貨物船ノーブルスターと「専用施設船」



6月11日に那覇軍港に寄港したノーブルスター。海兵隊の車両などの運搬を行った(09.6.11 撮影)

ひと月ほど前の6月11日に、貨物船ノーブルスターが那覇軍港に寄港した。ジョージ・ワシントンの修理に伴い排出された放射性廃棄物を 積んで、3月28日に横須賀から出航した船だ。
那覇軍港の埠頭で、ノーブルスターの近くに並んでいたのは海兵隊の車両など。沖縄海兵隊の車両の出し入れなど、ごく普通の荷動き だった。
もちろん放射性物質などは扱っていない。この船は、普通の貨物船で、横須賀から放射性廃棄物を本国に運ぶときだけ、廃棄物の運搬船と なったのだ。

ジョージ・ワシントンの横須賀配備の前に、米政府が日本政府に示した「合衆国原子力軍艦の安全性に関するファクトシート」(以下、 ファクトシートと略す)の中に、次の記述がある。
「固形廃棄物は、適切に包装された上で、合衆国の沿岸の施設又は専用の施設船に移送され、承認された手続きに従って合衆国国内で 処理される」(外務省、仮訳)
当編集部は、ノーブルスターがこの「専用の施設船」になるのか、とファクトシートを読み間違えていた。普通の貨物船であることが運用面 からも明らかになって、それじゃ、この「専用の施設船」はなんのことか、という疑問が浮かんできた。

ファクトシートの正文である英文ではこう書かれていた。
Solid wastes are properly packaged and transferred to U.S. shore or tender facilities for subsequent disposal in the U.S. in accordance with approved procedures.
「専用の施設船」に該当するのは "tender facilities" もしくは "tender facility" だが、"tender" はフランク・ケーブルなど潜水艦 母艦(Submarine Tender)の"tender"だ。
「原子力支援施設を備えた tenders が有用なのは、時に原子力艦船修理機能を持たない造船所(海軍基地など、筆者注)に派遣されて、 要求に応えられるからだ」(MAINTENANCE POLICY FOR U.S. NAVY SHIPS, 03.7.11)

空母の母艦というのは聞かないから、原子力空母の場合は、固形廃棄物は専用船には送られずにすべて合衆国の陸上施設に送られる、と いう意味なのだろうか?
それとも、ジョージ・ワシントンの停泊する12号バースのとなりのバージ桟橋にいる3隻の修理用バージ(YR)と、空母のメンテナンス 期間中だけ空母の後ろについていた修理・宿泊用バージ(YRB)も「専用の施設船」とみなして、空母の艦内から放射性廃棄物が移送さ れ保管される可能性を担保した言い方なのだろうか?
この「専用の施設船」に係る懸念については、稿を改めたい。

(RIMPEACE編集部)

当編集部ではこれまで、YR95というバージをホテルバージとしていたが、これは修理用バージの間違いだったので訂正します。 この点では、石川巌氏の「軍事研究」誌上の指摘が正しい。ただし、このバージ群がCIF(Controlled Industrial Facility)ではないか、 という見方には、当編集部は同調しない。(3隻のバージに、CIFは収まらないと考えるから)

[参考ページ]原子力空母修理の拠点 バージYR−95 物語(大変身編)(08.3.6)


放射性廃棄物を積み出したときのノーブルスター(09.3.27 撮影)


2009-7-12|HOME|