シリーズ・沖縄の基地を視る(114)

厚木の艦載機が沖縄で爆撃訓練


模擬弾を翼下に装備して嘉手納基地の滑走路に乗るスーパーホーネット(NF 113)


離陸前に装備していたBDU-33訓練弾(左)は、着陸時(右)には投下されていた(08.2.19 撮影)

2月16日、厚木基地から福岡空港経由、もしくは直接嘉手納に飛来したスーパーホーネット7機は、それ以前に飛来していた1機と ともに、翌日から嘉手納をベースとした訓練を始めた。これまで見たことがない、艦載機の沖縄での爆撃訓練だ。

250kg爆弾MK-82の投下後の動きをシミュレートするBDU-33訓練弾を、右翼下に4発搭載したスーパーホーネットFA18Fが、1時間足ら ずの飛行で嘉手納に帰投してきたときには、全弾投下済みで何も下げていない。
飛行時間からみて、近場の出砂島や鳥島の射爆場で訓練弾を投下してくると見られる。

この1月下旬に、前橋や渋川周辺の住民からジェット機の爆音がひどいという怒りの声が多数上がった。この地域の上空には、 米軍名称RJA589という訓練空域が広がり、厚木の空母艦載機が対地攻撃訓練に使用している。
2月に入っても艦載機はやってきたが、特に苦情が集中した1月26日からの4日間で、50機を超えるホーネット、スーパーホーネット が厚木からこの空域に飛来している。そのうちの半数以上がF型のスーパーホーネットだった。
対地攻撃の飛行訓練を前橋、渋川上空で行った後、F型スーパーホーネット部隊(VFA-102)は嘉手納に移動して沖縄の射爆場で爆弾の投下 訓練を始めたのだ。

実はその1年前にも似たような訓練シリーズが展開された。2008年1月、RJA589に艦載機が計190機以上殺到し、その主力は やはりF型スーパーホーネットだった。1年前の2月にはこれらの艦載機はグアムに飛び、ファラロン・デ・メディニーラで実弾爆撃訓練 を行っている。
今回は、マリアナ諸島の射爆場に代わって沖縄の射爆場で、渋川、前橋上空の訓練の仕上げが行われたことになる。

2002年4月の米GAO報告 "MILITARY TRAINING" の中で、米海軍の不満として「艦載機の対地攻撃訓練は、沖縄の離島の射爆場か、 サイパンの北の無人島ファラロン・デ ・メディニラでしか出来ない。」と述べられている。この場合の対地攻撃訓練は、爆弾を実際に 落とす訓練で、前橋、渋川上空ではさすがに爆弾投下まではできない。
沖縄の射爆場は、在韓米空軍機と岩国の海兵隊機が主に使用する。ここ数年嘉手納に飛来する艦載機はあっても、嘉手納から鳥島などの 射爆場に訓練に向かう艦載機はなかった。厚木の艦載機の爆撃訓練は、主にファラロン・デ ・メディニラで、そのほかは三沢のF16や 空自の戦闘攻撃機が使用する合い間をぬって天が森射爆場を使っていた。

今回沖縄の射爆場を厚木の艦載機が使い出したのはなぜだろうか。
米軍再編の「目玉」となっている厚木から岩国への艦載機の移駐。しかし岩国からはグアムも天が森も厚木より遠くなる。機体に問題が 生じたとき、岩国からグアムへの直行ルートを飛んでいたのでは緊急に降りる場所が無い。厚木経由でグアムに向かう今の行き方を踏襲 するしかない。
今海兵隊機が岩国から飛来して使っているように、艦載機も沖縄の射爆場を今後使っていくための第一歩が、今回のスーパーホーネットの 嘉手納飛来であり、沖縄の射爆場使用だったと見るのが妥当だろう。
沖縄の負担を軽減する、という美辞麗句とは裏腹に、沖縄への軍用機の訓練集中は進む。米軍にとって厚木、岩国、沖縄を艦載機が自由に 使うことは、在日米軍再編の狙いの一つなのだ。

(RIMPEACE編集部)

[参考ページ]
NAVYの演習制限(2002.7.14)
厚木発、対地攻撃エリア(渋川上空)出撃状況 (2009.2.8)


'2009-3-3|HOME|