理官が結託して起こした一方的な人事措置(日本人監督者と米軍監督者が結託して、部下の日本人に懲戒免職をちらつかせながら辞職を迫り、やめさせてしまった例)米軍監督者が無関心なのをいいことに、傷病休暇を年間30日以上も使って休み、それを三年以上も続けている者。私は基地にいた約5年間で民間企業にいたときには考えられないような数多くの人や事件に遭遇しました。それほど常識という面で基地内と一般企業の格差ができてしまっているのです。
 
 アメリカ人日本人を問わず基地内には多くの善良で有能な職員が数多く存在します。しかし一部の心ない人々によってその多くの人々がやる気を失い、失望感を抱えながら仕事を続けているのもまた事実です。

 前回の手紙でも言ったとおり、はじめに米軍ありきと言った論調ではなく、もっと基地内の就労の特殊性に目を向けた意見があってもいいと思います。そのような意見を議論した上で、初めて米軍の責任や、防衛施設庁の責任を問えるのではないでしょうか


ご意見、ご感想は office@rimpeace.or.jpまで


沖縄、基地従業員からの手紙'97-3-21


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