米韓合同対潜訓練延期と米艦の動き


佐世保基地赤崎岸壁に停泊中の音響測定艦ビクトリアス(10.9.1 撮影)


訓練中止で出港した佐世保基地に戻った駆逐艦カーティスウィルバー(10.9.6 撮影)
 

韓国西方の黄海で9月5日から9日まで行われる予定だった米艦合同対潜訓練が、台風9号のコースに重なるために延期された。

第7艦隊のニュースに寄れば、参加予定の米艦は駆逐艦カーティスウィルバー(DDG 54)、フィッツジェラルド(DDG 62)、音響測定艦ビク トリアス(T-AGOS 19)だった。
カーティスウィルバーはジョージ・ワシントン空母戦闘群の一員として空母がシンガポールに入港するあたりまで行動をともにしていた が、その後北に向かい、8月26日から佐世保に寄港していた。
ビクトリアスは佐世保からホワイトビーチに向かい、また佐世保に寄港していた。この2隻は9月2日に佐世保を出て黄海に向かった。
一方フィッツジェラルドは工事が終わった後短い出港を繰り返し、その後9月2日に横須賀を出て黄海に向かった。

4日までに中止が決まり、ビクトリアスは4日に、カーティスウィルバーは5日朝に佐世保に戻った。フィッツジェラルドは5日午後に 横須賀に戻った。延期された合同対潜訓練の開始日は未定だとのことだ。

韓国の哨戒艇が沈没し、これを北朝鮮軍がやったと結論付けた米韓両国が、北朝鮮軍に対抗して行う演習の一つが今回の黄海での対潜訓練 だった。
音響測定艦の参加は、浅海に潜む潜水艦を探知するためだが、その探知システムとして米海軍がもっとも力を入れたのが低周波アクティブ (LFA)ソナー・システムだった。
米海軍が作成した、LFAソナーの環境評価補足資料(SEIS 2005.11)では、中国、北朝鮮、イランの新型ディーゼル潜水艦を遠方から 探知するのにこのシステムが最善だと述べられていた。

LFAソナーを装備している音響測定艦はインペッカブルとエイブルの2隻だけだが、その2隻が9月2日にホワイトビーチに寄港してい て、今回の合同演習には参加する態勢になかった。参加艦のビクトリアスはLFAソナーを装備していない。
韓国の哨戒艇の沈没現場が浅い海で、(米韓などの調査でも)潜水艦の動きは探知されていない。リベンジのためにはまさにLFAソナー・ システムの出番であるはずなのだが。

探知できない潜水艦に雷撃されたという米韓などの合同調査委員会の結論を、米海軍が実際には信じていないのかもしれない。

(RIMPEACE編集部)

[参考ページ]
シリーズ「音響測定艦の動きを探る」−1  はじめに(2006.5.7)


2日に出港して5日14時過ぎに横須賀に戻って来たフィッツジェラルド(手前の62番)(10.9.6 撮影)


2010-9-6|HOME|