第1軍団司令部座間移駐の目的を推察する

@ 在韓米陸軍の削減と、第1軍団司令部座間移駐との関係


 2004年10月初め、米韓両政府は2008年までに12,500人の米軍兵士を韓国から引き揚げることで合意した。この在韓米軍の縮小を織り込んだ国防白書が、協議の一方の当事者である韓国政府から2005年2月4日に発表された。
『韓国国防省が4日発表した「2004年国防白書」で、(中略)朝鮮半島有事の際には米国が在韓米軍以外からの65万人の兵力投入で、69万人を集結する方針であることを明記した。「増援戦略」とされた同方針では、米軍の海兵隊の70%以上、空軍の50%以上、海軍40%以上を投入。在日米軍も派遣対象となる可能性が高い。』(共同通信 05年2月4日 配信)
この「増援」をキーワードにすると、第1軍団司令部をキャンプ座間に移駐させるという米政府の狙いが見えてくる。

米軍の中で陸軍は、他の三軍(海・空・海兵)に比べて戦域に固定配置されることが多かった。ドイツ駐留の陸軍師団と韓国駐留の陸軍師団を、その戦域に貼りつけずに運用の自由度を増す、というのが陸軍のみならず米軍全体のトランスフォーメーションの中での大きな柱だ。
 『白書ではまた、初めて在韓米軍の戦略的柔軟性概念が登場した。 白書は「米国は従来の『固定配置基地』概念を『流動配置基地』概念に転換し、海外米軍基地を再調整している」とし、「在韓米軍もこうした概念の下、再調整が推進されている」と伝えた。 これは、米国が長期的には在韓米軍を韓半島防御を担当する固定軍でなく、他の地域にも役割を拡大する流動軍として活用しうることを示唆したものだ。』 (05.2.4 中央日報
朝鮮半島に火種が残っている時点での在韓米軍の削減(流動配置)を補完するのが「有事の増援」というわけだ。ただ、65万という兵力は半端な数ではない。全部が韓国国内に一気に展開できるわけもない。ここで注目しなければならないのが、この「有事の増援」のときに機能すべき、後方支援基地としての日本の存在だ。

物資の中継、増援部隊の一時的な集結地域として、また軍事物資や弾薬の中継・保管拠点として、そして兵士の治療や休養の場所として、後方支援地域なしには65万という大兵力の増援は不可能だ。朝鮮半島に一番近い米国の同盟国、大規模な米軍基地が展開済み、戦時備蓄の存在...。米軍にとって、朝鮮半島有事の際の後方支援基地として日本は格好の存在だ。そこに、太平洋地域での陸軍の初期対応部隊に指定されている第1軍団の司令部を移駐させたいと米国は言う。それは日本が、増援される米軍地上部隊の後方支援地域になることを、日米であらためて確認することを意味する。

増援の際に日本の領土・領空・領海を自由に使える、というのが米国の理想なのだろう。しかし、日本国憲法や安保条約の制約から、ことはそう簡単ではない。いや、まともに考えればそれは不可能だ、といえる。だからこそ、日米両政府は戦略的な観点からの合意を先行させ、朝鮮半島に向かう米軍の後方基地化を認めさせるような政府間合意につなげようとしているのではないか。

(RIMPEACE編集部)

 
  • はじめに
  • A キャンプ座間は、以前から増援戦略の拠点だった
  • B 「基地の共同使用」に潜むもの
  • C 第1軍団は、有事に数万の規模で増強される

    2005-3-9|HOME|