米大型輸送艦、横浜の民間ふ頭で揚陸作戦装備を積み出港


7月4日、MCS(組み立て式のいかだ、桟橋)を積み込むフィッシャー。(2021.7.4 読者 撮影)


民間ふ頭の鈴繁埠頭に停泊するフィッシャーの甲板上には、コンテナハンドラーとみられる車両の姿も確認できた。(7.3 星野 撮影)


7月5日、複数のコンテナハンドラーを積み、出港直前のLCUカラボザ。(7.5 星野 撮影)

 7月1日から横浜港の民間ふ頭に接岸していた米海軍大型輸送艦フィッシャー(T-AKR 301)は、7月5日の未明、横浜港を出港した。

米軍基地ではない民間ふ頭である鈴繁埠頭に居座ったフィッシャーは、今回の寄港で、横浜ノースドックに備蓄されているMCS(Modular Causeway System)を組み立てた「浮き桟橋」あるいは「浮きいかだ」を複数積み込んだことが確認された。MCSは、APS−4(陸軍事前備蓄装備)として横浜ノースドックに備蓄されている戦争資材である上陸作戦セットの一部だ。つまり、米軍が海外で行う戦争の基盤となる装備を即使用可能な状態で横浜港の民間ふ頭で積み込んで、米海軍大型輸送艦が出港した、ということだ。

 横浜港を出港したフィッシャーの、AIS(船舶自動識別装置)に示された目的地は、マリアナ諸島のテニアン島だった。ただし、この目的地情報には、かなりデタラメな情報が提示されることもある。

 とは言え、テニアンかどうかは分からないが、西太平洋のグアムに近いどこかで米軍が行う、揚陸作戦の訓練のためにフィッシャーは横浜の民間ふ頭から出撃した可能性もある。

 フィッシャーが出港したのと同じ7月5日には、LCU(米陸軍大型揚陸艇)カラボザが、複数のコンテナハンドラーを甲板に載せて横浜ノースドックを出港し、伊豆七島方面を南下した。フィッシャーの出港とLCUカラボザの出港には、何らかの関連があるかもしれない。

 今回、フィッシャーが積み込んだMCSは、5月24日頃から横浜ノースドックのふ頭先端部に大量に並べられ、6月16日頃から組み立てられて海に浮かべられ、組み立て式のタグボート(WT:warping tug)で、横浜ノースドックの郵便地区の対岸にあたる場所に回航され、係留されていたものだ。

 また、米陸軍の複数の部隊のフェイスブックやツイッターの情報によれば、MCSの組み立てが行われた6月には、米本土のバージニア州フォート・ユーティスに本拠を置く第7輸送旅団の遠征部隊(7th Transportation Brigade - Expeditionary)が、ハワイに本拠を置く第8戦域支持コマンド(8th Theater Support. Command)の指揮の下で、横浜ノースドックで訓練を行っていた。

 WTによるMCSの回航、係留作業も、第7輸送旅団所属と見られる米兵たちがおこなった。

 大型輸送艦フィッシャーがMCSを積んで7月5日に出港したこと、それに加えてLCUカラボザも複数のコンテナハンドラーを積んで同じ7月5日に出港したことも、米陸軍第7輸送旅団が横浜港内で行っていた訓練と関連があるのかもしれない。

 いずれにせよ、横浜港内の民間ふ頭に米大型輸送艦が接岸して、揚陸作戦に欠かせない装備を使用可能な状態で積み込み、出港したことは明らかだ。にもかかわらず、県や市の対応がほとんど伝わってこないのは、一体どういう訳なのだろうか。例えば、米艦が民間ふ頭で何をしているのか、危険物は使われていないか、現場で確認・監視する作業は行ったのだろうか。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)

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横浜ノースドックのふ頭先端部に並べられていたMCS(6.1 星野 撮影)


組み立てられて、巨大な民間クレーンバージで海に降ろされたMCS(6.21 読者 撮影)


WT(組み立て式のタグボート)によって回航され横浜ノースドックの郵便地区の対岸に係留されるMCS(6.23 読者 撮影)


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