ヨコスカ平和船団ヨットのワイヤー切断事件

「今後、無用な接近をさせない」、当直司令明言

米軍警備艇の危険な操縦により、ヨコスカ平和船団のヨット「おむすび丸」のワイヤーが切断された。その翌日の11月1日、米軍から「申し訳無いことをした、弁償したい」という趣旨の申し出が平和船団にあった。ゼニカネの問題じゃない、米軍側と話しをしたいと平和船団が申し入れて、11月8日午後、ヨコスカ基地でこの件に関する話し合いが持たれた。米軍から8日の当直司令と、事件当日(10.31)の警備艇操縦者、それに憲兵隊から通訳として一人(日本人)、平和船団側は事件当日に「おむすび丸」に乗っていた2人が出席した。

なぜ「おむすび丸」の直前を横切るような危険な操縦をしたのか、という問いに対して、当日の操縦者は、「おむすび丸」のへさきが吾妻島(石油施設がある、編集部注)のほうを向いたように見えたため、と言った。軽量級のヨットが揺らされれば、一瞬そういうこともありうるが、それが理由だったとはなんとも乱暴な話しだ。
すぐ近くにいた海保の船「かしおぺあ」の乗組員からも「おむすび丸」が吾妻島に向かおうとした、などという報告は、海上保安庁横須賀海上保安部にも入っていないとのことだ。
当直司令も、部下の行動の理由もあるので、100%米軍側が悪いかと言われればそれは認めづらいが、結果として危険な状況をもたらしたことは遺憾に思う。また、この場合は無線で近くの海保の船に連絡して、海保に規制を依頼すべきだった、とも述べた。

平和船団が「海上デモは警察や海保に届けを出して行っている。なぜ米軍が警備に出て来たり、わざと接近したりするのか」と問うと、当直司令は「今後日本の警察や海上保安部に届けが出されている場合は、ブイを超えて侵入しようとする場合以外は、デモをしている船には不必要に近づかないよう、指示した」と答えた。
これに対して平和船団は「基本的に海はだれでも自由に通行できる。警察や海保への届が無い場合でも同じだ」と反論した。当直司令は「制限水域でも、エンジン故障以外の理由で停止しない限り、通行は自由だ」と認めた。あらためて「手こぎのゴムボートなどで制限水域を通行しているときに、何度も警備艇にすぐ近くを高速で通過されて、危ない思いをした。今後はこういうことは起きないといえるか」と質問すると、当直司令は「各艦船に積まれているボートについてまでは私の管轄外だが、警備艇に関しては今後は高速ですぐ近くを通過するなどはしない」と明言した。

実際に話し合った時間は1時間余りだった。切断されたヨットのワイヤーの実費については、防衛施設庁を通すなどの手続はあるにせよ、米軍が負担することになろう。

米軍と直接話をすることはめったにない。今回話をしてみて、生身の人間が見せる表情など、会ってみなければわからないこと、英語が聞き取れなくてもわかることはたくさんある、と感じた。
へさきが吾妻島を向いたように見えたのでヨットの直前を通過した、という「いいわけ」に対し、それではその前に真横を高速で通ったのはなぜだ、と聞いた時には、操縦者が一瞬顔をしかめた。
「無用な接近はするな、と指示した」という当直司令に、「これまでは指示していなかったのか」と突っ込むと、しばらく口ごもり、「これまでも指示はしていたが、今回強く指示した」と答えた当直司令の目の動きもまた、予想していなかった質問へのとまどいが感じられた。

当直司令が無用な接近を禁じたことは確かだと思う。あとは、警備の現場がそれを忠実に守り続けるのか、それともホトボリが覚めたら元の木阿弥となるのか、の問題だ。平和船団は今後も海上デモを続けるだろう。今後米軍がどんな対応をしてくるのだろうか。
11月の海上デモは28日午前11時より。乗船希望者はようこそ!ヨコスカ平和船団へにアクセスして、申し込んで下さい。

(RIMPEACE編集部)

[参考ページ]
平和船団ヨットのワイヤー切断。米軍警備艇の意図的な危険操船(04.10.31 upload)


「おむすび丸」の直前を横切ったあと、回り込んできた警備艇。450馬力が高速で走るとこれだけ波を発生する(10.31 撮影)


'2004-11-12|HOME|