爆撃目標・小白浜はこんな港だ


釜石の山中に墜落する前に、F16が模擬爆撃のターゲットにした小白浜の港を見てきた。思ったより大きな漁港だった。防波堤の内側も含めて小型船100隻は優に停泊できる。数百メートル上空からだと、2本の防波堤、「くの字」型の岸壁、赤い灯台がはっきり見えるはずだ。
これならドック・コンプレックス(埠頭の複合体。造船所のドックは、英語の場合必ずドライドックと言う)という名前に相応しいな、と思いながら陸地の方を見ると、コンクリート製の高い堤防が町と港を分離するように聳えていた。三陸沿岸は津波の多いところだ。東京ならば大地震の時の避難場所の看板が立っている場所に、いや、もっときめ細かく津波避難路の看板がある。この堤防もダムの代わりのターゲットになり得るな、と思いながら見上げていた。
定置網を上げるクレーン装備のやや大型の船の横で、漁協の人達が大きな網の繕いをしていた。
「この辺りは何が入るのですか?」「今だったらサバ、それにサケも入りだした」
「船が戻ってきましたね」「釜石の市場に魚を持っていった帰りだ」
「ところで低空飛行で戦闘機が来ませんか?」「事故の前はよく来てたが、あのあとは来ないな」

小白浜の港の南側の山並みが、東に向かって海に沈んでいる。手前の濃い緑色の山と、後ろのややグレーがかった山の間をF16は飛んできて、海上まで(予定外に)ふくらんでから港の埠頭やクレーン船(埋め立て工事のために在港中)、堤防などを目標にして爆撃訓練をしたのだろう。
三陸海岸は、山の中を走っていると突然近くに海が現れる。低空飛行から沿岸部を攻撃するルートはいくらでも作れそうだし、コースの選択もパイロットの裁量に任される余地が多そうな地形だ。

「赤旗」が攻撃目標と誤解している造船所訪問記

釜石の港に接する浜に小さな小さな造船所が2つ並んでいた。手前が三協造船、奥が釜石造船。小型の漁船の修理工場という感じだ。
構内に入ってみたが、ドライドックらしきものは見当たらない。三協造船で作業中の人に聞くと、なんと「釜石の造船所にはドックは無いよ。(北隣の町の)大槌には有るが」という答えが返ってきた。
「釜石市のすぐそばの目標のドック施設の秘密写真」というパイロットの証言から「釜石市内で、ドックがあるのは同市新浜町にある二つの造船所です。攻撃目標がこの造船所なのは明らかです」(99.8.31赤旗) と言い切っていたが、その根拠が無かったことが明らかになった。7月18日に衆議院議員を先頭にこの造船所の現地調査をした、と9月2日の赤旗一面の写真の説明にあったが、わざわざ現地まで出向いて一体何を調べたのだろう。
「造船所が攻撃目標」という一面トップの大見出しの始末はどうつけるのかナ。
ドライドックはどこにも無い

斜面にとりつけられたレールで、台車に固定された船を引っ張り上げる。
ドライドックは無くてもすむのだ。


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