MD対応駆逐艦と非対応駆逐艦

最新のミサイルディフェンス(MD)・システム搭載艦の一覧から読み取れるように、MD最前線基地横須賀に常駐するイージス駆逐艦 もMD対応・非対応に分かれる。80番台の新しい駆逐艦3隻は、MDには対応していない。80番台のイージス駆逐艦は フライトUAというタイプに分類される。アーレイ・バーク級駆逐艦の最新型だ。
一方横須賀常駐の駆逐艦でMDに対応している4隻はいずれもフライトTという初期型だ。

横須賀常駐艦に限らず、MDに対応している15隻のアーレイバーク級駆逐艦にはフライトUAタイプはない。すべてフライトT(艦番号 DDG51〜71)、フライトU(DDG72〜78)だ。
フライトUAがその前のタイプと違う点としては、ヘリを搭載できること、VLSのセルの数が多いことなどがあげられる。高性能の艦に MDの任務は負わせていないことになる。

米議会に対する調査報告(CRS Report)「海をベースとする弾道ミサイル防衛のバックグラウンド」(2006.12.4)の中で、多目的に対応す るイージス巡洋艦・駆逐艦を弾道ミサイル防衛(BMD)任務に就けることは、他の任務を遂行する能力を小さくする可能性がある、と筆者 のロナルド・オルケ氏は述べている。
BMD任務に就けばその他の任務に合わない海域に張り付く必要がある。
レーダーの能力が制限されるため、対空防衛能力が落ちる。
弾道弾を迎撃するミサイルが、対空、対地、対潜兵器を積む場所を占拠する。
このような可能性をオルケ氏は指摘する。

BMDにはきわめて高度な技術が必要だ。しかしそれは単機能でしかないこともまた、確かなことだ。
空母戦闘群の一員として対空、対地、対潜などの多機能を要求されるイージス艦だからこそ、ヘリの運用能力を付加されたフライトUA の駆逐艦は、多目的対応の能力を生かすために意識的にBMD任務から外している、と見られる。

最新の船に最新のシステムを搭載する、という一見もっともらしいやり方が、BMDについてはあてはまらない。またそれが、BMDの 特徴だろう。
横須賀の艦船でいえば、BMDシステム搭載艦のシャイローと4隻の駆逐艦は、他の汎用戦闘艦とは若干動きが違う面も出てくるだろう。 たとえば民間港への軍艦の寄港ラッシュも、BMD対応艦を抜き出せば、米国のBMDの対象地域、艦船の配備海域が少し見えてきそうな 気がする。

(RIMPEACE編集部)

[参考ページ]
ミサイル・ディフェンス・システム搭載の米艦一覧(08.7.20)


左はフライトUAのラッセン、右はBMD対応艦でフライトTのジョン・ポール・ジョーンズ。
ヘリ格納庫のあるなしが外見上のもっとも大きな違いだ(05.9.4 横須賀基地にて撮影)


'2008-7-22|HOME|