佐世保から空母レーガンはどこに行ったのか−1


佐世保港に入港する原子力空母ロナルド・レーガン(2月24日撮影)

原子力空母を追跡

2月24日に佐世保に寄港した米海軍の原子力空母ロナルド・レーガンは、佐世保で「乗組員の休養と物資の補給」を受けたあと2月28日、抗議の声を背に受けて出港した。
 米海軍によると、原子力空母ロナルド・レーガンは横須賀を母港としている通常動力型の空母キティホークが修理を受けている期間、西太平洋での作戦任務に当たるとして派遣されている。

 ところで、佐世保を出港したロナルド・レーガンはその後どのような行動をとっているのだろうか。西太平洋における政治的・軍事的関心は朝鮮半島の核兵器開発を巡る6ヶ国協議に集中しているが、この動きと空母の動きはどのように関連しているのか。また、佐世保出港から3月末までの1月間の原子力空母の動きを追跡してみると、佐世保入港の意味や東アジアの安全保障の現状が見えてくる。
空母はなにを地域にもたらしたのか。

休養は香港で

2月28日佐世保を出港したロナルド・レーガンは1週間もしない3月5日には中国・香港に入港していた。米海軍のホーム・ページによれば、香港では原子力潜水艦も含めた空母ロナルド・レーガン戦闘群(RRCSG)所属艦船がそろって入港したとのこと。日本では随伴している駆逐艦などは各地の港に分散入港し1箇所に合流することはできなかったが、香港では勢ぞろいして(歓楽街での)休養と慰問活動を行ったという。
佐世保出港からわずか1週間で「休養」のために香港に入港したというのであれば、いったい日本の港での「休養」は一体なんだったのだろうか。

佐世保に上陸した空母の乗組員に対して米海軍当局は「不祥事を起こさないか」とかなり神経を使っていたようだ。伝え聞いた範囲ではあるが、米海軍佐世保基地では空母入港の期間中、米兵を対象にした特別警戒態勢を敷き、日本の警察にも協力を求めたという。
原子力空母の横須賀配備が日程に上る中、日本に寄港した空母の乗組員が重大事件を起こすことは配備計画に重大な影響を与えることになりかねない。
上陸した乗組員はそのため佐世保ではほとんど飲酒などで羽目をはずすことはなく(もっとも、米兵相手の飲食店も少なくなっているが)、「日本文化の見学」ということで福岡、大分、熊本などに貸切バスのツアーが多数(約七十台)用意され、観光旅行に出かけない兵士には、たとえば稲荷町の「福石観音」への徒歩による「文化研修」あるいは児童援護施設への慰問活動なども行われた。

また、米軍は憲兵(MP)とともに自主的なパトロール隊(SP)を組織し、絶えず街中を巡回し、飲食店もドアを開けて中をチェックするなど、相当神経を使った警戒態勢をしいた。このため寄港中に目立った犯罪はなく、街中で泥酔している米兵もほとんど見かけることはなかった。
結局、乗組員にとって反対運動が目に見える佐世保など日本の港では事件を起こさないように、半ば遠慮がちに休養せざるを得なかったということだろう。
そのことが佐世保出港からわずか1週間後の中国・香港入港につながったのだろう。つまり、「日本(佐世保)の港では十分な休養(歓楽)ができない」ということを実感させられたということだ。

海上自衛隊と共同訓練

香港を出港したロナルド・レーガン戦闘群は南シナ海を北上していたが、途中日本の海上自衛隊の艦船と通信や作戦、航空防御、洋上戦闘技術などの訓練を行っていた。訓練は3月16日から18日まで周辺海域で行われたということだが、以前から計画されていた訓練ではなく、空母が通過する機会を利用した訓練のようだ。

訓練の内容は、対潜水艦防御訓練こそ組み込まれていないものの、明らかに空母ロナルド・レーガンを海上自衛隊の艦船が防御することを想定した訓練である。場所が「フィリピン海」としか明らかにされていないが、海上自衛隊の艦船が日本から離れた公海上でも集団となって作戦行動を行っていたということである。 訓練には海上自衛隊舞鶴基地に配備されている護衛艦「はるな」、イージス艦「みょうこう」のほか「はまぎり」「ゆうぎり」が参加し、米海軍からは空母ロナルド・レーガンのほか巡洋艦レイク・シャンプレン、駆逐艦ラッセル、同ポール・ハミルトンがそれぞれ参加していた。

ロナルド・レーガン戦闘群の司令官によれば「米海軍と海上自衛隊はどの国との間よりも独特の関係を築いている。」とした上で、「この訓練は2国間の共通した戦闘調整能力を高めるものだ。」と、あたかも日米の軍事一体化は当然であり、海上自衛隊と米海軍が一体となって行動する現状に満足しているかのようだ。 事実、ロナルド・レーガンと「みょうこう」にはそれぞれの海軍から司令部要員が相互に乗り移り「隙間のない連携」が行われたという。

「たまたま出会ったので訓練した。」という以上の日米両海軍の連携ぶりには「日本国憲法」に拘束されない軍隊同士の危険なにおいを感じてしまう。(2に続く)

(RIMPEACE編集委員・佐世保)(初出は「元気ネットワーク」4月号)

[関連ページ]
レーガン佐世保寄港前後の補給艦の寄港状況(07.3.23)


2月9日、横須賀に集結していた舞鶴の海自艦船。手前の4隻が「はまぎり」「はるな」「みょうこう」「ゆうぎり」


'2007-4-19|HOME|