補給・補助艦船の動き


 昨年特に目立ったのは事前集積艦の動きである。入港した事前集積艦は8隻延べ31回に上り、艦船の種類別では最高の回数となった。

補給・補助艦船の入港数の推移


事前集積艦など貨物輸送艦の入港は、1994年に8隻、1995年は15隻と増加するが1隻あたりの停泊日数は4日以下で、大半が赤崎岸壁で荷役作業を終えると直ちに出港するケースがほとんどで、沖合いに停泊することはまれであった。これは大型医療倉庫への野戦病院セットが入ったコンテナの搬入や新たに配備された揚陸艦の用品搬入、さらにはアジア諸国での軍事訓練に使用する海兵隊岩国基地の車両や装備を輸送することが目的であったためと思われる。
 ところが05年は4隻延20回、停泊日数148日、06年は8隻延31回、停泊日数285日へと急増している。停泊日数は平均で7日(05年)、9日(06年)と長期に停泊する傾向が顕著となっている。しかも、岸壁(赤崎、立神)に停泊するケースが05年は3回、06年は1回もない。

 佐世保に姿を見せた米陸軍の事前集積艦は4隻で、すべてが第4事前集積艦隊(司令部=クウェート)に所属し、海兵隊の事前集積艦はすべて第3洋上集積艦隊に所属している。
 佐世保に集中した理由は、韓国から撤退する米陸軍兵力を有事に再投入することを想定した準備であるということと、米本土・ワシントン州から神奈川県・キャンプ座間に再編・移駐が計画されている陸軍の第1軍団司令部との連携を念頭に置いている、ということだろう。

もうひとつ特徴的だったのは米海軍がただ一隻しか運用していないケーブル敷設艦ゼウス(約一万五千トン)が佐世保港に定期的に入港していること。ゼウスはほぼ1月に1回のペースで入港したが、停泊日数も1月の入港を除けばほぼ1週間程度の停泊日数となっている。唯一長期となった1月(21日間)の場合は機関の故障修理を行っていたと思われるので、メンテナンス上の理由がなければ、同じパターンの入港と考えられる。
ゼウスの任務は通信用の海底ケーブルを中継局との間に敷設し管理することで、近年はケーブルの上を通過する潜水艦や軍艦の音響を監視するSOSUS(音響監視システム)用の通信施設としても利用していると思われる。

ゼウスは測量(海洋調査)艦、原子力潜水艦の動きと重なるように動いているが、この3種類の艦船に共通するものは「海面下」あるいは「海底」だろう。
かつて、米軍はソ連極東艦隊の南下を監視するため奄美や沖縄などの琉球弧諸島に長大なケーブルを埋設しSOSUSと呼ばれる音響監視システムを配置していたが、冷戦崩壊後は運用コストの関係もあり、このシステムは廃止されていたようだ。
しかしこの数年、中国海軍が積極的に近海から外洋への進出を目指してきたため、その動向を監視するため再びSOSUSの運用を開始しようとしているのではないだろうか。

ケーブル敷設艦が定期に佐世保港に入港する目的には、海底ケーブルの管理・保守とあわせ、音響監視システムの運用維持も含まれているのだろう。測量(海洋調査)艦の集中的入港が監視任務のためというのであれば、米海軍佐世保基地に新たな任務が追加された、と判断される。

(RIMPEACE編集委員・佐世保)


補給・補助艦船の目的別割合




補給・補助艦船の停泊日数の推移(5年間)




車両/貨物輸送艦の停泊日数比較


  • はじめに
  • 洋上作戦艦の動き

    '2007-1-20