日本駐留米軍の2つの顔


日本に駐留する米軍には2つの顔がある。「もしも他国からの侵略があった場合には、在日米軍は地域の戦闘作戦を支援し、日本を防衛するために命令があれば戦闘作戦を遂行します」(在日米軍ホームページ、在日米軍司令部の使命より)という在日米軍としての顔。もう一つが太平洋軍の責任範囲で任務を遂行する第7艦隊、第5空軍、第3海兵遠征軍など米太平洋軍としての顔だ。イラクやアフガン、ペルシャ湾への派遣は、米中央軍への所属変更と併せた後者の戦闘部隊の顔だ。

米軍駐留経費は69億ドルだ。そのうちの49%を日本政府が負担している(在日米軍のページより、1ドル=122円換算)。経費補助を受けるときと、自衛隊と合同演習を行うときは在日米軍の顔をする。米戦略に基づく世界的な軍事行動に加わるときは太平洋軍の顔になる。そのハザマで日本国内向けに言い訳して回る外務省、という構図が浮かんでくる。

日本に駐留する米軍が、安保の極東条項を超える戦域に出るときの国内向けの言い訳は、UDP(部隊展開計画)の一環だ(空軍、海兵隊)、横須賀出港後に中東への出動命令を受けた(海軍)などだった。 そして、在日米軍や第7艦隊の中東派遣の実績が積み重ねられてきた。

沖縄の海兵隊が、部隊交代のハザマで嘉手納から直接中東に向かった。三沢や嘉手納の戦闘機部隊が、数ヵ月のローテーションでイラクの上空を飛び出したのは、今回のイラク戦争の前からだった。キティーホーク空母機動部隊は、ペルシャ湾からのイラク攻撃に直接かかわってきた。

「第一軍団は、米太平洋軍傘下のメジャーな作戦司令部として、太平洋軍司令官から、太平洋戦域で起きる偶発的な危機に即応する常設の統合任務部隊の一つに指定されている。 太平洋軍傘下で統合任務部隊に指定されている他の主要な部隊は、横須賀の第7艦隊と沖縄の第3海兵遠征軍だ」(第一軍団司令官証言、米上院軍事委員会小委員会、99年3月) 既に5年前から、横須賀に司令部を置く第7艦隊、沖縄に司令部を置く第3海兵遠征軍は、安保条約の極東条項を逸脱する地域、すなわち太平洋全域、インド洋の紛争に初期対応する緊急展開部隊とされていたのだ。

在日米軍のホームページでは第7艦隊、第3海兵遠征軍について、それぞれ次のように記述している。 「第III海兵遠征軍 (III MEF) は沖縄のキャンプ・コートニーに司令部を置き、日本の防衛及び西太平洋とインド洋での有事計画、作戦を支援するために展開している海兵隊航空・陸上任務部隊の計画、指揮、調整を行っております。」 「米海軍第七艦隊は太平洋艦隊の指揮下のもとにあり、艦艇十七隻と航空機百機が海軍前前方展開プログラムをもとに作戦行動を行っています。」「第七艦隊は太平洋艦隊の傘下にあり、在日米軍司令部の指揮下にはありませんが、艦艇乗員は日本国内にある主要な海軍施設を事実上の母港としています。」

「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」に安保条約で基地の使用を認められた米軍の、実際の任務範囲は「西太平洋とインド洋」にまで広がっている。それは、太平洋とインド洋、その沿岸地域にまで任務範囲が広がる第一軍団司令部が、在日米軍としてキャンプ座間に移駐する動きに重なってくる。 在日米軍基地を本拠地とする米軍が、極東条項の範囲を超えて出撃するのに対して、抗議するどころか国民に対する言い訳に終始してきた日本政府のスタンスのツケが、今、キャンプ座間への移駐話として回って来ている。

米軍のトランスフォーメーションがらみで計画に上っている動きだけを考えるのでは、五月雨的に積み重ねられた実績の持つ意味は浮かび上がってこない。艦載機を含む第7艦隊、沖縄・岩国の海兵隊、三沢・嘉手納の空軍の、アジアや中東戦域への派遣を、日米安保条約の規定と比較して問い直すことが急務だろう。米軍全体のトランスフォーメーションの日本への波及を、日米安保の運用を捉えなおす好機とする視点が必要だ。

(RIMPEACE編集部)

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日の丸、星条旗、国連旗がひるがえる、キャンプ座間の在日米陸軍司令部(8.2撮影)


キャンプ座間の正門では、防弾チョッキとライフル装備のガードが警備していた(8.2 撮影)


'2004-8-8|HOME|