佐世保から空母レーガンはどこに行ったのか−2


佐世保港内錨地に停泊して補給を受ける原子力空母ロナルド・レーガン(2月24日撮影)

韓国・プサン入港

3月20日ごろ沖縄近海を通過した空母戦闘群は23日までに、韓国・プサンに入港した。この頃、中国・北京では朝鮮半島の核を最大テーマにした六ヶ国協議が行き詰まりを見せていた。
ところで、近年、韓国政府と米国政府の間には韓国駐留米軍の再編や指揮権を巡って意見の相違があるという。しかし、その一方で米軍の要望に沿う形でソウル近郊の龍山(ヨンサン)米陸軍基地を中部の平澤(ピョンテク)に移転させようとする韓国政府が、土地の強制収用に抗議する大秋里(テチュリ)の農民などを強権的に暴力で排除しようとして大きな社会問題となっている。

プサンに入港したロナルド・レーガンには米軍との関係を配慮したのか、多数の韓国軍関係者が訪問している。23日には韓国海軍第3艦隊教育訓練司令部、韓国海軍士官学校、第53韓国陸軍歩兵連隊のほか政府や民間の要人が多数乗艦したという。

「われわれにとって、多数の訪問者があったことは誇りとなることだ。」という空母乗組員の談話は米国と韓国政府のギクシャクした関係にもかかわらず、軍隊同士は良好な関係にあることを確認できた、という率直な意見なのだろう。しかし、政府の方針に軍隊が同意しないというのは感心できるものでないことは明らかだ。

米韓合同訓練の主役として

ロナルド・レーガンの韓国・プサン入港は直後の25日から始まる米韓合同による連合戦時増援(レセプション、ステージング、オンワード・ムービング、インテグレーション)と海軍・海兵隊による「フォール・イーグル」を統合した訓練に参加するためということが明らかにされた。
この訓練は名称が示すとおり、韓国での戦争に際して陸軍や空軍を共同して受け入れ、配備し、前方に展開し、統合運用する訓練と、海軍・海兵隊による強襲揚陸、内陸進攻訓練を一体化して行おうとするものである。
そして、海軍・海兵隊の強襲揚陸を空と海から支援するのがロナルド・レーガン空母戦闘群の役割で、山口県岩国基地にある海兵航空隊の戦闘攻撃機も含めた航空部隊や在日米海軍の艦船をコントロールする役目も担っている。

発表によると、訓練は三十一日まで行われ、米軍は増援部隊六千名及び駐韓米軍など全部で二万九千人が参加する。訓練には米海軍からロナルド・レーガン空母戦闘群の4隻に加え、佐世保を母港としている強襲揚陸艦エセックスとドック型揚陸艦トートゥガ、さらには掃海艦2隻も参加していたものと思われる。
空軍では、今年一月にローテーションで韓国に配置されたステルス戦闘爆撃機(ナイトホーク)1個大隊が参加し、駐韓米陸軍は慶尚北道倭館(ウェグァン)のキャンプ・キャロルに配備してある戦車、装甲車などの事前集積物資を戦場に移動する訓練が行われた。

米韓合同統合訓練「チーム・スピリット」が米朝協議での合意を受けて中止された一九九三年以降、チーム・スピリット訓練は海軍と海兵隊による「フォール・イーグル」訓練(実動訓練)と陸軍及び空軍を主体とした「連合戦時増援(RSOI)訓練」(指揮所訓練)に分割実施されてきた。
今回の訓練に対して朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)政府は「協議の一方で戦争準備することは受け入れられない。」として強固に訓練中止を求めたが、その背景には米朝協議の結果中止されたチーム・スピリットが、事実上再開されることに対する強い疑念があるからだろう。米朝間の関係は再び九四年以前の状態に戻ってしまう危険すら感じさせる今回の訓練であった。(完)

(RIMPEACE編集委員・佐世保)(初出は「元気ネットワーク」4月号)

[関連ページ]
レーガン佐世保寄港前後の補給艦の寄港状況(07.3.23)


原子力空母入港時の佐世保には、随伴した護衛艦船は巡洋艦レイク・シャンプレンだけだった(2月24日撮影)


'2007-4-19|HOME|