フォースプロバイダー搬入と第一軍団司令部移駐構想



陸軍舟艇はノースドックに、フォースプロバイダーは相模補給廠へ、有事に備えた備蓄が進んでいる(4月7、8日撮影)

ベースキャンプセット(フォースプロバイダー)が、相模補給廠に続々と運びこまれている。2002年9月から10月にかけて補給廠から運び出され、横浜・本牧埠頭から船積みされてアフガンに送られた6セットが戻ってきたのではないことは、モジュラー番号から明らかだ。
ベースキャンプセットを、今の時期に補給廠へ再搬入したことと、第一軍団司令部のキャンプ座間への移転構想との関係を考えてみたい。

このベースキャンプセットは、戦域に動員された兵士の生活環境を大幅に改善するために、米陸軍が開発した、「コンテナ詰めの基地」だ。大型テントには冷房も入り、「快適な野外生活」が営めるような資材で構成されている。当然、戦地にいる部隊から引っ張りダコだ。当初の予定では36セット作り、訓練用の1セットを除いた35セット(2万人弱の兵士が入居できる)が、戦地で実際に使われることになっていた。アフガンとイラクでアメリカが仕掛けた戦争のために、35セット全部がイラク、クウェート、アフガンに送られている。
今回、39番目のモジュラー番号がついたセットが相模補給廠に送られてきた。コンテナの個数から見て、補給廠には2個以上のセットが今回運び込まれると見て間違いない。36個という予定を超えて作られた真新しいセットだ。アメリカがイラクやアフガンから兵士を引けない状況で、兵士に大人気のこのベースキャンプセットが、なぜ中東戦域に送られずに相模補給廠に送られてきたのだろうか。

相模補給廠の重要な任務として、戦時備蓄品の保管・管理がある。広大な敷地の中には、石油パイプラインセット、移動病院セット、橋梁資材など大型の資材が保管されている。これは、在韓米軍基地キャンプ・キャロルと分担して保管している、陸軍の戦時備蓄(AWR−4)の一部となっている。AWRは世界に5セットあるが、その中のAWR−4は朝鮮半島有事に備えての備蓄だ。今回、このAWR−4にベースキャンプセットが再び加わった。2002年にアフガンに送リ出したものが補充された、という形になるが、上述したように、中東に兵士を貼りつけていて引くに引けない状況の中で、あえて朝鮮半島有事に備える備蓄の補充を行ったのだ。

在韓米軍が削減される中で、朝鮮半島有事に備える陸軍の戦時備蓄は、在日米軍基地で補充・強化されている。それは、在韓米軍の削減計画と時を同じくして出されてきた「キャンプ座間への第一軍団司令部移駐」構想と方向性が一致している。トランスフォーメーションと呼ばれる米軍の再配置は、実は海外米軍の削減計画に他ならない。在欧米軍しかり、在韓米軍しかりだ。しかし、現実に朝鮮半島に火種を抱えている以上、単純な削減では韓国政府が納得しない。そのために、この戦域を責任範囲とする第一軍団の司令部だけを持ってくることで、在韓米軍撤退に代わる増援戦略の担保とした、というのが司令部移駐の本音なのではないか。

米軍は有事の増員戦略を示して、在韓米軍の撤退の説得材料にした。有事の増員態勢を支えるのが事前備蓄だ。中東で戦争を行っている中で、虎の子のフォースプロバイダーのセットを中東に送らずに相模補給廠での戦時備蓄に回したことに、増員態勢をより具体的なものにしようという、アメリカの狙いが現れているのではないか。

米政府はヨーロッパや極東からの兵士の引き揚げによって軍事費削減を目指している。だが、基地の倉庫や宿舎建設は、思いやり予算で日本政府が過重に負担している。それが、日本だけは米軍基地削減の例外としてもかまわない、という米政府の判断を導いている。
世界的な規模で基地の縮小が進み、海外から米国へ米軍を引き揚げるという流れがある中で、キャンプ座間だけが基地機能が純増する、という特異な形になっている。「思いやり予算」という財政的な面、そして増員態勢を韓国に保障する「人質」としての面、この2面があいまって、キャンプ座間への第一軍団司令部移駐がゴリ押しされている。

(RIMPEACE編集部)

[関連ページ]
在韓米陸軍の削減と、第1軍団司令部座間移駐との関係


2005-4-13|HOME