陸軍揚陸艇、日米合同災害対処演習に参加


ノースドックのEバース付近に並ぶ「災害派遣」の表示を付けた陸上自衛隊の車両(2017.6.25 星野 撮影)


「災害派遣」の陸自車両を載せて横浜ノースドックを離れる米陸軍揚陸艇ブロード・ラン(LCU 2007)(2017.6.25 読者 撮影)

 防衛省陸幕広報室の発表によれば、6月12日および20日から26日にかけて、「ビッグレスキューあずま」と称する日米合同災害対処演習が行われた。
演習実施に伴い、横浜ノースドックの土地の一部約35000uを月20日から30日にかけて一時的に共同使用区域とすることが、日米合同委員会で合意された。

 雨に煙る6月25日の午後、ノースドックのEバース付近を「災害派遣」の表示を付けた陸上自衛隊の車両が走行し、陸自の救急車など複数の車両が並べられている様子が目撃された。 また、同じ25日の夕方には、雨の上がったノースドックからLCU(陸軍大型揚陸艇)のブロード・ランが、「災害派遣」の表示を付けた陸自第一普通科連隊(練馬駐屯地)の複数の 車両を積んで出港していく様子が市民によって確認されている。

 ブロード・ランは6月25日の18時前に横浜ノースドックを出港し、翌26日の午前中には静岡県の沼津海浜訓練場に着岸し、同じ26日の21時頃には横浜に戻っている。 沼津で陸自の車両などの揚陸訓練を行ったのだろう。

 災害対処訓練を名目にして横浜ノースドックで行われた米陸軍と陸上自衛隊の合同演習は、今年3月に次いで2回目だ。昨夏、LCUのコアモが陸自の装甲車などを九州からノースド ックまで積んできたことも記憶に新しい。

今回の日米共同演習の実施を報じた朝日新聞神奈川版の6月26日の記事には、米陸軍揚陸艇に積み込んだ車両を固定する方法について陸自隊員が米兵から指導されている写真が掲載さ れている。横浜が、米陸軍と陸上自衛隊の共同演習場や輸送拠点などとして「日米一体化」の現場となっているのだ。

 しかし、何度も指摘しているように、2002年夏以降、横浜ノースドックにLCUなどの揚陸艇類が運び込まれた際、当時の外務省は「無人の舟艇の保管であって、運航のための 部隊の配置はなく、運用はされない」、「瑞穂ふ頭の機能を高めるものではない」などと説明していた(2002年9月18日横浜市会定例会での中田市長の答弁、同年9月20日の横 浜市会総務企画財政委員会での今田総務局長の答弁など)。

2002年8月28日の神奈川新聞も、「横浜市渉外部によると、米軍側は今回の措置にあたり外務省を通じて@艦船は燃料を抜いて保管するA運航はしない−と説明している」という 記事を掲載している。

もしも約束通り、ノースドックに係留保管されているLCUには運航のための人員が配置されておらず、普段は燃料も入っていないというのであれば、そのような船を災害への即応対処 の中心的輸送手段に当て込んで、訓練に使用することに意味はあるのだろうか。
それとも、「災害対処」は名目に過ぎず、今回の演習には他の目的があるということだろうか。

 6月26日の朝日新聞神奈川版の記事は、「在日米陸軍司令部によると、ノース・ドックの揚陸艇は韓国やフィリピンなど各国に派遣され様々な事態に対応している」と書いている。 これは重大な記述だ。
「無人の舟艇」を「燃料を抜いて保管」しているだけだったはずなのに、約束を破って運用していることを在日米陸軍司令部自らが公然と認めているということなのだから。

 市民も横浜市も約束をもう忘れてしまっていると米軍や日本政府が考えているのならば、あるいは、既成事実を積み重ねれば約束を反故にできると考えているのならば、ずいぶん舐め た話だ。横浜市や神奈川県は直ちに事実関係を確認して、しかるべき対応をとるべきではないのか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)

[参考ページ]
LCU2隻、広弾薬庫から沖縄に戻る(2017.6.11)


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