音響測定艦エイブル、現役復帰へ 

2003年7月に退役していた音響測定艦エイブルが現役に復帰する。MSC(Military Sealift Command)のチャーター船一覧によれば、 エイブルの再契約のスタートは07年3月19日だった。その後の契約更新期日や延長可能期間は、ビクトリアスやインペッカブルなど他の (グレーの)音響測定艦4隻と同じだ。

MSCのOcean Surveillance Ships(音響測定艦のこと)の6隻の中にすでに入っていて、現在オーバーホール中で、ROS(Reduced Operating Status,短期間で現役に戻れる保管状態)となる予定、と付記されている。
エイブルは退役まで大西洋艦隊の責任エリアで動いていた。今は、横浜を実質的な母港として動くロイヤルも、当時は同じ大西洋艦隊の 指揮下で動いていた。対潜水艦戦闘は太平洋艦隊のトップ・プライオリティーに掲げられている。潜水艦の位置を特定する音響測定艦が 太平洋艦隊指揮下に集められ、さらに今回退役していたエイブルを復活させることで、太平洋艦隊の持つ対潜作戦用の資産はさらに1隻 増えることになる。

今回のエイブル現役復帰には、もうひとつの理由がある。昨年まではビクトリアスが担う計画だったコンパクト版LFA(低周波アクテ ィブ)ソナー(以下、CLFAと略)のテストと本番第一号の役目を、エイブルが肩代わりすることになった。
交代でドック入りしながら沖縄周辺海域などをパトロールしている音響測定艦の一隻をテストベッドに引き抜くことが、トップ・プライ オリティーの対潜水艦作戦に影響が大きい、というのでとられた措置がエイブルの復帰だろう。


LFAソナーとCLFAソナーの配備計画。表中の"T-AGOS 20"と"T-20"は音響測定艦エイブル

2007年5月に、米海軍が低周波アクティブ(LFA)ソナーが環境に与える影響についての補足文書最終版(Final Supplemental Environmental Impact Statement、以下SEIS文書最終版と省略)を公表した。LFAソナーとCLFAソナーの配備計画が上掲の 表だが、2005年11月版SEIS文書の配備計画表と比べると、CLFA搭載艦1番艦がT−AGOS 19(ビクトリアス)から T−AGOS 20(エイブル)に変わっていることがわかる。

コリー・ショウエストがLFAを実際に海上で使い始めたのは2003年1月25日で、前日に出港するまで約2ヶ月間横浜ノースドックに滞在 していた。またインペッカブルがノースドックに初寄港したのは2004年3月23日だが、これも配備計画表のインペッカブルのLFAオペレ ーション開始日と近い。

エイブルにCLFAが装備されるのは、この配備計画表によれば2008年2月ころだ。またテストとデモを終了して本番に入るのが 2008年8月だ。
現役復帰した音響測定艦エイブルは、来春までには横浜ノースドックにやってきてCLFAのテストを開始し、8月には他の音響測定艦と ともに、パトロールを開始するのではないか。

(RIMPEACE編集部)

[参考ページ]
シリーズ「音響測定艦の動きを探る」−3    今後の音響測定艦と低周波アクティブソナーの配備計画(2006.5.7)(2005年11月版SEIS文書の配備計画表を採録)

[参考資料] SEIS文書最終版(長大,20M超)
Final Supplemental Environmental Impact Statement for Surveillance Towed Array Sensor System Low Frequency Active (SURTASS LFA) Sonar - May 2007


'2007-9-8|HOME|