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南極に行って帰ってきた横浜NDの揚陸作戦資材


3月16日、横浜ノースドックに入港したオランダ船籍の貨物船プランティングラハト(26.3.16 星野 撮影)


プランティングラハトには、浮き桟橋システム(MCS)や組み立て式のボート(CF)などが満載されていた(26.3.16 星野 撮影)


MCSやCFをプランティングラハトから降ろす作業は、3月18日になってから行われた(26.3.18 星野 撮影)


プランティングラハト上のMCSをクレーンで吊り降ろすための玉掛けのワイヤを取り付ける作業(26.3.18 星野 撮影)


クレーンで埠頭の上に吊り降ろされるMCS(26.3.18 星野 撮影)


埠頭上に降ろされたMCSを片付ける作業を行う兵士たちと多用途小型重機(26.3.18 星野 撮影)


プランティングラハトに積まれていた「01」と「12」の組み立て式ボートは、海上に降ろされてこの場所に、他の組み立て式ボートとともに係留された(26.3.18 星野 撮影)


3月19日、プランティングラハト出港後の横浜ノースドックの埠頭の先端部。陸揚げされたMCSのほとんどは既に片付けられていた(26.3.19 星野 撮影)

3月16日の朝、オランダ船籍の民間貨物船プランティングラハト(PRANTIJNGRACHT)が横浜ノースドックに入港した。

プランティングラハトの甲板上にはモジュール式の浮き桟橋システム(MCS: floating Modular Causeway System)や組み立て式のボート(CF: Causeway Ferry)、その他ブルドーザーなどが満載されていた。
積まれていたMCSやCFは、3月18日に同船からノースドックの埠頭上と海上に降ろされた。

MCSやCFを降ろしたプランティングラハトは3月19日に横浜ノースドックを出港し、米国カリフォルニア州のポートヒューニーメに向かい、現地時間の4月2日に到着した。

プランティングラハトが降ろしたMCSやCFは、APS(Army Prepositioned Stock:陸軍事前配備貯蔵)の拠点として米陸軍の揚陸作戦用の舟艇や資材が備蓄されている横浜ノースドックには、いずれも既にたくさん置いてあるものだ。

では、今回プランティングラハトが運んできたMCSやCFは、どこから来たものなのか。

答えから言えば、いずれももともと横浜ノースドックに備蓄されていたものを昨年12月前半に別の貨物船が運び出していたものだ。そしてその後プランティングラハトに積み替えられて南極に運ばれて使われたものだ。

その経緯を、順を追って以下にもう少し詳しく解説していこう。


昨年12月11日、横浜ノースドックに入港した貨物船フェアウィンド・リージョン(25.12.11 星野 撮影)


フェアウィンド・リージョンの入港よりもだいぶ前から、積み出すMCSは埠頭先端部に並べられていた(25.12.8 星野 撮影)


組み立て式のボート(CF)も、積み込み作業をしやすいように、予め海上に浮かべられ係留されていた(25.12.7 星野 撮影)


フェアウィンド・リージョンへのMCSやCFの積み込みは12月12日に行われた。同船はその日のうちにポートヒューニーメに向けて出港した(25.12.12 星野 撮影)

今回プランティングラハトが持ち帰ってきたMCSやCFを横浜ノースドックから搬出したのは、昨年12月11日から12日にかけて寄港した貨物船フェアウィンド・リージョン(FAIRWIND LEGION)だ。

搬出されたMCSはフェアウィンド・リージョンの入港よりもかなり以前からノースドックの埠頭の先端部近くに並べられ、CFも海上に浮かべられて準備されていた。

12月12日にMCSやCFを積み込んで横浜を出港したフェアウィンド・リージョンは、一路米国カリフォルニア州のポートヒューニーメに向かい、現地時間の1月1日に同港に到着した。

横浜ノースドックから搬出されたMCSやCFはこの時、フェアウィンド・リージョンからポートヒューニーメに降ろされた。

ポートヒューニーメでそれらのMCSやCFを積み込んだのが、貨物船プランティングラハトだ。
プランティングラハトは、米海軍軍事海上輸送司令部(Military Sealift Command: MSC)が南極の米マクマード基地(米国の南極観測拠点)への補給作戦として毎年実施している「ディープフリーズ作戦2026」(Operation Deep Freeze 2026)の、今年の輸送船としてチャーターされたのだ。

海事・オフショア情報の専門サイト「gCaptain」に1月16日付けで掲載された記事によれば、プランティングラハトには、浮き桟橋MCSやCFだけではなく「建設資材や重機から南極の冬を乗り切るために必要な生活支援物資まで、305個の貨物」が港湾労働者によって積み込まれた。

プランティングラハトは1月7日にポートヒューニーメを出港し、同上記事によればニュージーランドの港に立ち寄って追加の貨物を積み込んだ後、南極へと向かった。
確かにAIS(船舶自動識別装置)のデータによれば、プランティングラハトは1月25日から28日にかけてニュージーランドのリッテルトン(リトルトン)港に寄港している。

「ディープフリーズ作戦2026」には沿岸警備隊(USCGC)の大型砕氷船ポーラ・スター(POLAR STAR WAGB 10)も参加し、マクマード基地への物資輸送を支援した。

米戦争省(国防総省)HPの2月12日付け記事「Military Sealift Command Delivers Needed Cargo to Antarctica」(「軍事海上輸送司令部、南極へ必要な物資を輸送」)によれば、プランティングラハトがマクマード基地に隣接する湾・港のウインターベイに到着したのは2月4日。乗組員はそこで65トンの浮体式モジュール型橋脚システム(MCS)を組み立てて船から降ろした。

MCSは海上で接続されて、陸軍第7輸送大隊によって所定の位置まで曳航された。
そして、設置されたMCSを使って補給物資入りのコンテナ372個がマクマード基地に運ばれた。
同記事によれば、物資陸揚げ作業開始時のMCSの構築には約3〜4日、作業終了時の解体にも同じくらいの時間がかかるのだという。

AISのデータによれば、プランティングラハトが南極での任務を終えてニュージーランドのリッテルトン港に戻ってきたのは、2月27日だった。
3月1日にリッテルトンを発って、MCSやCFを「返却」するために横浜に入港したのが3月16日だった、というわけだ。

戦争省HPの同記事と「gCaptain」の1月16日付け記事によれば、「ディープフリーズ作戦」によるマクマード基地への物資搬入で、老朽化した氷上桟橋に代えて浮き桟橋MCSを使うようになったのは、昨2025年からのことだ。
確かに昨年も、同じ時期に浮き桟橋MCSや組み立て式のボートが横浜ノースドックから米国ポートヒューニーメ経由で南極に運ばれて使用され、貨物船が再び横浜に持って帰ってくる、という出来事があった。
米軍はこれからも横浜ノースドックの揚陸作戦用の素材を「ディープフリーズ作戦」に使い続けるつもりなのだろうか。

2025年3月30日付け関連記事 南極基地への補給任務を終えた貨物船、揚陸作戦資材を横浜NDに持ち帰る

少なくとも以上の経緯からは、米国本土の西海岸から「出撃」する一種の揚陸作戦のためにも、横浜に備蓄されている揚陸作戦セットを使用すること、そして、そのために一旦横浜から米国までわざわざ運び込むことすらも米軍は当然のこととして行っているということが分かる。
つまり、横浜ノースドックに備蓄されているAISの揚陸作戦セットは、安保条約で許されている「日本」や「極東」を遙かに超えた地球規模での米軍の活動のインフラとして位置づけられているということだ。
これを安保条約違反といわずして何というべきか。
今回は南極観測活動のためだから例外的に許される、という話ではないはずだ。

ところで、「gCaptain」1月16日付けの記事のタイトルは、「MSC Sends Dutch Heavy-Lift Ship to Antarctica, Sparking Foreign-Flag Debate」(「軍事海上輸送司令部(MSC)、オランダ船籍の大型貨物船を南極へ派遣、外国籍船利用を巡る議論が再燃」)だ。

この記事はタイトルの通り、軍事海上輸送司令部の「米国船籍ではなくオランダ船籍の船舶を使用するという決定が、海事関係者の一部から反発を招いている」ことを指摘しているものだ。
米国の「海事関係者の一部」の「反発」というものが実際にはどの程度のものだったのかは分からないが、記事によれば軍事海上輸送司令部MSCは「gCaptain」に対する声明でわざわざこの点について言及しているという。
それによれば、2025年10月の競争入札では技術的に許容できる結果が得られなかったため2025年11月14日に再入札をした結果、技術的に許容できる船舶は1隻のみで、それが外国船籍で米国企業が運航している船舶(プランティングラハト)だったのだという。

米軍は以前から多くの業務を民間事業者に担わせてその活動を遂行している。
世界でもっとも巨額の軍事費が投入され続ける米軍といえども、活動のすべてを軍隊の「直営」で行っている訳では無いのだ。
物資の輸送に関しても、日本を含めた外国船籍の業者にもその多くを担わせているのが現状だ。

しかし、それに対しては、米国船籍の船に担わせて「米国商船隊」(American merchant marine)の維持強化を図るべきだという批判の声があることを「gCaptain」の記事は示しているのだろう。とりわけ、「ディープフリーズ作戦」のようなシンボリックな意味合いを持つような輸送活動を外国船籍の船が担うことに対しては。
だが、それでも、米軍の輸送業務を米国船籍の船だけに担わせることには無理がある、というのが軍事海上輸送司令部の判断なのだろう。

(RIMPEACE編集部 星野 潔)


貨物船フェアウィンド・リージョンの到着前から、ポートヒューニーメで「ディープフリーズ作戦2026」で運ぶ物資を積み込んでいたプランティングラハト。
米軍画像サイトDVIDS2025年12月30日付け記事「MSC Reservists Support Operation Deep Freeze 2026 Loadout [Image 1 of 2]」より引用。
https://www.dvidshub.net/image/9468451/msc-reservists-support-operation-deep-freeze-2026-loadout


今年2月4日、南極マクマード基地に到着した貨物船プランティングラハト。甲板上にMCSやCFが載っているのが見える。
米軍画像サイトDVIDS2026年2月4日付け記事「USCG Polar Star (WAGB 10) supports McMurdo Station during Operation Deep Freeze 2026 [Image 1 of 2]」より引用。
https://www.dvidshub.net/image/9520586/uscg-polar-star-wagb-10-supports-mcmurdo-station-during-operation-deep-freeze-2026


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